記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年09月24日

ケッタイな文化生む:永井孝昌

 タレント殺すにゃ刃物はいらぬ、携帯電話で撮ればいい。

 いきなりの出だしだが、いかがだろうか。語呂合わせしました感まる出しか。ようやく涼しくなってきたというのに、暑苦しい書き出しでスイマセン。

 集めているグッズの新しい懸賞が最近、始まった。応募方法は「携帯電話で今すぐ登録!」てな感じだったので、アクセスして、名前など入力していったわけだが、最後に落とし穴が待っていた。「年齢確認のため免許証などの写真を撮影して送信してください」。あらら。カメラ付き携帯使ってないんデス。ま、ほかにも写真を送る方法はあるんだろうが、もはや「携帯のカメラは一般的ツール」という現実を突きつけられたような気がして、応募をあきらめてしまった。

 しかし、カメラ付き携帯の普及ぶりったるや、すごいわ。カーテンで仕切られた小部屋で、機械に100円玉を放り込んで、パシャリと撮った写真を手帳に張り付けることで友情を確かめるような世の中だから、当然といえば当然だが。あなたの携帯電話もカメラ付き? やっぱり? かくいう小社も昨年、記者支給の携帯電話が一斉にカメラ付きに切り替わった。

 でもそんな会社の意向は遠慮して、自分の携帯電話は会社支給、個人用ともに今もカメラはついてない。あの「えっ? 有名人? 誰だれ?」と言いながら携帯をぶしつけに被写体に向けて構えるあの姿には、どうも抵抗感が強くて。

 昔、「サインお願いしま~す。あっ、あの…一応、裏に名前も書いてもらえます? とファンに言われてカチくらわせた」と話していたレスラーがいたが、名前も知らないならサイン頼むなよ、って気持ちは理解できる。携帯で撮られる、というのも近いものがあるんだろう。取材で接する著名人、スポーツ選手にも「携帯はちょっと…」と嫌がる人は多いし。

 多分、その心理は「値踏まれ感」にある。携帯電話のカメラにポーズをとる叶姉妹。待ち受け画面が街で見かけたデーブ・スペクター。いかがだろう。値踏み感は伝わるだろうか。例えが悪いか? 携帯電話で有名人を撮る、って行為はほとんどの場合、撮りたいから撮るではなく、撮れるから撮るという「とりあえず感」だろうから、必然的にありがたみも薄れる。

 このままいけば、普段の会話の中で「どこで撮られてるか分かったもんじゃないね~。写真誌に追われる芸能人の気持ちが分かるよ」なんてトホホな会話がはんらんする日も近いな。一般人が携帯で撮った写真が決め手になって犯人逮捕、てな事件も続々と出てくるかも。実際、大阪府警では事件の目撃情報をカメラ付き携帯で通報できる「画像110番」も始めてるし。

 生活形態がより便利になっていくのは世の流れ。だが技術の進歩は、時にケッタイな文化も生む。どうにも慣れないんだよな。有名人を何とか撮ろうとして背伸びして、携帯かざして画面のぞき込んでる人の口が、そろいもそろって半開きになってる光景が。「タレントの乗った車が、カメラ付き携帯で無理やり写真を撮ろうと夢中になっていたファンを車でひく」って事件、起きてから問題にならなきゃいいけど。

September 24, 2005 12:23 PM