2005年09月02日
半径3メートルからの選択:小林千穂
故郷の岐阜が、選挙で思いがけず注目されている。全国見渡しても、3人も刺客が送り込まれた都道府県は岐阜だけだ。いいんじゃない、めったに注目されない県だから、きっと全国の岐阜県人は舞い上がっている(はず)。とはいえ、注目は女性対決の1区に集中している。私が生まれた5区は…、微妙な感じだ、残念ながら。
世間の注目は低くても、地元では熱くなっているに違いない。そう思って実家に電話してみた。「選挙どんな感じ? 熱くなってる?」(正確には「選挙どんなん? 熱くなっとる?」ですが)。母が「難しくてよう分からんわ。それより、11日は稲刈りやから。あと、アンタ、ヨン様取材したの?」。「う、うん…。何にも手伝えんくってごめん。ヨン様? え、あ、まあ…」。兼業農家で、しかも大人ばっかりしかいない実家では、選挙より稲刈り、郵政より年金、小泉「ジュン様」首相より、ヨン様な感じ。確かに分かりやすいもんね。
小さいころ、両親と祖母が投票に行く車に乗って、投票所までついて行った。選挙の仕組みはまったく分かっていなかったが、それでもちょっとした「イベント」であることは感じていた。帰りの車の中で「だれに入れたの?」と聞くと、母が「そういうことは言わないもんなの」と一言。お互い何となくは分かっていたんだろうが、両親も祖母も、お互いがだれに入れたかは話さなかったし、知ろうとはしなかった気がする。「そこまで聞いちゃ野暮でしょ」ってな感じだった。
その祖母は80歳を過ぎた今でも、2キロ離れた郵便局に2週間に2度ほど、バスに乗って行く。昔は2時間に1本だったバスも、今では1日で5本に減った。行きか帰りのどちらかは、歩いている。トコトコ、テクテク…。見るたびに小さくなっていく体で、トコトコ、テクテク…。そして、私にハガキを送ってくる。内容はいつも同じだ。家族はみんな元気です、体に気を付けなさい、また帰ってきていろいろ話しましょう-。
今回の選挙、母が「難しくてよう分からんわ」と言う気持ちが分かる。何が正しくて、だれの筋が通っているのかが分からない。「正しそう」で「筋の通っていそう」な選択をすればいいんだろうけど。正直言って、郵政民営化したらどうなるかとか、あまり興味がない。田舎の両親と祖母が気持ちよく、元気で暮らしていてくれればそれでいい。そんなもんだ。せいぜい気持ちが動くのは半径3メートルくらいの人々に対してだ。ただ、半径3メートルの輪がつながって、広がって、社会になっているんだろうから、その辺から考えてみればいいんだろうと思う。もしかしたら、何かが見えてくるかもしれない。
夏も終わった。選挙のことを考えていたら、ちょっとセンチメンタル(死語?)な気分になった。
September 2, 2005 10:05 AM
