2005年11月24日
偽造 今回だけなのか:上野耕太郎
危険マンションが話題になっている。耐震強度が偽造され、調査の結果、震度5強の揺れで倒壊する可能性があるという。不動産業者は入居者に転居を要請し、転居費用を負担するとしている。
マンションの購入って人生のなかでもっとも、高い買い物だ。私も昨年、マンションを買った。35年ローンだ。70歳まで払い続けることになる。そんなマンションが「危険マンション」だったとしたら…。シャレにならない。
というか、震度5の地震がすでに来ていたらと考えると、怖い。しかも偽造は闇に葬り去られたかもしれない。無性に腹が立つ。つくったやつら、お前らが代わりに住んでみろと言いたくもなる。結構、この事件を自分に置き換えて感じ取っている人が多い気がする。
日本ハムを担当している私がオリックスの試合のため神戸に行った時のことだ。タクシーに乗った。無口な運転手だった。ある道を通るとポツリと言った。
「この辺はきれいになりましたよ。私が買ったマンションもこの辺りにありました」。
95年の阪神・淡路大震災で家が倒壊し、ローンだけ残ったという。そして職も失った。
「まさか神戸で地震が来るなんて考えてませんでしたよ。保険もかけていなかったし」と運転手は小声で言った。再度、家を購入して二重でローンを支払っていた知人もいたという。「借金が苦しかったのかなぁ。後になって自殺したやつ、姿を消したやつもいましてね…」。やりきれない気持ちになった。
家を購入する直前ってワクワクするものだ。今後の人生設計を考えながら自分や家族の幸せをちょっとばかり期待したりして。そんな小さな幸せであり、人生で最大の支出が不幸な形で終わるのはたまらない。
少し脱線するが、一昨年に北海道のある市営住宅を取材したことがある。取材するからには普通の物件ではない。すべて「ワケあり物件」だった。理由があって空き室にしていたところをあえて公表し、募集した。
「平成10年、火災事故、焼死、男性68歳」「平成14年、害虫(シミ虫)の大量発生」。生々しい記載が続く。「事故内容」と「室内の写真」も提示した。
「絶対、入居者が来るわけないよなぁ」と取材しながら思っていた。予想は覆る。気にしないって人が集まり、10室のワケあり部屋には111人の応募があった。
家については人それぞれで考え方や主張があるだろう。ただ、売る側、貸す側には住む側に正確な情報を伝える義務がある。どんな商取引でも必要なこととは思う。ただし、住宅って駄目だからすぐに買い替えってことはよほどのお金持ちでないとできない。だから、誠実に対応してほしい。
ただし、本当に耐震強度の偽造って今回発覚しただけなのかな。実は、知らないだけでかなりの建物がそうだとしたら…。人は家に安らぎを求める。購入者も伝え聞く我々も裏切られた気持ちだ。知らないで「ワケあり」物件に住むのはごめんだ。
November 24, 2005 11:40 AM
