2005年11月14日
視線は常に視聴者に:上野耕太郎
先日、このコラムで小林千穂記者が方言について書いていた。そうだよなぁ。確かに今、バラエティー番組でも「なまり」が流行している。04年に公開された映画「スウィングガールズ」を見たが、東北地方の女子高生のなまりがかわいらしかった。長きにわたって封印されてきた「なまり」が解放されようとしている。
「なまり解禁」を先取りした番組が実は私の住む北海道にあった。地元のHTBが制作する「水曜どうでしょう」って深夜番組だ。96年10月9日に放送を開始。地元出身のタレント鈴井貴之と大泉洋が掛け合いながら旅をしていく内容。北海道弁も全開なのだが、異常にウケた。99年8月の秋田朝日放送を皮切りに全国20局以上がオンエアした。あの「笑っていいとも」のテレフォンショッキングに大泉が登場するなど全国区に広がった。
そしてこの10月、札幌に異変が起こった。東京に住む他社の日本ハム担当が「ホテル、飛行機が取れない」とぼやく。原因は…。14日から3日間、札幌真駒内競技場でファン交流イベント「水曜どうでしょう祭」を開催。道外客を中心に、4万人が集結した。おかげで札幌市内のホテルのほとんどが満室になり、新千歳空港行きの便も混雑した。
これまでもグッズがネットオークションで高騰し、同番組のDVDは20億円を売り上げたという。先日、妻が友人と電話をした。その友人は同番組の熱狂的なファン。東京出身にもかかわらず番組の影響から見事な北海道弁を使っていたそうだ。
昨年5月、1年9カ月ぶりに再開する同番組の取材に行った。ロケ中に大泉から話を聞こうとすると、いきなり吐き捨てた。
「はっきり申し上げます。声を大にして言いたいですね。(ふーと一瞬、空を見上げ)番組を見るな!」。
突然、何を言っているのかさっぱり分からず取材を進める。今度は藤村忠寿ディレクターがにこやかな笑顔で言う。
「当初は放送を5回にしようと思っていたんですけど…、7回くらいになっちゃうかも」。
スタートした番組の回数が決まっていない? 冗談かと思い同局の広報に確認した。「本当に未定で発表もできないんですよねぇ」。言葉の割に笑顔だった。
すごいと思った。記者に対してテレビカメラも回っていないのに叫ぶ大泉、回数を決めずに編集作業をする藤村ディレクター、そして、それを認めてしまう局も。大胆であり、プロの仕事を感じた。私たち、そして番組でも普通に使っている北海道弁は他県の人からみるとちょっと間が抜けたように聞こえるかもしれない(北の国からとかね)。そして番組は目線が低く、誰もが親近感を覚えてしまう。
藤村ディレクターは言う。「大泉、鈴井さんはカメラを見て話をしない。目線は常にカメラの後ろの僕たちで、視聴者に向かっている感覚の手法が面白い」。なまりを使った周到な仕事ぶりを感じた。人気は偶然に生まれるものではないんだよなぁ、やっぱり。
November 14, 2005 12:03 PM
