記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年11月22日

ストレートこそ韓流:山内崇章

 韓国プレスの友人は、母国が生んだ天才打者の雄姿に感極まっていた。13日まで行われたアジアシリーズ。韓国のサムスンは決勝でロッテに敗れたが、そのロッテには李承燁がいる。東京ドームのネット裏記者席。5年前からサムスン番を務める彼は、その喜びの心境を興奮気味に語った。

 「日本人が承燁に送った大声援は一生忘れられない。同じ国民として涙が出るほどうれしい」「昨年の彼の不振には、私も韓国人としてのプライドが傷ついた。今年は血のにじむ努力で見返した。私たちの誇りです」。熱っぽい、真っすぐな感想が印象的だった。

 話し込むうちに、ふと彼のパソコンに目がいった。スクリーンセーバーが作動し、かわいらしい女の子の写真が次々と映し出された。小学3年生の娘さんだという。自分もそうだ。2歳になる娘の写真をパソコンに張り付けている。その愛らしい笑顔には無条件で癒やされる。パソコンを開くたびに、今日も1日頑張ろうと思う。ところが次の瞬間、画面は彼の奥さまの顔に切り替わった。2人肩を組む仲むつまじい写真だ。

 ハッとした。自分は妻の写真をパソコンに取り込もうなど考えたこともなかった。彼は「出張の多い仕事柄、家族の顔が見たくなるじゃない」。それは私も同じだ。なぜ奥さまの写真を。少し照れながら「かわいいからですよ」。よくもそんなことが言えたものだ。

 先月までペ・ヨンジュンに代表される韓国芸能を取材していた。ヨン様はファンを「家族」と呼ぶ。理由は「何の条件もなく、ただただ私に無償の愛を注いでくれる。その行為は私の本当の家族と全く変わらないから」だという。日本の男たちは彼の丁寧でさわやかすぎる振る舞いに少々違和感を覚えた人も多いのではないか。ある女性ファンはヨン様の魅力をこう語る。「相手を思いやる彼の言葉がいい。日本の男性は言葉でストレートに愛情表現ができないじゃない」。

 奥さまの顔をパソコン越しに見ることも、その笑顔を「かわいい」と言えるのも韓国男児のストレートな感情表現なのかもしれない。韓国の一般家庭では、リビングに家族の集合写真が掲げられることが多い。家族のきずなが強いこの国では、大事に思う人をいつでも見られるところに置いておくことはごく自然なことだ。

 8年前、縁があって韓国籍の女性と婚姻の手続きを取った。新婚当初は、リビングの壁に1メートル四方の結婚写真が掲げられていた。が、来客の際にはやはり気恥ずかしい。粘り強い交渉の末、つい最近、別室への移動に成功した。

 韓国の方々はよく笑い、よく怒り、よく涙する。そのストレートな感情表現には潔さも感じる。友人の記者が李承燁をたたえる言葉も、泥臭く男らしい。韓国ブームも、人間的な情の深さに日本の女性が圧倒されたことが一因だろう。翻って日本―。なぜか感情の抑制が人間関係を円滑に運ぶ最良の手段とされている。大人になるにつれ、本音で話すことも、人前で怒りをあらわにしたり、大声で泣くことも許されなくなる。感情をオブラートに包んだ余韻もいい。が、時には正直な自己主張が許容される韓国社会がうらやましくなる。

November 22, 2005 11:35 AM