記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年10月17日

民意がすべてなのか:桐越聡

 政府が今国会に提出した郵政民営化関連法案が14日、成立した。

 3カ月前には5票差だった衆議院の本会議採決(11日)は200票の大差。衆院選で当選した前自民党の「反対組」13人中、反対を貫いたのは平沼赳夫元経済産業相(66)だけ。参議院の本会議採決(14日)では離党した2人を除いて、自民党の「反対組」20人中19人が賛成に回った。

 14日の参院本会議。議場から出てきた中曽根弘文元文相(59)は「賛成票を投じました。前回とは大きく状況が変わったと思います。教育基本法の改正など、自民党の中でやらなければならない大事な仕事がたくさんある」と話した。「投票行動が変わったことで、参院不要論が強まるのでは」と問われると「時間がない。申し訳ありません」と言葉を濁すようにして足早に立ち去っていった。

 衆参ともに賛成に転じた「反対組」のほとんどは「民意が示された」と、同じような理由を挙げている。民意と国会議員の活動は深く関係しているから、そんな言い分も分からなくはない。しかし、「民意」「民意」とだけ繰り返すような説得力のない説明は、全く説明になっていない。

 「反対組」は今夏、法案に対して勢いよく「NO」を突き付けたが、あの反対票は一体、何だったのだろうか。745億円の費用がかかった衆院選が終わるとひょう変して、ほとんど同じまま提出された法案に賛成する。筋が通らないような転向はどうも、ふに落ちない。「反対組」にあるはずの政治家としての信念とは、どのようなものなのだろうか。

 衆院選では「法案に問題点がある」と主張した「反対組」に賛同して投票した有権者が、間違いなくいる。「否決した参議院をあまりにもバカにしている法案だ。選挙で勝ったから民意だと言っても、参議院も民意だ」。14日の参院本会議で棄権した亀井郁夫氏(71)のように突っぱねるのが「反対組」の筋ではないのだろうか。

 日本は議院内閣制だ。大臣、副大臣など政府の要職にある議員は政府案には賛成しなければいけないが、自民党議員がいつも、政府の政策に賛成しなければいけないというのはおかしな話だ。

 そういう意味では、除名など処分をちらつかせながら、賛成を強要するような今回の自民党執行部のやり方はどうか、とも思っている。

 しかし、だからといって大勢に従うために政治主張を撤回したり、信念を曲げてまで党へ情状酌量を求めたり、そんな「反対組」の行動はちょっと納得できない。政治家としての理想像を描いたころの初心と懸け離れてはいないだろうか。

 「政治家が話すことのすべてを信じてはいけない」。社会面担当になったとき、会社の先輩記者に言われた。実際、そんな政治家もいるかもしれない。しかし、憲法改正など郵政民営化法案以上の政治課題が山積している今、「反対組」のような行動をあっさりと見過ごしたくはない。目を見開いてしっかりと見ていきたい。

October 17, 2005 10:20 AM