記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年09月12日

たかが1票ではない:小林千穂

 映画担当を10日間だけ離れ、選挙取材班に加わった。事実上、先月8日の衆院解散から始まった選挙戦、いよいよ今日が投開票だ。もう投票に行って、一息ついてここを読んでいる? それとも、投票なんて頭の外にあった? 行きましょう、選挙。忙しいかもしれない、興味がないかもしれない。それも分かる。でも、とにかく行きましょう。今日はこれしか書くことがないくらいなので、投票に行く人、行った人はここで読むのをやめてもいいです。

 10日前、前回の当欄で「半径3メートル、心が動く人のことだけ考えて選べばいい」と書いた。やっぱりそこに戻ってきた。話はそれるが、会社での私の机はデスク席の真後ろという“特等席”。デスクが自分の周囲をぐるりと指し「『半径3メートル』だったら、このあたりも入ってるな」と言った。やっぱり、半径はもうちょっと小さくてよかった…。とにかく、本当に小さな輪でいい。自分のことだけでもいい。心がぐいっと引きつけられることだけを考えたら、そこから連想ゲームの始まり、始まり。

 第1段階。何に興味がありますか? 家族ですか、健康ですか、収入ですか、趣味ですか。

 第2段階。どうしたいですか? 守りたい、安心したい、増やしたい、とにかく楽しくしたい。

 第3段階。このあたりからちょっと難しくなってくるかもしれないけど、どんなふうに? どれくらい、いつまで、どこまで…。

 こんなふうに考えてみてはどうだろうか。

 それでも、選挙に興味が持てない人もいるだろう。やっぱり、それも分からなくない。選挙の翌日を想像してほしい。数字が羅列された開票結果、確実に自分の1票が入っていることを。面倒くさかったかもしれないけど、足を運んで投票したからこそのこの積み上げなんだ、と。数字の羅列の向こうには、昨日の自分や、半径何メートル(もう何メートルでもいい)かの人々、出来事が詰まっていたということが見えるかもしれない。たかが1票なんて決して言わないでほしい。

 -と、興味がないのは有権者1人1人の問題、みたいなことを書いてみたが、興味が持てるように語る側の語る力も問われると感じたのも確か。政治家が話す言葉がすっと耳に入るようになるまでには、ある程度の辛抱が必要だ。ある日の取材。都内数カ所で同じ人物の演説を聞いた。最初は比較的ファミリーや高齢者も多い街だった。ちょっとベタなギャグも受けた。そして、この人物はいわゆる「若者の街」に移動。テレビでもよく見る有名な顔だけに、若い年齢層も立ち止まっていたが、内容、トーン、ベタなギャグも先ほど話したものとまったく同じ。一番前で取材していてはっと振り返ると、おじさんばかりが残っていた。何と言おうと、長い話を聞く集中力は確実に落ちている。語るも聞くも話し方次第と痛感。

 選挙については言いたいことを言ったので、私は故郷の岐阜に乗り込みます。

September 12, 2005 12:50 PM