記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年10月25日

願えばかなう!?進化論:上野耕太郎

 先日あることに気が付いた。千葉・鎌ケ谷で日本ハムの若手選手が練習していたときだ。「鎌倉って足、長いなぁ」。他社のベテランカメラマンが20歳の鎌倉健投手のランニング姿を見てつぶやいた。確かにそうだった。189センチの長身で腰の位置がすごいところにある。

 ただし気付いたのは鎌倉の体形ではない。「足が長い」という褒め言葉を久しぶりに聞いたということだ。子供のころ「足の長さ」は絶対的な威力を誇っていた。松田優作、草刈正雄のスタイルも話題になっていた。私の母は言う。「石原裕次郎が出始めのとき、その足の長さにびっくりした」。股(また)下何センチというデータが重要視されていた。

 男性の格好良さ=足の長さという時代が存在した。少女漫画では体の5分の4が足っていうすさまじい「生物」も存在した。小学校時代の身体検査の話。座高を測るとき、猫背になるという姑息(こそく)な手段を用いた。田舎の子供は暇だ。その数値の引き算が測定後の話題になった。嫌な思い出だ。

 今、足の長さって「死語」なのかもしれない。今の10代では長いのが普通になったからだ。それに代わって褒め言葉の王座に君臨するのが「顔、小さいねぇ」だ。「伝道師」はタモリだ。笑っていいとものテレフォンショッキングで出演した芸能人に連発。小顔の芸能人があこがれの対象になった。永年の布教活動の末、新しい価値観を創造した。って、大げさ?

 そうすると、いつの間にか小顔になっていく。日本ハムの若手選手の顔もやはり小さい。鎌倉、ダルビッシュ、鵜久森と長身の選手たちは、体にちょこんと顔が乗っている感じだ。モデル体形で野球がうまい。それは反則だ。それに加え、ファンの目がある。素材が磨かれていく。

 体形の変化って昔に比べ食糧事情が変わり、欧米化が進んだから? 違うな。新しい格好良さの基準の創造→なりたいという願望→現実化-という流れが世代にわたって具体化している。「末代までたたってやる」というセリフがあるが「末代まで願ってやる」という感じか。これまでも「彫りが深い」「背が高い」「足が長い」「顔が小さい」という難題をクリアし、平均値を上げている。

 社会全体の願いは実は、かなったりするのではないか。ただし、世界平和とか人に優しくといったものではなく、「モテる」ことに直結するものだけだが。進化って意外と単純な願望からきているのかも。加速する進化に加え、注目されることでの研磨があるスポーツ選手って次世代の未来形なのかもしれない。

 「丸顔」「だんごっ鼻」「手足が細い」のがセクシーなんて時代が来たとする。10年後、かつて中日の投手として活躍した宣銅烈(現サムスン監督)のような選手が続々と出現。20年先、街角にはアンパンマン顔の若者が大量発生していたりして。

 ダーウィン先生、今西錦司先生、そして宣銅烈監督、バカみたいな「進化論」ですいません。

October 25, 2005 10:15 AM