2005年10月05日
ダルの武器は「自分」:上野耕太郎
3日に高校生ドラフトが行われた。対象となった選手たちにとってはドキドキの1日だったと思う。ただし、私がこの原稿を書いているのは2日の夜なので結果は分からない。お手数ですが、詳細は3日の野球面をお読みください。
さて、私が担当する日本ハムは残念ながらプレーオフ進出がならず、シーズンは終了した。昨年のドラフト時期から担当を始め1年が過ぎようとしている。早かった。しみじみ思う。前日にこのコラムで永井記者が1週間を振り返っていた。私も負けずにこの1年を思い出してみたいと思う。
やっぱり、個人的にはダルビッシュに始まりダルビッシュに終わった1年だった。昨年のドラフト会議終了後、東北高や地元の大阪を行き来した。取材した最初の印象は「口の重い少年」だった(失礼)。1月の新人合同自主トレではいきなり、右ひざの関節炎でドクターストップがかかる。2月、沖縄でのキャンプでも練習メニューは限定。動けないけど、毎日同じような質問ばかり受ける。自分を含めてだが。イラだっていたのが分かった。
そしてキャンプ中の喫煙が発覚し、無期限の謹慎処分を受けた。キャンプ帯同が中止になった。ダルビッシュを追いかけ同便で急きょ沖縄から羽田に向かった。空港には200人以上の報道陣とテレビカメラが待ち受けていた。手荷物を受け取る場所からガラス越しに見えた騒然とした雰囲気に私は思わずのまれてしまった。横を見た。ダルビッシュは全く表情を変えなかった。目の前にある現実に1歩も引かないその性格の一部を垣間見た気がした。
3月末あたりから投球練習ができるようになった。ゆとりができたのかしゃべり方も、変わってきた。「ホンマっすか」「ちょっと、面白い話があるんすけど」と会話もするようになった。そして6月15日、プロ初先発で初勝利を挙げた。その後もローテーションを守り、5勝を挙げた。
ある日のこと「緊張をしないのか」と聞いた。そうすると少し考えこう言った。「緊張をするのは自分をよく見せたいとかこう思われたいとかそういう気持ちがあるからじゃないですか。自分にはない。出た結果が今の自分のすべて。それ以上でもないし、それ以下でもない」。高校を卒業したばかりの少年の言葉にハッとした。あまりにクールな発言にも取れるが、本質を突いている。確かにそうだが、平常心を保つのは難しい。慌てれば顔に出るし、耳も赤くなる。その言葉にダルビッシュの根っこの部分があるように思う。
札幌の寮に住むが、1人で買い物に出かける。各選手が移動用にブランド品のオシャレなバッグを所持するなか、ダルビッシュはスポーツメーカーの色のはげたものを肩に担いでいる。服装も髪形もこだわらない。「人にどう評価されるかってあんまり関係ないんです。自分は自分の目で見たものを信じます。ただし、自分のことは自分で見れないので…」。
多彩な変化球、長身から繰り出す角度のある直球-。その特長のなかで一番、際立っていたのは、その少年の「自分へのスタンスの取り方」だったような気がする。
October 5, 2005 12:03 PM
