記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年11月25日

裏表ない浪速の闘拳:横田和幸

 スポーツの道を極める人は、1つや2つの伝説を残すもの。私が最近、気になっていたのが「浪速の闘拳」こと、ボクシングWBAフライ級8位の亀田興毅(19=協栄)の、あるうわさ話だった。

 くだらない話とは言わないでほしい。まあ、実際に鼻クソの話で恐縮なのだが、実は以前、亀田がジムで公開スパーリングをしていた際、リング周辺にいた関係者が鼻クソをほじったという。その動きを彼は真剣スパーの途中ながら視界に入れ、後でその当人に指摘したというのだ。
 一般スポーツ全般を担当する私は、亀田の取材機会は少ない。それが、19歳の誕生日を迎えた今月17日に、偶然にも出番がやってきた。ばかばかしい話だが、これは直撃するしかない。
 「亀田くん、誠にくだらない質問やけど、あのうわさ話はホンマかいな?」

 「何を聞くんや、ニッカンの記者は! その話はちゃうで。オレが見たんはジムワークをしている時に(関係者が)鼻毛を抜いていたんや。リング上から、よう見えたんや。でも、スパーリング中に鼻クソをほじっている人を見たこともあるけどな。見える時は調子いい? そうかもしれんなぁ、ハハハぁ」。

 私が学生時代に読んだボクシング漫画「がんばれ元気」の主人公、堀口元気は、動体視力を養うために踏み切り横の電柱に上り、通過していく電車内の人の顔を見続けた。亀田が鼻クソで動体視力を養ったとは言わないが、裸眼2・0の視力に加え、スポーツセンスと厳しい練習に耐えた結果が、荒業? の習得につながったのだろう。

 彼のボクシング技術は当然ながら、頭の良さと回転の速さにも、舌を巻いてしまう。記者の顔と名前は2、3回会えば完全に覚えてしまう特技を持つ。年齢を重ねるたびに、脳内の記憶の細胞を失っていくと自覚する私には、うらやましい限り。さらに素直だ。

 「オレはスポーツ新聞で大きく扱われたら、うれしいねん。やっぱり励みになる。相撲、格闘技、芸能の記事も読む。よう読むから1周グルリと回ってきて、もう1回読む時もあるよ。今日の日刊はどれだけ大きく扱ってくれるん?」。

 私が「できるだけ(大きく)扱うわ」と、苦笑いしていると、矢継ぎ早に言葉が返ってきた。

 「実藤さん(現ボクシング担当)にゆうたらええん? それとも益田さん(元ボクシング担当)か? それとも藤中さん(東京日刊のボクシング担当)にゆうた方が(大きな記事になる)可能性あるんかな?」。

 いや、参った。本紙記者名をここまでスラスラ言えると、君は真の取材対象兼読者やね。裏表がない性格と、オール大阪弁の返答も好感度抜群。
 この日、各紙記者が合同で贈った誕生日ケーキも、本当は甘いものが嫌いなはずなのに、君は「ありがとう」の一言を忘れずに持ち帰った。こんな気配りができる君のことが好きになった。鼻クソ(を取材した)記者を、これからもよろしくね。

November 25, 2005 11:34 AM