2005年11月01日
楽しきむなしき祭典:小林千穂
東京国際映画祭が10月30日、閉幕した。印象に残ったことをいくつか。
オープニングでは、レッドカーペット脇で、お笑いタレントがテレビ番組の企画でギャーギャーと騒ぎ、ゲストに片っ端から「何の映画に出てるんですか」と質問していた。し、失礼な質問を…。日本の若手俳優なんかは「あっ、○○さんだ!」なんて結構うれしそうに、このお笑いタレントに反応していた。私はそれを見ながら「お願い、お願い、せめて海外ゲストに下品なことしないで~」と祈っていた。当然というべきか、その願いはかなうことはなかった。「一体、誰のための映画祭なのか」という疑問を抱き、ちょっとむなしい思いをした。
そんな気分で始まった映画祭だったが、興味を引かれた企画がいくつかあった。1つは短編映画、ショートフィルムの特集上映。「ショートショート フィルムフェスティバル」という別の映画祭での受賞作品を集めたものだ。グランプリのフランス作品は10分21秒。笑いとハラハラ感がぎゅーっと詰まっていた。ラスト10秒の製作には1年かかったという。
作品の面白さももちろん、短編映画の可能性についても興味深かった。ジョージ・ルーカスもスティーブン・スピルバーグも短編から出発しているし、あくまでも長編監督への足掛かりというイメージを持っていた。しかし「ショートショート-」の実行委員長東野正剛氏(37)は「以前は長編への名刺代わりという部分もありました。現在では、ネット配信に作品1本をそのまま出せる短編映画は、コンテンツを提供する企業からの要望も多いのです」と話す。環境は確実に変化しているんだなあ。時間の制約があるからこそ、表現できることもある。ストーリーのエッセンスを凝縮した短編映画の面白さ、可能性が広がればいい。
もう1つ面白かったのは、自治体や地域で映画やドラマのロケを誘致・支援する「フィルムコミッション」のシンポジウム。地域の活性化に加え、受け入れ態勢が整っていれば製作側にもメリットがある。はやりと言ってもよく、フィルムコミッションは全国に80近くある。シンポジウムが1日だけだったのは残念だったが、いい話ばかりではなく、「美しい風景」を撮ってほしい地元と、製作側とのズレなど、問題点もしっかり話し合われていた。
短編映画特集にしてもフィルムコミッションのシンポジウムにしても、参加者がとても積極的で、イベントに活気があったのが印象的だった。「映画が好きなんだ」という気持ちひとつから出る情熱や、その気持ちそのものが漂う心地いい空間だった。振り返って、オープニングのレッドカーペット脇で騒いでいたタレントに見せたいもんです。いかにあの振る舞いが、映画にかかわる人の晴れの舞台にふさわしくなく、失礼だったかということが分かると思うのです。
November 1, 2005 11:49 AM
