記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年11月19日

英語 習うより慣れろ:高木一成

 「いやー、学生のときにちゃんとやっておくべきだった」。こう思うことは1つや2つじゃないが、英会話に関しては本当にそう思う。

 女子ゴルフの宮里藍は、15日にタイガー・ウッズとテレビマッチで対戦したとき、直接英語で話し掛けてアドバイスをもらったと聞いた。これだけ世界で活躍する選手が増えると、他国語でコミュニケーションを取っているシーンは珍しくない。だが、実際自分に置き換えるとなかなかできないこと。それだけに素直にすごいなと思わされる。

 ここ数年、欧米の競馬がオフシーズンになる今の時期は外国人騎手が続々日本に乗り込んで来る。プロ野球、Jリーグなどもそうだが競馬でも外国人は助っ人として重宝される。昨秋のG1を3連勝したゼンノロブロイとコンビを組んだフランス人のペリエ騎手のように、有力馬を任されるケースも多い。当然、取材の機会は多くなるが、情けないことに本人より先に通訳の人を探してしまう自分がいる。正確を期すためというのは逃げ道で、やっぱり英語へのコンプレックスは相当なものだと、自分でも感じるところだ。

 今春の皐月賞前のこと。02年から04年まで3年連続で皐月賞連対中だったイタリア人のデムーロ騎手に、今年の騎乗馬についてインタビューした。調教の合間に厩舎で話を聞いたが、運悪くそばに通訳の人がいない。意を決して話そうと思っても、昔あれほど詰め込んだはずの英語は出てこない。遠慮がちに「短い時間でいいので話を聞かせて?」と丁寧に前振りしようとしたのが失敗の始まりだった。どう英訳したかは忘れたが、出てきたのは「short time」という単語だけ。「show time」と聞こえたらしく、「これからオレは何を見せられるんだ?」とけげんそうな目をされたことがあった。その後は、馬の成績欄を見ながら、一応話はつながったが…。

 何人もの外国人騎手の通訳をしてきた川上雪恵さんに話すと「いきなりキチッとした文章でしゃべろうとするから難しくなる。まずは単語で意味だけ伝えられれば十分」とアドバイスされた。「文法から入る日本の学校の教え方の弊害ですかね?」などと言い訳してみたが、結局は自分の努力と経験の不足が原因なのは分かっている。

 外国人騎手が短期免許で来日を始めてから10年以上たった。川上さんは「以前に比べると、若い調教師や助手さんを中心に、直接英語でコミュニケーションを取れる人が格段に増えた。調教の指示などは私が間に入らないでも、直接のやりとりでできてしまうことも多い」と言う。意欲次第では、自分も英語上達のチャンスのある環境にいるということ。「『英会話学校なんて行く必要ない。タダで英語を教えてくれる先生が側にいるんだから』って言っている調教師もいますよ。若手の騎手とか記者さんとかも、あいてる時間があったらもっと話し掛ければいいのに」というのは、まさに目からうろこの発想だった。狭い世界と言われるトレセンでも、世間と同様英語の必要性は増えている。もちろん勝つ馬の情報を仕入れるのが本道だが、この流れに遅れず英語に少しでも慣れることも大切だな、と思う。

November 19, 2005 12:00 PM