記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年09月27日

都市開発隠れた問題:桐越聡

 甚大な被害をもたらした超大型ハリケーン「カトリーナ」に続き「リタ」が日本時間24日、米本土に上陸した。日本では、今月の台風14号で計29人の死者、行方不明者が出ている。自然災害は恐ろしい。未然に防いだり、被害を軽減する研究や対策が深まってほしいと、あらためて強く思っている。

 川沿いなどの低地、土砂崩れが起きやすい斜面など、あらかじめ予想される場所では、対策が立てやすいのかもしれない。しかし、「まさか、こんなところで」という場所で水害は起きている。実際、被害を受けた人がいる。

 東京都内で喫茶店を営む石井秀雄さん(78)は昨年10月、店舗兼住宅ビルの地下部分が水没する被害にあった。台風22号が通過した後、地下2階部分が水没し、同1階部分は床上浸水。営業していたカラオケスナックは臨時休業していた。石井さんは「営業していたら、犠牲者が出ていたかもしれない」と、顔をこわばらせた。

 石井さんのビルは新宿区河田町にある。一帯は高台になっていて、付近に川や貯水池はない。水害とは無縁だった場所の地下部分に推定150トンの水がたまっていた。専門家に調査を依頼すると、地上から流れ込んだ形跡はなく、下水道管から逆流した痕跡もない。地下部分の床や壁面から地下水が浸水したという結果が出た。

 建設して35年以上同様の被害はなかった。原因を突き止めたい石井さんは、隣接する土地に2年前に完成した最高41階の高層マンション群に疑いの目を向けた。専門家の意見を聞いて「建設の際の地下工事で、地下水の流れが変わり、その結果、台風の際の集中豪雨であふれ出た」と推測。建設した都市再生機構へ調査を求めた。

 同機構は工事は適切に行われたとして「当方建物による水の流れの変化については、それを示す根拠がなく、また仮にそのような資料根拠があったとしても、土地利用に伴い、誰しもが受忍すべき事柄」と回答。話し合いは平行線のままで、石井さんは訴訟を視野に弁護士と準備を進めている。

 お台場へ移転する前のフジテレビ正門横で、石井さんが「純喫茶ふじ」を開いたのが1958年(昭和33年)の終わり。今回水没した地下は和田アキ子、明石家さんまら芸能人がよく利用したマージャン荘だった。隣の高層マンション群と比べたら、吹けば飛ぶような地上3階地下2階の雑居ビルだが、石井さんにとっては、がむしゃらに働いて守ってきた城だ。

 「うちの地下部分の防水処理が不十分だったのかもしれないが、マンションが建つまで40年近く、浸水被害はなかった。地下水の流れが変わって、被害を受けることが『誰しも受忍すべき事柄』なのか。この季節になり『またか』と不安が増している」という。

 地価下落によって大都市では高層マンションなどの建設が加速している。高さをめぐる苦情、紛争だけでなく、水害に弱い都市部では似たような被害が増える可能性がある。大規模な都市開発の裏で、石井さんのような問題は見逃されてはいけないと思う。

September 27, 2005 12:07 PM