記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年12月02日

球界繁栄にはテレビ:山内崇章

 東北の山奥で生まれ育った宿命だと思っていた。野球中継にかじり付くことだけが唯一の楽しみだった少年時代。試合が佳境を迎えた終盤、必ずといっていいほど不快な字幕が表れた。

 「一部の地域を除いて放送時間を延長します」。

 実況も、解説者も「さようなら」のひと言もない。直後、無情にも中継が途切れた。地方局の編成事情で、一部の地域に含まれることが多かった。正直、東京の人がうらやましかった。

 ところが、18歳で上京してからも状況に大差はなかった。何だ、東京もか。
 「それでは皆さん、大変申し訳ございませんがこの辺で。試合の模様は後ほどのニュースで…」。

 このフレーズを聞かされるのも結構嫌なものだ。

 今年の巨人戦の年間平均視聴率は10・2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。過去最低の数字だ。03年14・3%、04年12・2%だから持続的だ。90年代後半まで、ゴールデンタイムのドル箱枠と言われた時代も今は昔。今年は巨人が早々にV争いから外れたことも響いた。8月に延長放送を打ち切った局もあった。

 民放各局は今、来年の中継方針を検討、各球団との交渉に入っている。複数の民放関係者に話を聞くと厳しい意見が多い。「放送権料が高すぎる」「夜9時以降の延長は、後番組を考えると難しい」「視聴率の取れるバラエティーの方が実利ある」などなど。

 地上波が視聴率低迷にあえぐ中で、好調を維持する媒体もある。年間通じて、全カードの試合を最初から最後まで伝えるCS放送のスカイパーフェクTV!だ。「民放の視聴率に反比例して加入者は増えている」。重村一社長の話だ。

 名物商品「プロ野球セット」は今季、前年比で25%増の売り上げ。巨人戦の「G+(ジータス)」だって前年比で55万件も加入者を増やしている。視聴者は、野球中継の完全版を望んでいることがうかがえる。

 視聴率低迷は、巨人の不振と連動していることは否めない。ただ、それだけが理由とも思えない。世界を見回しても、結果が伝えられないスポーツ中継は珍しい。展開に合わせて放送時間を延長できるのはNHKだけ。視聴率が収入源となる民放では、編成上難しいのは理解できるのだが。

 巨人は今季、試合開始を1時間繰り上げた午後5時ゲームを5試合実施した。子供たちが球場から帰る時間を考慮してのプラン。放送した日本テレビも野球を最後まで伝え、後番組も時間通りに流した。最大多数の視聴者ニーズに応えた画期的な取り組みだった。

 フジテレビの村上光一社長が先日の定例会見でこんなことを話していた。同局がヤクルトと横浜株の二重保有を球界から指摘されたことについて。

 「われわれが球団株を持つ理由は放送権の問題。テレビ局が株を持つ意義は、プロモーションツールとして野球界を盛り上げる気持ちが強くなる」。

 静まり返った会見場で、心の中で拍手を送った。球界の繁栄はテレビあってのもの。メディアが球界を大事にする限り、将来は暗いことばかりではない。

 来季の放送枠は来年2月までに固められる。

December 2, 2005 12:33 PM