記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年09月30日

カジノに賭けた人生:高木一成

 ちょっと前に、夏休みを利用してテニアン島へ行ってきた。青い空に、白い砂浜、どこまでも続く海……、は正直どうでもよく、目的は同島ダイナスティホテル内にあるカジノ。5年前に韓国のカジノに行って以来、2度目の挑戦だった。

 行ったことがない人もいると思うが、華やかな中にも厳かな空気の流れる「大人の社交場」的な雰囲気は、いわゆる他のギャンブル場とはひと味違う。ディーラーのテキパキとしたカードさばきやチップの扱いは、見てるだけで感心させられショーに近い感じ。内装は豪華だし、ドリンクを運ぶウエイターなどもいてサービスは充実している。

 2、3時間ほど順調? にチップを減らしながら、いくつかテーブルを回ったが、途中で驚いたことがあった。何と、日本人の女性ディーラーがカードを配っている。「何でこんなところに日本人が?」。興味があったので、業務後に取材させてもらった。

 愛知県出身の井垣歌織さん(30)は東京でOLをしていたことがあるが、去年12月から同カジノで働いている。04年4月にオープンした日本最初のカジノディーラー養成学校「日本カジノスクール」(東京都中野区)の第1期卒業生だ。同校オープンのテレビをたまたま見て「希少価値があるし、他の人がやれないことをやりたいと思った」のがきっかけで、この世界に飛び込んだ。結婚してまだ2年だが「自分が逆の立場だったらやりたいことは頑張ってみたいから」という理解ある夫の賛成もあり“逆単身赴任”の生活を送っている。ルール上、正しい進行をしたのに、お客さんから「ディーラーチェンジしろ」と怒鳴られ、悔し涙を流したこともあった。でもそれ以上に、ディーラーとしてプレイヤーに接するのが楽しいと笑う。

 わざわざテニアンで働いているのは、日本ではカジノが合法化されていないため。数年前に石原都知事がお台場カジノ構想を提唱した時は、日本でもカジノ熱が盛り上がった。が、さまざまな障害で行き詰まって、今は話題にならない。野田聖子議員を中心とした超党派組織による「カジノ法案」も、一時は今年中に国会を通る見通しだったが、それどころじゃなくなったムードがある。

 当然、カジノ設立反対派の方も多いと思うが、先進国のほとんどで合法化されていることを考えれば、日本だけ健全な経営ができないはずはないと思う。だいたいパチンコやスロットだって本当は換金は違法なのに、実際は景品を第3者が買い上げる方式がうやむやに成立している。カジノ法案成立の過程で、そっちもまとめてすっきりさせちゃえばいいのにと思うのだが…。

 話は戻るが、もし日本にカジノができた場合、経験を積んだディーラーが相当数必要になる。今の時点で合法化される保証は何もないが、彼女はそれを見越して、一足早く世界に飛び出した。「将来的に子供ができたら、やっぱり日本でディーラーをやりたい」と井垣さん。ほかにも数人の同校卒業生が同カジノで働いているが「いつかは日本で」の夢はみんな一緒だ。ある意味チップどころじゃなくて、人生を賭けた海外修行。夢を持って臨んだ大勝負の行方は、近い将来の日本のカジノ合法化という形で実ってほしいなと思う。

September 30, 2005 12:06 PM