2005年11月13日
どうなる民営年賀状:永井孝昌
郵便事業が民営化されたあかつきには、きっと始まるに違いない、と予想される新しいサービスといえばこれしかないだろう。「年賀状のあて名印刷」。
どうだろうか。当たっているような気がするのだが。
今年も日本3大面倒行事の1つ(と思っている)、年賀状の季節がやってきた。1年365日、締め切りに追われる生活を10年以上も続けてきたせいか、クリスマス前後の「元日配達期限」近くになって慌てて徹夜で書き上げるのが習慣になっている。毎年「虚礼廃止!」と面倒が先に立つのだが、それでも、お世話になった方々へあいさつするめったにない機会と思うと虚礼でも礼は欠かせん、と筆を執る。
子供のころは、元日に届く父親あての年賀状の束に「オヤジ、すげえ」と父の威厳を感じたものだった。高校、大学時代は面倒だからと送らなかった年もあるが、社会人1、2年目あたりは元日に届かなければ失礼、と自分あてにも1枚送り、元日に届いたのを確認して安心したこともある。困ったのは、プロレス担当時代。三沢光晴選手に「タイガーマスク時代は仕立てたスーツの裏の名前の刺繍(ししゅう)もTIGERMASKにしていた」と聞いてプロのこだわりを感じ取っていただけに、マスクマンの自宅に送るのに「本名で書くと正体がバレるのでは」と本名を書くか、リングネームを書くかで大いに迷った。
最近は「経費削減」「自然環境保護」などを理由に地方自治体や企業を中心に年賀状廃止の動きが広まりつつある。出すにしても、近ごろは自筆によるあて名のものもめっきり減ったし、メールで済ませる友人も増えた。そんな風潮を後押しするように「メールによる年賀は失礼とは思わない、と○%もの人が考えていることが分かりました」みたいなアンケートもそろそろ出てくる時期。年が明ければ「配達アルバイトが年賀状を大量放棄」という事件も報道されて、これでは苦労も報われない、来年こそは書くのをやめよう、とぼんやり思い、来年あたりは「配達アルバイトを装ったDM業者が個人情報保護法違反で逮捕」といった新手の事件も出てきそうなよからぬ想像もしたりする。
そうした世相の中で社会全体の年賀状流通量も減少傾向にあるのだろうな、と思っていたが、「ゆうびんホームページ」によると平成18年用の年賀はがき発行枚数は40億2000万枚。10年前より1億枚近くも増えている。さらに今年はニーズへの対応なのか、市場確保に躍起なのか、昨年、首都圏限定で試行販売したデジタル画像印刷用はがきを「写真用年賀はがき」と名称を変え、新商品として発行する。年賀状は2000億円以上を売り上げるビッグビジネス。民営化以降のサービス拡大は間違いないだろう。
郵政民営化の是非についてまで書くつもりはないが、新年を迎えるにあたっての慣習や礼節までがビジネスの一部として加速していくならちょっと複雑。今年の年賀状のキャッチフレーズは「あなたからも来るとうれしい年賀状」。それを聞いても今は、本当にうれしい、とひそかに思っているのは一体誰だ、と素直になれない自分がいる。
November 13, 2005 11:47 AM
