記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年10月16日

根付け浪速のバスケ:横田和幸

 年をとれば、芸能界の話題にはついていけない。自分の中で男性アイドルの歴史は、光GENJIで止まっている。10年前からそうだった。

 「この少年ら、誰やねん?」

 95年秋に大阪・舞洲アリーナで行われたバレーボール女子のW杯。取材現場を歩いていると、廊下の踊り場で複数の少年が座っていた。すると、マイク持参で彼らはバレーコートに出ていくではないか。

 その正体は、ジャニーズのアイドルグループ「V6」だった。試合前にデビュー曲を披露するという民放テレビ局の企画。だから観客は9割以上が女子中高生で、超満員。動員をかける有効手段として、タイアップものは当時から行われていた。

 先日、同様の熱気ある現場に遭遇した。bj(男子プロバスケットボール)リーグのプレシーズンマッチ、大阪エヴェッサ対埼玉ブロンコス戦。大阪側の本拠地なみはやドームで開催され、無料とはいえ平日の夜に5042人、客席の約7割が埋まるという信じられない動員に成功した。

 年齢は10代後半から20代前半が主で男女半々。アイドルでも来場するのかと思ったが、純粋なバスケットボールの興行だ。前列の女性ファンは、大阪の選手名を書いたプラカードを掲げている。まるで芸能人のコンサート級なのだ。

 bjリーグは、日本初のプロリーグとして11月5日に開幕する。大阪からは大阪エヴェッサが新興球団として誕生した。チームコンセプトは、実力と同時に個性的であること。ドラフトで男前をそろえ、記者でさえ気付かない速さで、大阪の人気が上昇していた。

 バスケットボールは、日本では地味な印象だが、大阪の競技愛好者は、東京の37万人を上回る日本一の46万人。日本バスケットボール協会へは約60万人が登録、サッカーは同約86万人。「地味な競技」というのは、国内にプロが存在していたかの差だと気付く。「ここまで応援してもらえるとは。次はサイン会とかで触れ合う機会があれば」とは大阪のCF中村友也(22)。イケメンの彼は、あの当時のV6の姿とだぶる。

 不景気な時代背景で、男前をそろえたから、実力があるから繁栄するわけでない。しかし、大阪の会場はダンスチームによる一体感を生むパフォーマンス、派手な照明設備、音響といい、エンターテインメント性が確立されている。お笑いの吉本興業が協力しており、開幕戦はサプライズのゲストまで送り込んでくるという。競技1本だけで成功させるといった片意地も張っておらず、球団はとにかく観客の満足度を高めたいという。

 ちなみに「エヴェッサ」とは、商売繁盛の神様・えびす様から由来している。開幕当日といえば、Jリーグのナビスコ杯決勝でG大阪が初王座をかけて戦う歴史的な日。大阪の記者は本当に忙しい秋を迎える。プロ野球、サッカーに続いて、バスケットボールが、浪速の街に根付くことを祈りたい。

October 16, 2005 01:22 PM