2005年10月23日
素直に使った「奇跡」:栗原弘明
私が担当しているロッテが31年ぶりの優勝を果たした。歴史的な瞬間に立ち会うことができ、なお優勝原稿が書けるということは、記者みょうりに尽きる。17日のソフトバンクとの第2ステージ5戦目、午後9時46分に優勝が決まった。31年ぶりの胴上げだから、わずかなしぐさも見逃すことはできない。まさに目をひんむいて、その瞬間を見届けた。プレーオフの前から、自分なりに「優勝したらどういう気持ちになるのだろう」と思い描いていた。実際には感動するより先に冷静にものを見なければ、という気持ちが先に立っていた。とにかくすべてを見なければ、と自分に言い聞かせていた。
最後はレフトフライとなったが、その飛球が飛んだ瞬間、と言ってもいいぐらい早く、三塁側ベンチから選手が飛び出した。その先頭集団の中に小宮山悟投手がいた。プレーオフの前に、ロッテの快進撃の理由を取材していたが、頭脳派らしく、感情を抑えた、冷静な語り口が印象に残っていた。そんな40歳の小宮山投手が真っ先に走りだしたのだ。長年、エースとしてチームを支えてきたベテランだ。「ああ、やっぱり、優勝に飢えていたのだ。それだけ、うれしかったのだ」としみじみ感じた。
アメリカには胴上げの風習がない。それでも、バレンタイン監督は3度、宙に舞った。形は良くなかったが、逆にそれが新鮮だった。祝勝会では、シャンパン・ファイトとビールかけが行われた。通常なら優勝記者会見→ビールかけのタイムスケジュールが多い。だが、今回はそれを逆にした。喜びを素直に、早く分かち合いたいというバレンタイン監督らしかった。本当は優勝直後、ロッカールームでやりたかったらしい。施設面の問題があって、それは実現しなかったが。
プレーオフ第1、第2ステージを通じて感じたのは、接戦の好ゲームが続いたことだ。計7試合で1点差が5試合、2点差が2試合。一方的な差がついたゲームはなかった。1つのプレーで流れが変わっていく。最後までわからない、野球の面白さを再確認した。今まで原稿を書いてきた中で「奇跡」という文字はなるべく使うまい、そんなに簡単なものではない、と胸に秘めてきたが、今度ばかりは素直にその文字を使ってしまった。
ただ、下位チームにハンディをつけるアドバンテージについては議論する必要があるだろう。レギュラーシーズン1位と2位、2位と3位、いずれもだ。プレーオフは面白かった。だが仮にロッテが第1ステージで負けていれば、今年の歴史的な快進撃は何だったのか、ということになる。ソフトバンクについても、2年連続でレギュラーシーズン1位の価値はどうなるのか、と思う人もいるだろう。2年間実施してみて、ここは変えた方がいいだろうと、肌で感じた部分があるはずだ。今日22日から、いよいよ日本シリーズが始まる。株だ何だという動きは、せめてシリーズの間ぐらいは自粛して欲しいと願っている。
October 23, 2005 11:54 AM
