2005年12月19日
本音聞けてこそプロ:高木一成
「やっぱり誰もがそう思うんだ」と感じたことがあった。14日に衆院国土交通委員会で行われた耐震強度偽装問題に関しての証人喚問。姉歯氏に対してトップバッターで質問に立った自民党・渡辺議員の話が「長すぎる」との抗議が自民党本部に殺到したと、16日付の本紙社会面の記事にあった。
喚問が行われていた時間は、中央競馬の調教時間で私は取材中だった。じっくり見る時間はなかったが、美浦トレセンの調教スタンドで足を止めて、ちょっとだけテレビに注目した。画面は姉歯氏の表情を大きく映し出しているのに、声は議員のものばかり。「何で、もっと姉歯にしゃべらせないんだ」「自分の意見はしゃべらなくていいから、核心をポンポン聞いていけばいいんだよ」。一緒に見ていた調教師からも、こんな意見が出ていた。僕自身も同じ感想を持った1人だ。
と、タイムリーな話題で前振りしてみたが、別に難しく議員の批判をしたいわけではない。記者の仕事の1つは相手から話を聞き出すこと。「人から本心を聞き出すのは、簡単なようで難しい」。常々、そう考えている立場からすると、この議員の話もあながち批判対象とばかりもしていられないと思う節もある。
ここからはまったく別次元の話だが、競馬の取材でも悪い話ほど聞きづらいのは、普段から痛感している。例えば馬の調子がひと息のときなど、誰も彼もが本当のことばかりしゃべってくれるわけではない。記事になってしまえば読者には分からないだろうが、見出しになるような景気のいいコメントでさえ、人によってはスラスラ話してくれないこともたくさんある。
こっちである程度の道筋を用意しておいて「こうこう、こうですよね?」と、いろいろ調べた上で同意を求めるように聞いた方がいい人、「中間の調整はどうでした?」と一から聞いた方がスラスラ答えてくれる人など、調教師、騎手によってタイプは違う。相手によって、質問の仕方を変えられるのが記者としてプロなのだろうが、なかなかこれが難しい。
自分の勉強不足で「もっと調べてから取材に来い」と言われたこともあるし、逆に勝手に答えを決め付けたような質問をして「じゃあ、そう書いておけば」と突き放されたこともある。個人的に思うのは、質問=取材のうまい下手は、話を広げられるかどうか。逆に、取材をしていて「この人は頭がいいな」と思わせるのは、こっちの話題に対してプラスアルファの答えが返ってくる人だったりする。いかにしゃべってもらうか、いや、自然と言葉を引き出せるかは、永遠のテーマにも感じる。
さて、1週間後にはいよいよ有馬記念が行われる。「ディープインパクトに勝てますか?」。競馬ファンなら誰もが聞きたいこの質問に、各陣営がどう答えるか(もちろん直接そうは聞けないが)。「負かせる手応えはある」「いや、かなわない」。陣営によってさまざまなとらえ方はあるだろうが、少しでも本音の答えを引き出したい。結果はどうあれ、これで偽証罪に問われることはないのだから。
December 19, 2005 11:19 AM
