2005年09月30日
カジノに賭けた人生:高木一成
ちょっと前に、夏休みを利用してテニアン島へ行ってきた。青い空に、白い砂浜、どこまでも続く海……、は正直どうでもよく、目的は同島ダイナスティホテル内にあるカジノ。5年前に韓国のカジノに行って以来、2度目の挑戦だった。
行ったことがない人もいると思うが、華やかな中にも厳かな空気の流れる「大人の社交場」的な雰囲気は、いわゆる他のギャンブル場とはひと味違う。ディーラーのテキパキとしたカードさばきやチップの扱いは、見てるだけで感心させられショーに近い感じ。内装は豪華だし、ドリンクを運ぶウエイターなどもいてサービスは充実している。
2、3時間ほど順調? にチップを減らしながら、いくつかテーブルを回ったが、途中で驚いたことがあった。何と、日本人の女性ディーラーがカードを配っている。「何でこんなところに日本人が?」。興味があったので、業務後に取材させてもらった。
愛知県出身の井垣歌織さん(30)は東京でOLをしていたことがあるが、去年12月から同カジノで働いている。04年4月にオープンした日本最初のカジノディーラー養成学校「日本カジノスクール」(東京都中野区)の第1期卒業生だ。同校オープンのテレビをたまたま見て「希少価値があるし、他の人がやれないことをやりたいと思った」のがきっかけで、この世界に飛び込んだ。結婚してまだ2年だが「自分が逆の立場だったらやりたいことは頑張ってみたいから」という理解ある夫の賛成もあり“逆単身赴任”の生活を送っている。ルール上、正しい進行をしたのに、お客さんから「ディーラーチェンジしろ」と怒鳴られ、悔し涙を流したこともあった。でもそれ以上に、ディーラーとしてプレイヤーに接するのが楽しいと笑う。
わざわざテニアンで働いているのは、日本ではカジノが合法化されていないため。数年前に石原都知事がお台場カジノ構想を提唱した時は、日本でもカジノ熱が盛り上がった。が、さまざまな障害で行き詰まって、今は話題にならない。野田聖子議員を中心とした超党派組織による「カジノ法案」も、一時は今年中に国会を通る見通しだったが、それどころじゃなくなったムードがある。
当然、カジノ設立反対派の方も多いと思うが、先進国のほとんどで合法化されていることを考えれば、日本だけ健全な経営ができないはずはないと思う。だいたいパチンコやスロットだって本当は換金は違法なのに、実際は景品を第3者が買い上げる方式がうやむやに成立している。カジノ法案成立の過程で、そっちもまとめてすっきりさせちゃえばいいのにと思うのだが…。
話は戻るが、もし日本にカジノができた場合、経験を積んだディーラーが相当数必要になる。今の時点で合法化される保証は何もないが、彼女はそれを見越して、一足早く世界に飛び出した。「将来的に子供ができたら、やっぱり日本でディーラーをやりたい」と井垣さん。ほかにも数人の同校卒業生が同カジノで働いているが「いつかは日本で」の夢はみんな一緒だ。ある意味チップどころじゃなくて、人生を賭けた海外修行。夢を持って臨んだ大勝負の行方は、近い将来の日本のカジノ合法化という形で実ってほしいなと思う。
September 30, 2005 12:06 PM
2005年09月29日
時代に合わぬNHK:千葉修宏
学生時代、就職活動をしている時、すごく不思議だったのです。僕は新聞記者になりたかったのですが、一応マスコミ全般を志望してました。だからテレビ局やラジオ局の資料などを取り寄せたり、実際に会社の人に会ったりしました。周囲の人たちとも「あそこの会社へ入りたいね」というような話をしてました。でもそんな時、友人の多くがNHKを第1志望にしていたんです。
なぜ不思議だったかというと、僕が子供のころ、NHKの番組を見た記憶がなかったから。友人とするのは「8時だヨ!全員集合」とか「オレたちひょうきん族」の話だったし、よく見ていたランキングものの歌番組なども、みんな民放でした。だからNHK志望のヤツを「お前、今までNHKの番組なんか見たことなかっただろ」と、からかってみたりもしたわけです。まぁ公共放送としての安定性なんでしょうか。「ブランド力ってすごいな」と思いました。
現在、そんなブランドの力にも陰りが見えているようです。受信料不払件数も増え、NHK橋本元一会長(61)が簡易裁判所を通じた「支払い督促」など法的措置を導入することを打ち出しました。不払いは、元プロデューサーの番組制作費詐取など一連の不祥事を理由とする130万件のほか、面接困難な訪問集金の未納が130万件、経済的理由や長期不在など139万件。合計約399万件が法的措置の対象となる可能性があるそうです。
法的根拠があるならば「支払い督促」も仕方がないかな、とは思います。ただNHKの成り立ちそのものが、今の時代性に合わなくなってきているのもまた、否めないのではないでしょうか。
僕は現在、取材で米国へ来ていますが、だいたい見るチャンネルは4つです。まず仕事柄、ESPN(スポーツ専門放送局)。そして大好きな音楽を視聴するために、MTVなどの音楽系放送局。CNNでニュースを見て、趣味の映画のためにHBOというチャンネルをよく選択します。
それら4つは自分の意思で選択したチャンネルだから、もしそれに対して「金を払え」と言われても理解できます(ホテルのテレビなので、実際には支払いませんが)。人々の好みが多様化した現代、このように専門放送局が多くある米国では、見た分だけお金を支払うという「ペイ・パー・ビュー方式」が定着するのもうなずけます。
NHKは、見る・見ないにかかわらず、受信料を支払わなければなりません。いっそのこと「ペイ・パー・ビュー」にしてくれれば、みんなが納得するでしょうけど。そうなると「人々の役に立つ公共放送」という根本が崩れることになりますので、それは無理な話というものでしょう。
ただ誤解を恐れずに言えば、時代に合わないシステムを国民に納得させようとしているわけだから、それなりに努力が必要だと思います。橋本会長が渋谷の街頭で頭を下げるとか、局員全員で街角に出てビラを配ったりしてもらえば、必死さも伝わって好感も持てるのではないでしょうか。「NHK新生プラン」とか発表するより、そういう努力の方が大事だと思うんですけどねぇ。
September 29, 2005 12:38 PM
2005年09月28日
ガンバが虎になれば:荻島弘一
阪神のマジックが3になった。早ければ28日にも優勝が決まる。携帯電話の着メロを「六甲おろし」にして、黄色い服に身を包んでいる友人とは、しばらく会わないようにしよう。野球の話も封印。何よりも、38年ぶりに80敗した赤いチームの話題など出たら、情けなくて涙が出てしまう。
それにしても、阪神ファンのエネルギーはすごい。対巨人、東京、中央に対する強烈な対抗意識。いや、敵対意識と言ってもいい。その反発心が、道頓堀川で冷やさなければならないほどの熱いエネルギーを生み出すのだろう(あくまでも個人的な感想です。違っていたら、ごめんなさい)。
街をあげてチームを応援する。欧州のサッカーと同じだ。スペインのRマドリードとバルセロナの強烈なライバル意識は、まさに巨人と阪神の関係と同じ。中央政府の後押しを受け、豊富な資金で人気選手(4番打者?)を次々と獲得するRマドリードは、まるで巨人のようだ。中央政府に反発するカタルーニャ地方のバルセロナは阪神。都市間の対抗意識が強いから、リーグ戦も盛り上がる。
スペインなど欧州各国では、クラブの人気は代表のそれを上回る。各クラブの選手の寄せ集めになる代表チームの人気がないのも、都市間にライバル意識があるからだ。スペインの山本美智子通信員は「代表の試合では、スタンドは埋まらない」と話していた。W杯予選の話題よりも、国内リーグと欧州チャンピオンズリーグの話題が優先する。
ところが、日本では代表チームの人気が突出している。もちろん、クラブレベルでも熱いサポーターはいるし、観客動員に成功しているチームもある。ただ、メディアやスポンサーの関心は代表が中心。本来ならJリーグが盛り上がり、その頂点に代表があるもの。代表の人気ばかりが先行するのは、どうも不自然なような気がして仕方がない。
阪神と同じように、JリーグでもG大阪が首位を走っている。鹿島との決戦に引き分けて、大阪のチームとして初のJリーグ制覇が見えてきた。しかし、阪神に比べて盛り上がっていないように思うのは錯覚だろうか。サポーターレベルでは盛り上がっても、それが街の熱として伝わってこないのは気のせいだろうか。
もちろん、野球とサッカーの社会的な認知度の差はある。Jリーグが「プロ野球に追いつけ」とばかりに「地域に根ざした」プロスポーツを目標にスタートしてから13年目。ものすごい勢いで発展してきたとは言っても、阪神とG大阪の地域への浸透度を見ると、その差は大きい。G大阪が阪神の域まで達するには、まだまだ時間が必要だろう。
もしG大阪の優勝が阪神ぐらい盛り上がる時がくれば、日本のサッカー界も変わるはずだ。単にサッカーというスポーツの枠を超えて、大阪の人たちが元気になるような影響力を持てれば、Jリーグが本当の意味で文化になるのだろう。代表ばかりが騒がれる不自然な状態もなくなる。国内リーグがあっての、代表チームなのだから。
September 28, 2005 11:14 AM
2005年09月27日
都市開発隠れた問題:桐越聡
甚大な被害をもたらした超大型ハリケーン「カトリーナ」に続き「リタ」が日本時間24日、米本土に上陸した。日本では、今月の台風14号で計29人の死者、行方不明者が出ている。自然災害は恐ろしい。未然に防いだり、被害を軽減する研究や対策が深まってほしいと、あらためて強く思っている。
川沿いなどの低地、土砂崩れが起きやすい斜面など、あらかじめ予想される場所では、対策が立てやすいのかもしれない。しかし、「まさか、こんなところで」という場所で水害は起きている。実際、被害を受けた人がいる。
東京都内で喫茶店を営む石井秀雄さん(78)は昨年10月、店舗兼住宅ビルの地下部分が水没する被害にあった。台風22号が通過した後、地下2階部分が水没し、同1階部分は床上浸水。営業していたカラオケスナックは臨時休業していた。石井さんは「営業していたら、犠牲者が出ていたかもしれない」と、顔をこわばらせた。
石井さんのビルは新宿区河田町にある。一帯は高台になっていて、付近に川や貯水池はない。水害とは無縁だった場所の地下部分に推定150トンの水がたまっていた。専門家に調査を依頼すると、地上から流れ込んだ形跡はなく、下水道管から逆流した痕跡もない。地下部分の床や壁面から地下水が浸水したという結果が出た。
建設して35年以上同様の被害はなかった。原因を突き止めたい石井さんは、隣接する土地に2年前に完成した最高41階の高層マンション群に疑いの目を向けた。専門家の意見を聞いて「建設の際の地下工事で、地下水の流れが変わり、その結果、台風の際の集中豪雨であふれ出た」と推測。建設した都市再生機構へ調査を求めた。
同機構は工事は適切に行われたとして「当方建物による水の流れの変化については、それを示す根拠がなく、また仮にそのような資料根拠があったとしても、土地利用に伴い、誰しもが受忍すべき事柄」と回答。話し合いは平行線のままで、石井さんは訴訟を視野に弁護士と準備を進めている。
お台場へ移転する前のフジテレビ正門横で、石井さんが「純喫茶ふじ」を開いたのが1958年(昭和33年)の終わり。今回水没した地下は和田アキ子、明石家さんまら芸能人がよく利用したマージャン荘だった。隣の高層マンション群と比べたら、吹けば飛ぶような地上3階地下2階の雑居ビルだが、石井さんにとっては、がむしゃらに働いて守ってきた城だ。
「うちの地下部分の防水処理が不十分だったのかもしれないが、マンションが建つまで40年近く、浸水被害はなかった。地下水の流れが変わって、被害を受けることが『誰しも受忍すべき事柄』なのか。この季節になり『またか』と不安が増している」という。
地価下落によって大都市では高層マンションなどの建設が加速している。高さをめぐる苦情、紛争だけでなく、水害に弱い都市部では似たような被害が増える可能性がある。大規模な都市開発の裏で、石井さんのような問題は見逃されてはいけないと思う。
September 27, 2005 12:07 PM
2005年09月26日
偶然ではない快進撃:横田和幸
サラリーマンとして会社組織に属せば、1度は社員研修という勉強会に参加しているはず。大阪日刊スポーツだと入社直後、たとえスポーツ記者に配属されるとしても、営業など他部署でどんな仕事をしているかを学ぶ。本紙を扱う販売店で早朝の新聞配達を手伝うこともある。
最近はプロスポーツも同様の取り組みが盛んだ。Jリーグではリーグ全体で新人研修会を開くが、各クラブ単位でも積極的な活動になってきた。関西では今年に入り、C大阪や神戸の選手が、繁華街で試合の告知活動に励む。プロだから試合で結果を残していればいいという考えは古い。チケットを売る苦労や仕組みが理解できなければ、クラブ全体の発展はない。
G大阪が今季、首位戦線に加わっている。優勝すれば13年目での初戴冠。関西勢では最初のリーグ制覇となる。超スローペースだったかもしれないが、組織として成長した証しだ。
クラブ単位での啓蒙活動は、実はG大阪が関西では先陣を切っていた。99年ごろから本格的に選手を駅前に立たせ、営業の機会を与えた。「ツネ様」宮本も立派な経験者。地元小学校を訪問し、選手がサッカー指導を行ったのもG大阪だ。
クラブ主導の研修会も定期的に開く。首位争いをする今夏は、若手対象の研修会があった。「選手とマスコミ」というテーマの内容で、私も記者代表で見学、参加させていただいた。ワールドユース代表の家長、リーグ通算1万ゴールを決めた前田らが練習後にもかかわらず、机に向かう。私たちと「どうマスコミと付き合っていけば良いか」という討論をした。
「僕が最近、困ったことは、記者から同じ質問を繰り返してされること。それが同じ記者が同じ質問をしてくる場合もある。そんな時はどうしたらいいんでしょうか?」。家長が私に質問をぶつけてきた。
私は「ある程度は我慢してほしい」と答え、付け加えた。「もし家長選手の協力で、その取材が記事になったとする。読者が読んで、家長選手を応援したいと思えば、万博に観戦に来てくれるかもしれない。そんな気の持ち方で、営業に協力できることもある」。彼はうなずいてくれた。
G大阪は過去、あしき伝統が先行していた。バブル時代の延長線だったリーグ発足直後、某選手はベンチを外されたことで激高、監督の批判を始めた。別の選手はフロントの批判と、内紛は日常的。勘違いもはなはだしかった。それが選手の人間育成を目的に90年代後半から、クラブが選手に多角的な教育を始め、チームは優勝争いに加わり始めた。
今年の快進撃は偶然ではない。24日の首位G大阪と2位鹿島の首位決戦にはしびれた。2万2000人を超える大観衆が詰め掛けた光景、そして死力を尽くした試合。結果こそドローに終わったが、鹿島との攻防は歴史に残る名勝負だった。前G大阪担当記者として、最後の最後に笑うのはG大阪と信じている。
September 26, 2005 01:05 PM
2005年09月25日
すごい議員が現れた:上野耕太郎
すごい新人が登場した。私が担当している日本ハムのルーキー、ダルビッシュ有投手(19)の話ではない。そのルーキーは北海道旭川市出身とだという。私と同郷だ。
名前は杉村太蔵氏といい26歳。先日の衆院選で初当選した。21日、新人議員研修会に参加し、1人だけ「居残り特訓」をさせられたという。党執行部からその奔放発言に対し「待った」がかかるという得意なキャラクターですでに知っている方も多いと思う。
強烈だ。「たなからぼたもちとはボクのためにあるのかというくらい」「新幹線も飛行機もグリーンですよ、グリーン」「当選して最初に議員報酬を調べました。そしたら年収2500万円ですよ」といった発言を繰り返す。怪物だ。
旭川の有名な歯科医師の息子でテニスで札幌藻岩高に越境入学。国体で同校初の全国制覇をエースとしてもらたしたという。居残り特訓を終えた杉村議員は「お父さん、お母さんに『お前らしくやれ』と言われた。感じたことはどんどん言いたい」と言い放つ。自分の主義主張を説明するときに「お父さん、お母さんに」というもっとも社会人として危険な言葉を選択してみせる。
はっきり言って、理解できない。すご腕だ。というか予定調和といったらよいのだろうか、様式美のようなものが、ぶっ壊れている。こういうときはこう話すとか、そもそも国会議員とは、といった固定観念からはるかに逸脱している。かつて我々の世代は「新人類」と呼ばれたが、また新たな人類の登場する時期にきているのだろう。「既存概念からの脱走兵」だ。
まあ、どうでもいい。
結局は結果だったりする。26歳の新人議員に居残り特訓が課せられた日、後藤田正晴氏が91歳で死去したことが報道された。官房長官や副総理を歴任し、護憲派と呼ばれた。72年のあさま山荘事件で警察庁長官として事件解決を指揮したことでも知られる。亡くなった日の報道では、政界のご意見番に対し賛辞を惜しまなかった。近年、政治家の死でこれほど惜しまれた人を私は知らない。
ただし、後藤田氏は政治家に成り立てのころの評判は悪かったように記憶している。田中角栄首相がごり押しし、後藤田氏は地元徳島から出馬。当時の実力者だった三木武夫氏の強い影響力があった四国からの強引な出馬に後々、遺恨を残したという。後藤田氏の旧内務省出身という肩書も「独善的」というイメージを先行させた。そして30年が過ぎた。政治思想というのは人によってそれぞれあると思うが、評価は大きく変わった。
分かり切ったことですが…。「入る」ことが目的ではなく、そこで何をするのかが大切なわけですよね。年収2500万円になることも、グリーン車に乗れることもそれが付随してくるだけで、目的ではないわけですよ。杉村議員は言う。「ボクが国会議員になってどう感じるのか、庶民とどう違うのか…」。すでに自分は庶民と違うとでも言いたげなその言葉を選んでみせる。「トホホ…。頼むよ、同郷の後輩先生」と思わず言いたくなった。
September 25, 2005 10:26 AM
2005年09月24日
ケッタイな文化生む:永井孝昌
タレント殺すにゃ刃物はいらぬ、携帯電話で撮ればいい。
いきなりの出だしだが、いかがだろうか。語呂合わせしました感まる出しか。ようやく涼しくなってきたというのに、暑苦しい書き出しでスイマセン。
集めているグッズの新しい懸賞が最近、始まった。応募方法は「携帯電話で今すぐ登録!」てな感じだったので、アクセスして、名前など入力していったわけだが、最後に落とし穴が待っていた。「年齢確認のため免許証などの写真を撮影して送信してください」。あらら。カメラ付き携帯使ってないんデス。ま、ほかにも写真を送る方法はあるんだろうが、もはや「携帯のカメラは一般的ツール」という現実を突きつけられたような気がして、応募をあきらめてしまった。
しかし、カメラ付き携帯の普及ぶりったるや、すごいわ。カーテンで仕切られた小部屋で、機械に100円玉を放り込んで、パシャリと撮った写真を手帳に張り付けることで友情を確かめるような世の中だから、当然といえば当然だが。あなたの携帯電話もカメラ付き? やっぱり? かくいう小社も昨年、記者支給の携帯電話が一斉にカメラ付きに切り替わった。
でもそんな会社の意向は遠慮して、自分の携帯電話は会社支給、個人用ともに今もカメラはついてない。あの「えっ? 有名人? 誰だれ?」と言いながら携帯をぶしつけに被写体に向けて構えるあの姿には、どうも抵抗感が強くて。
昔、「サインお願いしま~す。あっ、あの…一応、裏に名前も書いてもらえます? とファンに言われてカチくらわせた」と話していたレスラーがいたが、名前も知らないならサイン頼むなよ、って気持ちは理解できる。携帯で撮られる、というのも近いものがあるんだろう。取材で接する著名人、スポーツ選手にも「携帯はちょっと…」と嫌がる人は多いし。
多分、その心理は「値踏まれ感」にある。携帯電話のカメラにポーズをとる叶姉妹。待ち受け画面が街で見かけたデーブ・スペクター。いかがだろう。値踏み感は伝わるだろうか。例えが悪いか? 携帯電話で有名人を撮る、って行為はほとんどの場合、撮りたいから撮るではなく、撮れるから撮るという「とりあえず感」だろうから、必然的にありがたみも薄れる。
このままいけば、普段の会話の中で「どこで撮られてるか分かったもんじゃないね~。写真誌に追われる芸能人の気持ちが分かるよ」なんてトホホな会話がはんらんする日も近いな。一般人が携帯で撮った写真が決め手になって犯人逮捕、てな事件も続々と出てくるかも。実際、大阪府警では事件の目撃情報をカメラ付き携帯で通報できる「画像110番」も始めてるし。
生活形態がより便利になっていくのは世の流れ。だが技術の進歩は、時にケッタイな文化も生む。どうにも慣れないんだよな。有名人を何とか撮ろうとして背伸びして、携帯かざして画面のぞき込んでる人の口が、そろいもそろって半開きになってる光景が。「タレントの乗った車が、カメラ付き携帯で無理やり写真を撮ろうと夢中になっていたファンを車でひく」って事件、起きてから問題にならなきゃいいけど。
September 24, 2005 12:23 PM
2005年09月23日
愛のムチと暴力の境:栗原弘明
愛情のある厳しさと、暴力とはどこが違うのだろう。
今年の高校野球を考える時、近年にないほど部内、指導者の暴力が問題になった。夏の甲子園大会の直前には明徳義塾、直後には駒大苫小牧の事件が表に出た。来年のセンバツにつながる秋季大会前にも、全国で不祥事が明るみになっている。
私自身、スポーツをしている時は「いじめ」や「暴力」とは無縁だった。高校、大学とも普通の学校で、普通の陸上部だった。個人スポーツという性格上、指導者は選手の自主性に任せていたし、部内は居心地が良かった。練習がストレス発散の場になっていた。勝つことを義務づけられている名門校から見れば、それは甘い、ということになるのだろうか。
アマチュア野球を担当していた01年夏、忘れられないことがあった。PL学園の部内の暴力事件である。直接、担当していたわけではなかったが、名門中の名門で起こったことと、夏の大阪大会不出場という点で衝撃的だった。私は記者の目で以下のように述べた。
◆記者の目 問題は「厳しさ」と「いじめ、暴力」の違いにあるのではないか。線引きが難しいのは当然だが、どこまでが許され、許すべきでないのか。(中略)その線引きをあいまいにしてはこなかったか。指導者、学校側に実態把握の甘さはないか。(一部抜粋)
あれから4年。今年からくしくもロッテ担当となり、今江敏晃内野手(22)と接するようになった。今季から三塁の定位置をつかみ、いきなりブレーク。打率ランキングでも一時期トップに立ち、若き首位打者の座も夢ではない。
今江にとって、高校最後の夏はやって来なかった。PL学園が不出場となった夏、しかも、彼は主将を務めていたのだ。「あの夏のことを聞くのは、やっぱりイヤ?」と問いかけると「そんなことはないですよ。実は、あまり聞かれたことはないんです」と正面から受け止めてくれた。
今江は夏の大会前、ドラフトの目玉に挙がっていたわけではない。大阪大会が自分の人生の夢を実現するアピールの舞台でもあった。それが奪われる事態になった。主将として責任も感じた。「出場できないことを聞いた時、謝罪しようと思った。寮から飛び出して、監督のところへ走って行ったんですが、はだしだったようです。それを自分は覚えていないんですよ」。それほど動揺していた。「主将として、自分のことだけをやればいいというものではない。常に、全体を見ていなければいけないですから」。その中で、起こってしまった事件だった。
その夏を乗り越えて自主トレを続け、プロ入りを果たした。現在、ロッテの快進撃の柱となっている。人間性から見ても、将来、チームを背負って立つ人材になることは間違いない。不幸な事件で、活躍の場を失った高校球児は少なくないだろう。だが、それは取り戻せる。今江の活躍はそれを勇気づけるものであると思う。そしていま1度、愛情のある厳しさと、暴力をアマ球界が考え直す時だと感じている。
September 23, 2005 03:47 PM
2005年09月22日
芸能も生が断然いい:小林千穂
「スポーツは生がいい」と当欄で先輩記者が書いていたが、何事も生がいいと感じたことをいくつか。
大阪へ落語を聞きに行った。チケットをもらったので(東京在住の人間によくもまあ…)出掛けて行った。出掛けていったというより、飛んでいった。飛んで伊丹空港に着き、某航空会社のポスターに書かれた「おさきに」というキャッチコピーが「おおきに」に見えるくらい、ハイテンションになってしまった。
落語は生で聞くのが断然いい。生で聞くと、いい意味でハードルが低くなる。心地いいのだ。中には、ちょっとやそっとじゃ笑わんぞという人もいるが、私はユルくなる。ユルくなるばかりじゃない。信じられないかもしれないが、スポーツと同じくらい、演者と客席が一体になるような時もある。緊張がぐーっと高まって高まって、つばを飲むのもはばかられるくらいの時がある。この落語会でもらった別の会のチラシで、「かぶりつき特別席」というのを見た。1万円で最前列中央なのだという。最前列で見たいかどうか、前方ならそれでいいのかは別にして、生の迫力というのは、スポーツにも負けていない。生の次に楽しめるのは音だけ。ひたすら想像と妄想の世界に浸れるのだ。
面白くないのはテレビだと思う。「大阪落語ツアー」(勝手に名付けました)からいい気分で帰宅したので、徹底的に落語漬けになろうと、録画しておいた落語番組を見た。高座ではほんわかした優しげな笑顔の師匠が、とんでもない悪人顔に見えてびっくりした。おかげで「憎めない」主人公の男が憎たらしかった。そして、やっぱり面白くなかった。
今回ばかりではない。テレビで落語を見て満足したことがない。今回の大阪みたいに興奮しなくていいが、会場に向かうにつれ楽しみが増す感じ、客席や会場の雰囲気、演者の表情、声…、トータルで楽しめるのはやっぱり生しかない。落語はそんなに動きがないから、テレビでも十分楽しめるでしょう、と言う人もいるが、だめなんです。そういう意味で、朝4時とか5時とかとんでもない時間に追いやられている落語番組は、それでいいような気もする。これが落語じゃない気がするというか、思われたくないというか。つまりは「生が断然面白い!」と言いたいわけで…。
落語のことを書きすぎたので、歌についても少し。あるアーティストのイベントで、他社の女性記者が、取材にしては珍しく拍手して帰っていった。後日、彼女が「あれからヘビーローテーションで彼の曲を聴いている」と。生で聞いたからこそだったと思う。私も先日同じようなことがあった。インタビューをした歌手がイベントで1曲歌うというので、記事に書き込めることがあればと取材に行った。ピアノの弾き語りが始まると、透明感のある声が、ビルの吹き抜けを「駆け上がった」ような気がした。生の魅力そのものだった。1曲、ほんの数分、ちょっと別の世界だった。
September 22, 2005 01:35 PM
2005年09月21日
代表を優先すべきだ:岡本学
サッカー日本代表主将、G大阪DF宮本恒靖の複雑な表情が印象的だった。12日に都内ホテルで行われた2005JOMOオールスターサッカー(10月9日、大分スポーツ公園総合競技場)のメンバー発表。J-WESTで最高得票を獲得し、あらためて人気の高さを証明したのだが、喜びでいっぱいという表情ではなかった。オールスターへ出場することは、少なくとも同時期に行われる日本代表の親善試合、ラトビア戦(同8日、リガ)欠場を意味している。
日本代表東欧遠征(10月4~13日)のメンバー発表は今月末に予定されている。ジーコ監督がどのような選手選考をするか注目されるが、今月7日の親善試合ホンジュラス戦に選出されたメンバーから宮本のほか、DF三浦(神戸)中沢(横浜)加地(東京)MF福西(磐田)遠藤(G大阪)小笠原(鹿島)FW大黒(G大阪)玉田(柏)はオールスター出場優先をジーコ監督から通達されている。ラトビア戦に続いて12日に行われるウクライナ戦(キエフ)へのオールスター組の参加も「ジーコの意向もあるが、DFの2、3選手になるのでは」(日本協会川淵三郎キャプテン=会長)と限定される見通し。オールスターのメンバー発表には、選手では宮本とJ-EASTの最高得票、MF阿部(千葉)しか姿を見せなかったが、サポーター投票で選ばれた両軍22選手が出席していたら、そのほかの代表組はどんな表情を浮かべていたのだろうか。
本来、オールスターは7月開催の予定だった。しかし、8月17日にW杯アジア最終予選の最終イラン戦があり、ジーコ監督の意向もあって、W杯予選に集中できるよう配慮した経緯がある。だから、10月に日程を移動したオールスターへ代表組の出場を優先せざるを得なかった。代表戦開催時期を外してオールスターを組み込むこともできないほど、日本サッカー界の日程は詰まっており、日程をバッティングさせることは苦渋の決断だった。
だが、選手の立場にしてみれば、オールスターよりも欧州組も参加する東欧遠征に参加したい気持ちが強かっただろう。来年6月にはW杯本大会も控え、23人のベンチ枠、さらにレギュラー争いは激化している。数少ないアピールの場を失うことに落胆するだろうし、数少ない強化の場を失う代表チームにとっても痛手。ましてや、出場するだけで満足していた98年フランス大会と違って、ドイツでは上位進出という結果を求められているし、チーム自体もそれを目指している。
個人の意見としては、オールスターより代表を優先すべきだと、今でも思っている。ただ、ここまで来たら、そうもできないだろう。オールスターに出場する代表組にはモチベーションを下げずに「夢のあるプレー」を見せてもらいたい。そして日本協会、ジーコ監督には、オールスター出場の代表組の中で強行日程にもウクライナ戦参加を希望する選手を、遠征メンバーに加えてほしい。
September 21, 2005 11:43 AM
2005年09月20日
笑える!?「変漢」ミス:高木一成
15日に日本漢字能力検定協会から“変漢ミス”コンテストの年間賞が発表された。パソコンやメールの文章作成中のうっかり「変換」ミスで、同じ読みで全く違う意味になってしまった例を募集し、面白さを競ったもの。昨年7月から今年5月までに5946作品が集まった。一般のオンライン投票で選出された最優秀作品は、
(正)「今年から海外に住み始めました」
↓
(誤)「今年から貝が胃に棲み始めました」
魚介類好きの人が、念願の海外移住を実現させて送ってきたメールらしい。確かに意味は通じてしまうから面白い。
中には、これ変換ミスじゃなくて自分でつくったネタじゃないか? って疑いたくなる作品もあったが、クスッと笑ってしまう文章が集まっていた。が、しばらくして笑ってばかりもいられないな、とも思い出した。
「活字を扱う仕事だから、当然新聞記者って漢字には強いんでしょ?」。もしかしたら、一般の人の新聞記者に対するイメージって、こういうのも多いのではないか。
実は僕自身、入社前はそうだった。就職活動ではマスコミ、それも新聞社や出版社など活字を扱う会社に絞って考えていたが、履歴書やエントリーシートを書くときにちょっと困ったのが資格の欄。当時は運転免許すら持ってなく、活動前に「白紙じゃさすがにまずいかな」と思っていた。英語はもともと苦手だったし、大学時代の怠けぶりから、英検、TOEICなどで上を目指すのもまず無理。そこで、仕事の役に立って資格欄も埋まりそうだと思いついたのが日本漢字能力検定だった。詰め込み勉強で準1級の試験に受かって、日刊スポーツの入社面接では「文章を書く者として漢字はしっかり覚えようと思いました」とアピールしていたのを思い出す。それがどう評価されたかは分かりませんが。
ただ、その努力が今はどうなっているか。取材中、騎手や調教師の話をノートにメモしていても、とっさに漢字が浮かばないときがある。急いでいるから後で見返して字が汚いのは仕方ない。が、平仮名の多さには自分であきれてしまう。入社以来、原稿書きはワープロ、パソコンが基本。いかに「変換」機能に頼ってきたか。いかに字を書かなくなったか。読める漢字はあまり減らないけど、スッと書けなくなっている漢字が増えるたびに痛感する。
でも、これはほかの人も結構感じていることなのではないか。そういえば、今の小学生は漢字の書き取りをあまりしないと聞いたことがある。漢字はその文字自体が意味を表す「表意文字」。漢字の力が低下するってことは、正しい意味を理解し、伝達する能力が下がるということ。例えば個人間のメールのやりとりが、平仮名ばかり、変換間違いばかりの文だったら、勘違いだらけの世の中になってしまう。冒頭のコンテストは「漢字は必須能力であることや、正しく使用することの重要性を再認識する」のが目的。ミスの例を見て「面白いね」って思ううちはいいけど、将来的に「どこが間違っているの?」って人が出てこないだろうかと、ちょっと大げさながら思ってしまった。
September 20, 2005 11:44 AM
2005年09月19日
田口から学ぶ「礼儀」:千葉修宏
皆さんの周りに、あいさつをしても全然返事をしてくれない先輩とか上司っていませんか? 僕の会社に、あいさつをしても会釈すら返してくれない人がいるんですよ。僕が後輩だから、しなくてもいいと思ってるのかもしれません。あるいは僕の存在感がなさ過ぎて、同じ会社の人間と思っていないのかも(笑い)。でも、たとえ相手が年下だとしても、人と人との関係って、それじゃいけないと思うんです。
こんなことを考えるのも現在、その“あいさつゼロ人間”とは正反対にいる人を取材しているからです。昨年、惜しくも逃したワールドシリーズ制覇へ向け、大活躍中のセントルイス・カージナルス田口壮外野手(36)。僕みたいな若造の記者にも、こちらが恐縮してしまうくらい丁寧にあいさつ、話をしてくれる、人間として見習いたい人物です。
そもそも日刊スポーツでは、日本人選手が所属するすべての大リーグ球団に常時、記者を派遣しているわけではありません。少ない人数でメジャー全体をカバーしなければならないので、僕がカージナルスを本格的に見るようになったのは、地区優勝が目前に迫ってきた今月に入ってから。初めて本拠地ブッシュスタジアムに行った時も、何か申し訳ない気持ちがありました。
でもそんな“いちげんさん”記者にも田口選手は誠意を持って接してくれます。先日、日本の野球関係者から託された田口選手へのメッセージを伝えに行きました。すると聞き終わった後、ロッカー室に響き渡るような声で「ありがとうございます」と言われました。僕は心の中で「ほとんど初対面に近い記者にそんな。こっちこそ『ありがとうございます』ですよ」と、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
13日のパイレーツ戦前。今シーズンを振り返ってもらうために、田口選手にインタビューを申し込みました。すると忙しい時間帯にもかかわらず「(午後)4時30分にベンチにいます」と笑顔でOKしてくれました。ひと通り話した後、僕は本題をそれました。「田口選手はなんで、そんなに丁寧に優しく記者に接することができるのですか?」と野球とは全く関係ない質問をぶつけると、こういう答えが返ってきました。
田口「そんなことないですよ。仮に下調べをしてこない記者がいたら『お前ええかげんにせいよ』となるわけです。全然、考えのまとまってない人がポッと来ても『お前、何言うとんねん』となります。周りの人は僕のことを人格者のように言ってますけど、そんなことはないんです。ただ僕のところに来ていただいている方々は、ちゃんと調べて、できる限りのことをしてきていただいているんで。それで丁寧に質問していただけるから、僕も丁寧に答えるだけなんです」。
たぶん田口選手は本当に人格者なのですが、謙そんしているのでしょう。でもこちらが誠意を持って接すれば、相手の対応もおのずと変わってくるという、記者として、人間として大切なことを教わった気がします。しつこくあいさつをしていれば、会社の先輩も会釈ぐらいは返してくれるようになりますかね。
September 19, 2005 12:46 PM
2005年09月18日
スポーツは生がいい:荻島弘一
柔道の世界選手権が終わった。五輪に次ぐ2年に1度のビッグゲーム。選手にとって大きな目標だ。テレビを見るこちらにも力が入る。しかし、そんな思いを裏切るように、現場の記者からの電話。「鈴木、優勝しました」。えっ、もう試合終わっちゃったの?
スポーツ中継は基本的にはライブ(生)で、録画の時だけ、画面のすみに「VTR」の文字が出ると思っていた。「思っていた」というのは、最近生ではないことが多いからだ。この夏は、水泳、陸上、柔道と、立て続けに世界選手権が中継された。五輪翌年の「谷間」でも、世界のスポーツを満喫できた。しかし、どれも生なのかVTRなのかが、はっきりしなかった。
もちろん、「LIVE」とか「VTR」とかが表示されることもあった。しかし、その境がはっきりしない。「いよいよ○○の○○!」というテロップが流れた後CMに入るが、CMがあけても何も起こらず。チャンネルを変えようとリモコンに手を伸ばすと「次は○○の○○!」。視聴者を釘付けにする手段としては最高だろうけど、ちょっとねえ、とは思う。
「それはスポーツ新聞にいるからで、普通の視聴者には関係ない」と友人に言われた。確かに。柔道世界選手権の進行を知らなければ、別に違和感はない。選手の紹介VTRの方が楽しいし、見たいという気にもさせる。スポーツ中継としては「あり」なのだろう。
でも、やはりスポーツはライブ感が欲しい。選手に対して「がんばって」と応援しているファンは多い。テレビの前で、遠くエジプトまで念を送っているはずだ。しかし、すでに試合は終わっている。「選手と時間を共有している」「一緒に戦っている」という気持ちは残念ながら届かない。
もう1つ、今はリアルタイムで情報が伝わる。かつて「三菱ダイヤモンドサッカー」という番組があった。欧州のリーグ戦を2週に分けて放送するため、前半を見ると翌日は学校で「後半は誰が交代するか」とか「あいつは代えた方がいい」とか、とっくに終わった試合で熱くなった。当時は良かった。ほかに情報を入手する方法がなかったからだ。しかし、今はインターネットなどでテレビよりも早く世界中のスポーツの結果を知ることができる。
もちろん、水泳や陸上、柔道の世界選手権がテレビで見られるのは素晴らしいことだ。巨額の放送権料を払い、そのスポーツを盛り上げようとする関係者の努力には頭が下がる。テレビマネーでスポーツ界が動いているのも事実。テレビに合わせて、ルールを変える競技まである。五輪もW杯も、今やテレビなしでは成り立たないのだから。
ただ、やっぱりスポーツは生がいい。空気、熱気、生に勝るものはない。無理に「スポーツ・バラエティー」にすることはないと思うし、それで「視聴率が取れない」のなら、深夜枠で放送すればいい。もちろん「ショーアップされた番組のほうが楽しい」という人もいるだろう。「いい時間で見たい」という人もいるはずだ。それでも、あえてテレビには、もっと生の興奮を音と映像で伝えて欲しいなと思う。我々にはできない、テレビにしかできないことなのだから。
September 18, 2005 12:40 PM
2005年09月17日
釈然としない小泉語:桐越聡
自民党が総選挙で地滑り的勝利を収めた。与党の327議席は衆院の総定数の3分の2を超えた。小泉首相は選挙結果を受けて「国民の声を真剣に受け止め、早期に郵政法案を成立させるよう努力したい」と話した。郵政だけでなく、自らが描く「改革」に、ただちに取り組んでもらいたい。
郵政民営化関連法案について小泉首相は「国民に聞いてみたい」と、衆院を解散した。その直後から郵政一本やりを貫いた。ひたすら「郵政民営化、イエスかノーか」と問い続け、これまでにないような多くの国民の支持を集めた。
民主党は大惨敗。引責辞任した岡田代表は13日、東京・永田町の党本部で行われた最後の定例記者会見で、選挙戦について次のように話した。「大きな政策について論じあうのが、本来あるべき姿だと思います。与党がワン・イシュー(1つの争点)で戦うのは本来、禁じ手。民主主義を深めていくという意味では決して褒められたやり方ではない」。私には意味のない強がりや、敗者のただの負け惜しみには聞こえなかった。
小泉首相の自民党総裁任期が切れる来年9月ごろ、総選挙をやると決まっているのなら、郵政一本やりの選挙戦も分からなくはない。しかし、来秋の総選挙は現実的ではなく、今回は数年は続くだろう、自公政権か、民主党政権かを選択する選挙だった。仮に任期延長の考えがないとしても、年金問題や、中国や韓国との関係をどうするかなど、さまざまな議論を展開して説明する責任が、小泉首相にはあったはずだ。
しかし、論点をそらしたり、論戦を拒んでいると受け取られかねないスタンスが、小泉首相にはしばしば見受けられた。「郵政民営化は経済活性化の手段だ。経済発展なしには戦略的外交も進まない」。「靖国問題がなければ、日中はうまくいく、とは思っていない」。独特の“小泉語”を連発した。
「全国で38万人の国家公務員が郵便局で仕事をしている。警察官より、外務省の職員より多い。こんなにたくさんの公務員でないと仕事ができないのか」と繰り返した。公務員を減らすため、郵政民営化が効果的という主張は分かる。しかし、郵便局、警察、外務省の職員に共通しているのは公務員という身分だけ。これらをいっしょくたにして比較するのは、ちょっと無理があった。
投票日翌日の12日には「外交、内政、難問山積。ありすぎて困るぐらい」とも述べている。ならばなおさら選挙戦中に、政策はマニフェスト(政権公約)に書いてある、とやり過ごしてはならなかった。郵政以外の問題を、ごまかさず、そらさずに、自ら国民へ語るべきだったのではないだろうか。
小泉首相は8月29日の党首討論会で「候補者もいろいろ、政党もいろいろ」と話した。その論法でいくと「選挙戦術もいろいろ」なのかもしれない。しかし、私の胸には何か釈然としないものが残っている。
September 17, 2005 01:17 PM
2005年09月16日
武蔵の父にKO負け:横田和幸
最近のパチンコは「バトル系」の台が大ヒットするらしい。代表格はウルトラセブン、北斗の拳。主人公のセブンらが敵と対戦、勝てば大当たりや連チャンが続いていく。ヒットの理由は「打ち手がキャラに感情移入でき、自身が正義のヒーローになれるため」らしい。なるほど、と感心してしまう。
少し意味は違うが、私が今、最も感情移入するバトル系の人物は、K-1ファイターの武蔵(32=正道会館)だ。今夏、米人気SF映画「スター・ウォーズ」の試写会で、ゲスト出演した彼と1対1で取材する機会があった。
楽屋での第一声は、笑顔で「ウおっす」。アポなし取材なのに、気さくに話をしてくれた。「この映画は子供心にワクワクして、シリーズは見てました。ライトセーバーが格好よくて欲しかったんですよ~」。森昭生(本名)の素顔がのぞいていた。
武蔵好きになったのは、さらに理由がある。「人気テレビアニメ『一休さん』に登場した寺社奉行、蜷川新右衛門は、武蔵一家の先祖だった」という企画取材のために先日、大阪在住の武蔵の父、森康行さん(65)と大阪府内の某駅で待ち合わせをした。突然のお願いで、互いに顔を知らないのに、お父さんは約束の時間より随分前に到着されていた。
「初めまして。武蔵の父です。この駅の周辺は私、あまり知らないので、先ほど、歩いて調べておきました。ここから数分のところに喫茶店があるので、そこで取材はいかがですか」。
取材を依頼した人間が使うべき「気」を、お父さんに使っていただくとは…。これだけで記者はKO負け。ジーンときた。武蔵の生い立ちや、新右衛門さんにまつわるエピソードを、長時間にわたって話していただいた。
新右衛門さんは室町時代の連歌師でもあり、文学史に名を残す。武蔵の祖父は東大出身、お父さんは学習院大卒。武蔵も大学に進んで、インストラクターのアルバイトをしていたそうだ。文武両道を絵に描いたような一家で、いろんな側面を取材できたことは、記者生活の大きな財産。武蔵の人間性がどんどん好きになった。
この取材の影響を受けてか最近、ケーブルテレビで「一休さん」の再放送を見ている。一休さんが禅問答の冒頭で「そもさん(さあ、この問題分かるかな? という意)」といえば、新右衛門さんが「せっぱ(説破=説き破るぞ)」と応じる場面がある。30年前だと意味が分からなかったが、今だとよく理解できる問答の場面だ。新右衛門さんの顔が武蔵に見えたりする。
こんな再発見も、武蔵および、お父さんに感謝する次第。今月23日の「K-1 WORLD GP開幕戦」には、2年連続準優勝の武蔵が出場する。先週、お父さんに電話すると「優勝できますかねぇ」とドキドキされていた。さあ、悲願の世界一へ。ウルトラセブンよりも強い、私の正義の味方の登場でもある。
September 16, 2005 10:13 AM
2005年09月15日
薄らいでいる熱と信:上野耕太郎
夏の甲子園の優勝校、駒大苫小牧が13日、秋の大会の地区予選の初戦を突破した。前部長の体罰問題に発した事件からようやく、再出発となった。私が住む北海道では8月、同校の甲子園連覇とそれ以降に発覚した体罰問題で大きく揺れた。私自身もいろいろ考えさせられた。
今、教育って大きな問題だと思う。今回の衆院選でも少子化問題、教育現場の荒廃が盛んに取りざたされた。ただし、具体的な中身が伝わってきたとは言い難い。日本高野連は高校野球を教育の一環としてとらえている。度重なる不祥事などは高校野球の問題ではなく、教育の現場の今を伝えているのではないか。
少し前に私は小学校時代の恩師と連絡を取った。その恩師は現在、校長を務めている。「正直、今は大変だよ。大人が大人じゃない。授業参観でも親同士がおしゃべりをしている。そんな中で教師もどうなのだろうか。若い先生に部活動を持ってほしいとお願いしたんだよ。そうしたら『休日が減るからいやです』と一言で断られたよ。寂しいねぇ。教える方にも親にも問題はあると思うんだ。すべてとは言わないが…」。何か大人全体が周囲の状況を把握していないというのか…、一言で言うなら子供だ。
正確には思い出せないが、かつて田中角栄は「子供は3人つくりなさい。両親のひざは2つしかない。1つ足りないと子供に競争心が生まれてくるから」と言ったそうだ。少子化から子供は過保護に育っている。その言葉には単純だが、含蓄があるように思える。
一方で北海道で数度、甲子園に出場を果たした監督はこう言った。60歳を超えるその監督は「子供はつくらなかったんだ。生徒が我が子だ。子供ができたらどうしてもそっちに目が行ってしまうからなぁ。母さん(妻)も良く理解してくれたもんだよ」と振り返った。野球漬けの毎日。そこに自分の人生をかけた情熱を感じる。
難しい時代だ。情報の流通によって価値観の多様化が進む。だからこそ、みんなが同じ方向には向きにくい。私は全体主義が嫌いだからその傾向には異論を挟まない。NHKの紅白歌合戦の視聴率低下もそういう時代なのだろう。その代わり、人と接するときの深さというのか、密着度が減ってきているように思う。その希薄さは教師と生徒の関係だけではないだろう。これって一体なんだ。
ある著名な教育評論家は取材時に「引きこもりと言われる現象は確かに問題だ。その引きこもりの高齢化も進んでいる。ただ戦後すぐに比べ、犯罪件数が激減しているのも人は外に向かず、内に向かっている証拠なのかもしれない」と説明した。そう考えると今の我々は「熱」というものが薄くなっているのかもしれない。「情熱」は「微熱」になり、「信頼」は「信用」に変わってきている気がする。私は教育現場の暴力を是認しているわけではない。ただし、情熱と信頼が薄らいでいるのであれば、そこに一番の問題がある。
September 15, 2005 12:54 PM
2005年09月14日
環境考えるきっかけ:永井孝昌
風が吹けば桶屋がもうかる。というのは昔の話で、今は、強風が吹き荒れて納豆屋が悲鳴を上げている。
原油価格が高騰している。世界各地の製油所での相次ぐトラブルなど価格高騰には複数の要因があるが、そこに米国南部の石油精製施設が集中する地域を襲ったハリケーン「カトリーナ」が拍車をかけた。
影響は日常生活にも及ぶ。大豆を煮る重油の高騰と容器パックの値上がりで悲鳴を上げる納豆業界はその一例。ガソリンスタンドで「満タンね」と言うのもためらわれる現状では運送業だけでなく、水産業でも船の燃料費が例年以上にかかるために一部の魚の値段まで上昇傾向にある。このままいけば、タダだと思っていたスーパーのビニール袋が有料になる日も近い。
カトリーナに限らず、九州・中国地方に甚大な被害をもたらした台風14号など、最近の台風の大型化は地球温暖化が原因、という説がある。地球の温暖化で海面温度が上昇し、その影響で台風が大きく成長する、というもので、もしそうならばこう暑くてはとエアコンをかけ、近場の外出にも車を使い、連日の外食で割りばしを浪費している私のような人間が台風を育て、その被害によるガソリン高騰で自分の首をしめている、ということにもなる。
そんな環境を危惧(きぐ)し、自身の生活からできることに取り組もう、としている人が増えている。「ロハス」と呼ばれ、電通の調査でも「2005年後半~2006年のトレンド予測」で注目されている。メディアで取り上げられる機会も急増しているので、知っている人には何をいまさら、知らない人には何それ、という典型的な言葉かもしれない。
ロハス(LOHAS)とは「Lifestyles Of Health And Sustainability=健康で持続可能なライフスタイル」の略。ごくごく簡略化して説明すれば、自分の健康と地球環境を同時に考える生活スタイル、ということになる。といっても決して自己犠牲的ではなく、自分の幸せを第一義に考えながらその行動が環境問題に寄与すればもっといい、とする志向なのが肝。買い物に行く時は買い物かごを持って、外食する時は自分のはしを持参して、というだけではなく「ちょっと高いけど体にいいから有機野菜を買おう。地球にも優しいし」と考えることも十分ロハス的、といえる。
ロハスは今後、さらに広く浸透していくことだろう。それが一時的なブームで終わるのかどうかは分からないが、ロハスという言葉が世論をけん引していく形で環境問題への意識が高まっていくならば、時流に乗ることは決して悪いことではない。無理してストイックになったり、偽善的になる必要はない。何かをしたい、と思った時に、何が地球環境に優しいのか、という新たな「選択基準」を自分の中に持つだけで、きっと発見がある。
まずはできることから。しかも自分のために。あまりに非ロハス的な生活を続けている私も、九州、米国南部の被災地の惨状を見れば心が痛む。ガソリンも高くなったことだし、少しは運転を控えて自転車でも買おうかな、と思っている。
September 14, 2005 12:23 PM
2005年09月13日
球界にも“民営化”の波:栗原弘明
小泉構造改革の一環が、日本のプロ野球を変えることになるかも知れない。そう思える出来事が、目立たないが、起こっている。
千葉市は今月初め、千葉ロッテマリーンズの本拠地である千葉マリンスタジアムの管理、運営を民間に託す「指定管理者制度」を適用させることを明らかにした。その候補にロッテ球団と現在、同球場を運営している千葉市の第3セクター、千葉マリンスタジアムの2社を挙げた。今まで同球場は土地は千葉県、所有は千葉市、運営を第3セクターが行っているという構図だった。
ロッテは今季、開幕前から積極的に県、市、マリンスタジアム社に対し協力要請を行い、様々な改革を行ってきた。敷地内での屋台の出店、外野フェンスの広告、周辺道路への懸垂幕設置、街灯の照度アップ、そして、来季からのフィールドシート設置などなど…。それでも、球団経営の収益構造を根本から変えるような抜本的な改革には遠く及んでいないのが実情のようだ。
だが仮に球団が管理者に指定されれば運営そのものを一定の枠の中で自由にすることが可能になるのだ。集客作戦、広告営業、グッズや飲食店の営業を行い、収入も球団のものになる。球場周辺には広大な土地があるが、有効利用はされていない。ロッテは球場を含めてボールパーク化構想を持っているが、指定管理者の実績が足掛かりとなれば、再開発も可能になるかも知れない。ビジネスの領域だけではなく、今後、球団が「プロ野球」というソフト(ゲームやチーム)とハード(球場)を最大限活用した地元密着の新しいモデルが生まれるかもしれない。「地域にとってメジャーチームが地元にいる誇り」が浸透しているアメリカのように。
昨年、球界再編騒動の中で、球団の赤字体質が問題となった。球団の球場運営が可能となれば、経営が根本から変わることになる。野球の試合は本拠地で毎日行われるわけではないから、球団がコンサートなど、様々なイベントを仕掛けることが可能になる。
まだロッテが千葉マリンの指定管理者に決まったわけではないが、市が同制度の適用を発表したこと自体、前向きな姿勢であると解釈しても強引ではないだろう。指定管理者制度そのものは、一昨年に地方自治法の一部が改正され、公共施設の新たな管理方式として導入された。自治体としては民間企業の持つ活力を利用できるというメリットがあり、小泉構造改革の一環として実現したといえる。
日本の野球、サッカー場は自治体が所有しているケースが多い。球団が直接球場を建設するには膨大な費用がかかるし、リスクも大きい。そんな中で同制度が適用されれば、プロ球団と自治体との協力の中で、地域に根ざした文化的な可能性も広がる。今回のケースでロッテが指定管理者になればプロ野球、Jリーグを含めたプロ球団の適用第1号となる。制度そのものには、まださまざまな問題やいろいろな意見があるだろう。だが日本の球団経営を根本から変えるスポーツビジネスの「タイムリーヒット」として今後の展開に注目したい。
September 13, 2005 03:00 PM
2005年09月12日
たかが1票ではない:小林千穂
映画担当を10日間だけ離れ、選挙取材班に加わった。事実上、先月8日の衆院解散から始まった選挙戦、いよいよ今日が投開票だ。もう投票に行って、一息ついてここを読んでいる? それとも、投票なんて頭の外にあった? 行きましょう、選挙。忙しいかもしれない、興味がないかもしれない。それも分かる。でも、とにかく行きましょう。今日はこれしか書くことがないくらいなので、投票に行く人、行った人はここで読むのをやめてもいいです。
10日前、前回の当欄で「半径3メートル、心が動く人のことだけ考えて選べばいい」と書いた。やっぱりそこに戻ってきた。話はそれるが、会社での私の机はデスク席の真後ろという“特等席”。デスクが自分の周囲をぐるりと指し「『半径3メートル』だったら、このあたりも入ってるな」と言った。やっぱり、半径はもうちょっと小さくてよかった…。とにかく、本当に小さな輪でいい。自分のことだけでもいい。心がぐいっと引きつけられることだけを考えたら、そこから連想ゲームの始まり、始まり。
第1段階。何に興味がありますか? 家族ですか、健康ですか、収入ですか、趣味ですか。
第2段階。どうしたいですか? 守りたい、安心したい、増やしたい、とにかく楽しくしたい。
第3段階。このあたりからちょっと難しくなってくるかもしれないけど、どんなふうに? どれくらい、いつまで、どこまで…。
こんなふうに考えてみてはどうだろうか。
それでも、選挙に興味が持てない人もいるだろう。やっぱり、それも分からなくない。選挙の翌日を想像してほしい。数字が羅列された開票結果、確実に自分の1票が入っていることを。面倒くさかったかもしれないけど、足を運んで投票したからこそのこの積み上げなんだ、と。数字の羅列の向こうには、昨日の自分や、半径何メートル(もう何メートルでもいい)かの人々、出来事が詰まっていたということが見えるかもしれない。たかが1票なんて決して言わないでほしい。
-と、興味がないのは有権者1人1人の問題、みたいなことを書いてみたが、興味が持てるように語る側の語る力も問われると感じたのも確か。政治家が話す言葉がすっと耳に入るようになるまでには、ある程度の辛抱が必要だ。ある日の取材。都内数カ所で同じ人物の演説を聞いた。最初は比較的ファミリーや高齢者も多い街だった。ちょっとベタなギャグも受けた。そして、この人物はいわゆる「若者の街」に移動。テレビでもよく見る有名な顔だけに、若い年齢層も立ち止まっていたが、内容、トーン、ベタなギャグも先ほど話したものとまったく同じ。一番前で取材していてはっと振り返ると、おじさんばかりが残っていた。何と言おうと、長い話を聞く集中力は確実に落ちている。語るも聞くも話し方次第と痛感。
選挙については言いたいことを言ったので、私は故郷の岐阜に乗り込みます。
September 12, 2005 12:50 PM
2005年09月11日
審判向上の環境作り:岡本学
Jリーグ、海外の国際ゲームを裁く日本人審判にミスが続いた。本来PKやり直しを命じなければいけない場面で相手に間接FKを与えてしまう。また、本来警告を出す場面で退場にしてしまう。Jリーグ、日本サッカー協会関係者が「あの優秀な審判が信じられない」と言う。ハンドかハンドじゃないとかいう、反則の見落としや微妙な判定ではなく、ルール適用を間違えている点に驚いていた。
ミスを犯した審判は反省しているだろう。今後へ向け当事者が細心の注意を払い、ほかの審判員も再発防止を心掛けるのは当然。だが、それだけでは根本的な解決にはならないと思う。
Jリーグを現場で取材していて、試合中の光景に「違和感」を覚えることがしばしばある。自分のチームに不利な判定が出ると、すぐに審判へ文句をつけ、詰め寄るシーンをよく目にする。プロだし、生活がかかっている。「しっかり見てほしい」という選手たちの気持ちは理解できる。しかし、審判へ敵対心をムキ出しにし、どう喝まがいの行為で精神的に追い詰めるシーンは、サッカーとはいえない。
Jリーグで笛を吹くある主審に話を聞く機会があった。実態もかなりひどい。「○○君、見てたよ。やめようね」などと危険なプレーに反則を取り注意すると「うるせー、この××」などと、汚い言葉を発する選手も少なくないという。「選手、そしてチームとの信頼関係を築いていかなきゃいけないけど、現状では信頼を得られていない」。結果を出さなきゃ行けない選手もそうだが、審判のプレッシャー、ストレスは想像をはるかに超えていた。
もちろん、審判にも問題はある。位置取りの悪さで正確な判定ができないなど、さらなる技術向上は不可欠。また、ストレスに負けないタフさ、常に冷静さを失わない精神的な強さも必要だ。一方で、選手をはじめチーム関係者も「ときにはミスもある」ことを理解した上で、審判の判定を受け止めなければならない。異議を唱えた選手が試合中に得することはない。異議があるなら、それをチームがとりまとめてJリーグへ提出すればいいし、Jリーグにはそれに対応するセクションもある。限度を超える異議申し立ては見苦しい上に、現状では審判のミスを誘発する要因になりかねない。
審判がレベルアップすれば、選手もプレーに集中でき、好プレーがさらに出てくる。また、試合中、選手が判定に異議を唱える場面が減れば、審判がスムーズに試合を運ぶケースが増え試合は面白くなる。もちろん、サポーターもプレーを妨げるような選手の異議申し立てには、応援するチームでもブーイングする必要がある。審判、選手+チーム、さらにサポーターが互いを尊重し合いながらゲームをつくっていく。最初は痛みも伴うかもしれないが、いまトライしなければ今回のようなミスは減らないと思う。ひいては、日本サッカーのレベルアップの妨げにもなるだろう。
September 11, 2005 11:46 AM
2005年09月10日
情報集め自分で判断:高木一成
衆院選挙の日が近づいてきた。連日メディアでは、ああだ、こうだと情報が流れている。何となくだけど、これまでの選挙以上に興味を持たされてはいる。ただ、ここまで間近に迫っても、自分自身の考えがまとまらない。1番話題になっている郵政民営化にしても、実現したらどうなるってことがいまだにピンとこない。
選挙と比べたら怒られるかもしれないが、同じ投票活動なら競馬の方が客観的に勉強している。出走メンバー(自分の地区の小選挙区の立候補者)コース・距離実績(教育、年金問題など、どの分野に強いか)、前走時のコメント(前回の選挙で話していたこと)、調教内容(中間の活動内容)の分析などなど。予想は仕事でもあるし、毎週毎週これらの資料をチェックし、関係者を取材することで自分がどの馬に◎をつけるか=投票するかを決めている。当然予想は外れることも少なからずあるわけだけど、自分としてはこれは正しいと思えた上で結論を出している。
だが、選挙の場合はどうだろう。先ほどの段落のカッコの中は、馬の予想の要素を選挙に当てはめたらこんな感じかなって項目だけど、実はそんなに真剣に調べていない。恥ずかしながらマニフェストもちゃんと隅々まで読んだわけではないし。どちらかというと、それをしっかり読んだ人がコメントした記事や番組から知識を得ているというのが本当のところだ。つまり、自分で評価しているのではなく、有識者、もしくはちょっと詳しいタレントが評価したことをうのみにしちゃっているということ。
自分で判断の核になる情報がしっかり得ていないから、どんな風にアピールされていたかで、ころころ考えが変わってしまう。「自民党は郵政民営化のことばかり言っていて、民主党など他の政党とは争点がまったくかみ合わないので比較しづらい」「有権者に判断材料が少ない」とかの批判はよく目にするし、自分でそう思ったこともある。でも本当は前者は討論番組しか見ないからで、後者はメディアが大きく扱うものしか判断材料にしていないからではないだろうか。
中学生の頃ぐらいからだったか。新しいRPGゲーム(主人公をレベルアップさせて、謎を解いて進んでいくやつ)が出ると、だいたいそのゲームの攻略本も同じくらい売れていた。個人的には、自分で迷いながら解いて進んでいくのが好きだったけど、初めから「解説」というか「答え」がそばにあることに慣れている人って、僕らの世代には多い気がする。自分もそっちの感覚に近くなったかなと思うとちょっと怖い。
「家族の会話が増えた」とか「職場の話題が変わった」とか、確かに今回の選挙は、世間的にもいつも以上に興味を集めている。そんなときだからこそ、自分で客観的な情報を調べて、考えるってことをもっと大事にしていきたい。雰囲気に乗って参加したはいいけど、何にも判断していなかったってことにならないか。今の自分の状況に、そんな危機感を感じた。時効だと思うが、学生の時も夏休みの宿題は9月になってからだった。今からでもちゃんと勉強しないとな。
September 10, 2005 12:55 PM
2005年09月09日
男性もしたい子育て:千葉修宏
先日、妻、2歳の息子と3人で、山梨県にある富士急ハイランドに行ってきました。同遊園地内には「トーマスランド」という、日本でも人気の高いテレビ番組「機関車トーマス」にちなんだテーマパークがあります。乗り物好きの息子は、園内を走るトーマスをはじめ、番組に登場するキャラクターたちに実際に乗り、大はしゃぎでした。
こういった、家族連れが多く集まる場所では「やはり男子用トイレにも子供のおむつ換え台(その上に子供を寝かせて、清潔におむつを換えるための台)があって助かるね!」とよく思います。わが家では、これまでも息子のおむつを換えるのは夫婦2人の仕事でした。したがって女子用トイレにしか台がないと、それだけでも妻に負担を掛けてしまっているような気がするのです。
普段の生活の中で、男子用トイレのおむつ換え台に出会う頻度は、まだまだ低いと言わざるを得ません。しかしおむつ台の話は、子育てにおいて女性により多くの負担を掛けてしまっていることの、ほんの一例に過ぎないと思います。
例えば日本では育児休暇を取る女性はいますが、育休を取る男性の話はほとんど聞きません。また元新聞記者で、現在はフリーで文筆業を行っている僕の妻は「息子を保育園に入れていても、あなたが会社に行ってるし、やっぱり送り迎えはしなくてはいけない。時間的にも自分の思うような仕事をするのは難しい」と、出産後の仕事復帰の困難さについて話しています。
このようなこと1つ1つ考えるにつけ「今でも日本では、子育ては女性だけの仕事として認知されてしまっているんだな」という暗ーい気持ちになってきます。「男子用トイレのおむつ換え台を増やす」というささいなことから、出産後の仕事のことなど、女性が男性と同等に生活できるシステムを構築しない限り、女性だって気軽に出産に踏み切れないし、高齢化も少子化も改善されないのではないでしょうか。
よくテレビ、雑誌等で女性著名人がフェミニズム(男女同権を実現し、性差別のない社会をめざして、女性の社会的・政治的・経済的地位の向上と性差別の払しょくを主張する論)について話をしている姿を見かけます。ただ女性の権利を主張することに加え、それを男性がアシストできるような社会づくりにまで言及すれば、もっと男女関係なく、すべての人たちの共感を得られるのでは? と思います。
妻と一緒に積極的に子育てをやっていきたいという若い父親は、僕のまわりでも最近、増えています。ただ会社内で男性が育休を取りにくい雰囲気だったり(そもそも男性が育休を取るという概念が、日本にはないように感じる)社会にそのような仕組みができていないのがネックとなっています。選挙が近づいていますが、女性の権利を訴える候補者たちには「女性と一緒に何事も行っていける男性の権利」も主張して欲しいです。
September 9, 2005 10:56 AM
2005年09月08日
審判問題は世界共通:荻島弘一
ついにと言うか、やはりと言うか、W杯予選で「大事件」が起きた。主審のミスによる再試合。3日に行われたアジア5位決定戦ウズベキスタン-バーレーンで、主審がルールの運用を間違い、本来ならば蹴り直しとなるウズベキスタンのPKを取り消し、守備側のバーレーンにFKを与えてしまった。抗議を受けたFIFAが再試合を決定。主審を代えて、10月8日に行われることになった。
主審は日本人の吉田寿光主審だった。昨年Jリーグ優秀主審に輝いた同氏は、01年から国際主審として活躍する日本を代表する審判員だ。今回も、アジアの5位を決定するという重要な一戦を任された。そこで、重大なミスを犯した。判定ミスではない、ルールの適用を誤ったのだ。01年から国際主審を務めている審判が間違えるとは思えない、ごく基本的なルールだ。
最近、審判問題が取りざたされることが多い。Jリーグを見ていても、首をかしげたくなるような判定が多いのも事実だ。さらに、警告を2度受けた選手が退場にならずにプレーを続けるような間違いもあった。判定ミスは仕方がない部分もある。まあ、ゴール前の決定機を外すFWのようなものか。しかし、ルールを間違えるのは言い訳ができない。決定機に、手を使うFWのようなものだ。
審判に「しっかりしてほしい」と思う気持ちは強いが、果たして審判だけの問題だろうか。最近ミスが目立つのは、訳の分からないルールの変更なども影響しているはずだ。オフサイドの取り方など、重大な部分が変わっている。それも、とても分かりにくく。選手でも理解していない者は多いし、自戒を込めてメディアも怪しい。しかし、審判は正確に把握し、運用しなければならない。それが、どれほど難しいことか。
もちろん、ルールが変わったら、それに適応するのが審判だ。それで判定にミスが出るのは許されることではない。ただし、ドイツ協会が「試合が混乱する」として採用を見送ったようなルールだ。それも、シーズン中に解釈が変わるという異常な状況。FIFAは「審判技術の向上」をうたっているが、ならば「分かりにくく、意味もなく、混乱を招くルール」を採用することもないと思うが。
「Jリーグの審判を何とかしろ」という言葉もよく聞く。しかし、日本人審判は決して能力が低いわけではない。逆に、世界、特にアジアの中では「レベルが高い」と言われている。代表チームは過去2度しかW杯に出ていないが、審判は70年大会で初参加し、02年大会まで4人が5大会に参加した。もちろん、アジアではトップレベルだ。
審判問題は日本だけではなく、世界共通の問題だ。欧州各国のリーグでも、判定ミスは日常茶飯事。ビデオなどの技術発展で「ヒューマン・エラー(人的なミス)」が許されない時代に来ている。繰り返すが、審判の技術力アップは重要。ただし、審判問題はサッカー界全体で考えなければならない問題でもある。「審判が悪い」だけでは、また問題は起きるだろう。
September 8, 2005 10:58 AM
2005年09月07日
平和への険しい道筋:桐越聡
世界を震撼(しんかん)させた「米中枢同時テロ」から、間もなく4年になる。東京都品川区の白鳥晴弘さん(65)は6日、追悼式典に参加するため、米ニューヨークに向けて出発した。
「今、やっていることを息子に報告してきたい。『アフガニスタンを助けたいんだ』と言ったら、息子は『どうして?』と反論するかもしれないけど、敵を救うことも平和の前進につながる。分かってくれると思います」。
01年9月11日、為替トレーダーだった白鳥さんの1人息子、敦さん(当時36)は世界貿易センタービル北棟105階のオフィスでテロの犠牲になった。頭蓋(ずがい)骨、肩と太腿(だいたい)部の骨の一部が発見されたという。
自慢の息子だった。高校時代は“グレた”時期もあったが、白鳥さんは「息子を信じていた」という。敦さんは高校卒業と同時に「必ず成功してみせる」と単身渡米した。大学を卒業し、複数の会社を渡り歩くと、米国債の取扱高トップの会社に引き抜かれ、役員になった。
「36歳ぐらいで引退して、バハマで暮らしたい」。そんな夢を描いていた息子の命は突然奪われた。卑劣なテロは決して許せない。だが、憎悪を募らせるだけでいいのか。「テロをなくしたい」「テロの根源は」「アフガニスタンの現状を見たい」。白鳥さんの感情は次第に変わっていったという。
03年3月、アフガニスタンへ足を踏み入れた。米軍の攻撃によって負傷した少年が「大きくなったら米国に復讐(ふくしゅう)するんだ」と目をむいていた。米軍の誤爆によって夫と子供7人を亡くした女性は泣き続けていた。宿泊したホテルのごみ捨て場には食料を求める子供が群がっていた…。
戦禍と貧困。現実を目の当たりにした白鳥さんは、敦さんの遺産と米政府の補償金を使って「アフガニスタンの子供たちを助ける」と決意した。
「未来の地球をつくる子供たちに夢を持ってもらいたい」。子供たちが集まり、海外のボランティア団体が活動の拠点として使えるような施設「アツシ・メモリアルホール」の建設に向けて動き始めた。賛同を得た政府から首都カブールにある約3万平方メートルの土地を提供された。地鎮祭を10月に予定している。
「米中枢同時テロ」以降、テロは世界各地で頻発している。ブッシュ大統領らは「テロには屈しない」と声高に叫び、軍事力によって制圧しようとしている。しかし、憎悪の連鎖は広がっている。テロを生まないような土壌づくりを進めるべきだが、根本的な解決からはほど遠くなっている。
「小さな取り組みですが、子供たちが何らかの活力を得て、報復ではなく、夢に向かって生きてくれたらなと思います。自分たちの正義が、相手にとっても正義なのか。対話の中から、平和な社会ができたらいいなと思います」。
敦さんを失いながら、テロと報復の連鎖を断ち切りたいと立ち上がった白鳥さんの言葉が、胸にズシリと響いてきた。
September 7, 2005 11:57 AM
2005年09月06日
ボルトンが変わった:横田和幸
サッカー日本代表のMF中田英寿(28)が今夏、イングランド・プレミアリーグに移籍した。その移籍先がまさか、まさかのボルトンだった。あのクラブとは2度と接点はないと思っていたのに。
4年前の01年夏、C大阪からボルトンに期限付き移籍したFW西沢明訓(29)を取材するために、現地を訪れた。北部の大都市マンチェスターから車で30分走ると、お目当ての街にたどり着く。当時の西沢は、G大阪からアーセナルに移籍した稲本と2人で、日本人初のプレミアリーガーとして注目された。記者としても未知の世界に心は騒いだ。
ところが、期待の反動は大きかった。本拠リーボック・スタジアムこそ近代的な建物で、立派なホテルまで隣接され、よそ者が観戦で訪れるには何1つ不自由はなかった。だが、ボルトンの日本プレスに対する扱いは理解に苦しむものだった。
欧州各国の試合を取材するには、事前に申請書を主催クラブに送る。稲本がいたアーセナルの場合、申請者が殺到して抽選になることはあったが、セリエAや他のプレミアクラブも総じて取材許可が下りた。
なのに田舎街のボルトンは、日本プレスを門前払いにした。理由を尋ねても広報担当から答えはない。一般入場券を購入、客席から試合を見守ったものだ。記者席に入れたのは滞在期間中、数回だった。
理由は想像するしかないが、当時の日本は彼らにとってサッカー後進国でしかなかったはず。過去に取材申請をしなかった日本プレスを、簡単に自分たちの庭に招き入れることは、サッカーの母国の誇りが許さなかったのではないか。ただ1つ好感を持てたのは、当時から指揮をとっていたアラダイス監督が、質問に気さくに応じてくれたことだった。
今回のコラムは何が言いたかったのだろうか? そう、時間がたてば、ボルトンの日本に対するスタンスも変わったということ。
日本軽視とも思われたクラブが今夏、日本に親善試合のために来日した。アラダイス監督が直接ヒデを口説いて獲得したこともサプライズだった。02年W杯で日本がベスト16に入ったことも大きい。西沢の在籍を皮切りに、ヒデの加入で、より日本を理解してくれたのだろう。現在、現地で取材する春日通信員は「今は取材申請は全部許可してもらっています」と国際電話で笑っていた。
ちなみに、西沢とヒデは同学年で大親友。今夏に大阪で再会した際には、西沢は「ボルトン移籍? やめておいた方がいい」と助言したそうだ。
英国北部特有の曇天続きで気分はめいるし、独身には刺激のない田舎街。サッカー以外に楽しみを見つけるのは難しいが、ヒデは移籍を決断し、おかげでボルトンの試合を、日本国内でも目にすることが多くなった。これも何かの縁。距離があった日本とボルトンの関係良化を祝いながら、新シーズンのワンダラーズの躍進を期待しておこう。
September 6, 2005 11:46 AM
2005年09月05日
いつか実る時が来る:上野耕太郎
時間を超えて結実する仕事-。スペインの建築家、アントニオ・ガウディが設計したサグラダファミリア教会が有名だ。バルセロナでは1880年代から今も建設が続いている。
私が住む札幌にもそんな「仕事」がこの夏に完結した。米ロサンゼルス生まれの彫刻家であり建築家のイサム・ノグチが死の1カ月前の1988年11月に設計した「モエレ沼公園」だ。札幌の市街地を公園や緑地の帯で包み込むという「環状グリーンベルト構想」から生まれたもの。札幌市の北側に面し、水を所々に使った公園はすぐに人気スポットとなった。時計台やクラーク像といった観光名所に加わることだろう。
鬼籍に入ってしまった今、喜ぶ人たちの顔を直接見ることはできない。ただ、そういった「遺産」と言うべき仕事が生き続けている。正直、うらやましい。
ちょっと思い出した偉人もいる。生涯学習の祖とも言われる伊能忠敬だ。江戸時代に初めて実測で日本地図を作製した人物として知られる。千葉の漁村出身、伊能家に17歳で婿養子に入り新田開発などを行った。49歳で隠居して好きだった天文学を勉強するため江戸に向かう。55歳で蝦夷地(私が住んでいるとこ)に入り測量をスタートさせ、73歳で死去。その志を引き継いだ人たちが3年後に地図を完成させた。その40年後には英国艦隊が来日、伊能がつくった地図の正確さに舌を巻いたという。
偉人たちの話だが、すごいなって思う。伊能忠敬なんて第2の人生ですもんね。まあ、そういう人だから代々、伝記として受け継がれていくのだろう。今、プロ野球の担当をしているが、これも「記憶」や「記録」に残る仕事だ。感動や大記録は刻み込まれる。モエレ沼公園ではないが、人々に喜びを与えている。
そんな話を思い浮かべながら「仕事」って何だろうと思うときがある。自分だけではなく人それぞれ「食べていくため」「家族を守るため」「お金のため」「偉くなるため」などといった動機はあるだろう。確かにお金を稼がずに生活していくのはつらい。
ただし、単純に睡眠欲とか食欲とか同じように「労働欲」のようなものもある気がする。「1年、働かなくてもいいよ」と言われると自分は体がムズムズしてしまいそうだ。もし、遊んで暮らせるだけのお金があったとしても、働かないかなぁ。それでも仕事をしている気がする。
そう考えると、働くということは生活を維持するだけのものではないようだ。成功したり、失敗したり、没頭してみたり…。人生の糧のようなものなのかもしれない。時間を超越した仕事とは言えないが、自分にも充実感を感じるときがある。失敗して悔しいときの方が多いけど…。
義父は十数年に渡り青函トンネル工事を続けた。途中で事故もあった。工事の騒音で耳も悪くした。子供にも会えず、寡黙な父は終わったあとの一杯だけが楽しみだった。それだけに開通したときの喜びは計り知れなかったという。前述したが死後に結実する仕事もある。ただ、結実するその一瞬の喜びのために働き続けるのかもしれない。
September 5, 2005 11:53 AM
2005年09月04日
J審判問題は根深い:永井孝昌
どうしてそこで止めるのか。
どうしてそれが反則なのか。
J1は8月20日から後半戦に突入した。現場で3試合を取材したが、気になるのが審判の笛。正直に言ってしまえば、気になるどころではない。ひどい。
リーグ再開からJ1は3節、27試合を消化して、クラブ側からJリーグに提出された意見書、要望書はすでに4件。1節あたり1・3件強もの「誤審」の訴えがあるのは、プロスポーツとしては異常な事態といえる。こんな状態が続けば、今季のリーグ優勝の価値にまで傷がつきかねない。
何が問題なのか。
審判問題の根は深い。プロリーグ発足からわずか13年目の日本では、過渡期ゆえの問題にも直面している。例えば審判の高齢化。今年1月発表の今季J1の主審19人の平均年齢は40・8歳と、定年制の導入を本気で検討すべき時期を迎えている。野球文化の根強い日本では、選手としてのサッカー経験を持たない審判が多いのも事実。審判間の経験差、レベル差も大きく、プロの審判がまだ6人しかいない環境は、待遇を含めた整備が急務といえる。
技術不足を補おうとするあまり、無駄な笛を乱発し、高圧的に選手を“支配下”に置こうとする審判も目につく。つまらない試合を繰り返して観客が減るのはチーム側の自業自得。だが不快なレフェリングを理由にファンの足がスタジアムから遠のいたら、チームはどうすることもできない。
だからこそサポーターは、利害を抜きにした不可解な判定にはこれまで通り、大いにブーイングをとばすべき。だが同時に、審判の好判断には、拍手を送ることでも「オレたちは見ているぞ」という意思表示は十分できる、ということも考えてほしい。選手も、審判の技術不足を嘆く気持ちは理解できるが、ならば明らかなシミュレーション行為はまさに欺まん、と認識すべきだろう。
審判部は各試合をビデオで検証し、ミスが認められた場合には処分を科している。その処分内容が非公開なために過保護、とする意見もあるが、サッカー文化の成熟を待たずに処分内容を公開すれば、招くのはその審判への偏見と不要な混乱だけ。審判部も積極的に研修制度の充実などで一層の技術向上を目指すべきだが、周囲も、過保護だ技術不足だと批判するだけでは問題の解決にはならない。
最後に、Jリーグ藤口技術委員長の話も紹介しておきたい。「レフェリーはレフェリーであって、アンパイアではない。審判ではなく、レフェリーと呼称を統一してはどうか」。アンパイアとは、試合を裁く存在。レフェリーとは、試合を成立させる存在であってジャッジではない。すでに線審=ラインズマンという呼称もアシスタントレフェリーにあらためられている。呼称を統一することでその立ち位置が明確になるのなら、一考する価値は大いにある。
レフェリーへの不信感は今、ビデオ判定、ICチップ内蔵ボールという技術導入の動きにつながりつつある。テクノロジーは判定への不満、疑惑をなくし、きっと「あいまいさゆえの魅力」もなくしていく。短絡的なレフェリー批判のツケを払う時は、すぐそこまで迫っている。
September 4, 2005 12:47 PM
2005年09月03日
絵になる男ジョニー:栗原弘明
やっぱり、ジョニーは絵になる男だ。ロッテ黒木知宏投手(31)が8月28日のオリックス戦で、本拠地千葉マリンでは1545日ぶりとなる白星を飾った。詰め掛けた観客は満員の2万8918人。新球団楽天を迎えての3月26日開幕戦の2万8353人、ゴールデンウイークの5月4日楽天戦の2万8874人を超える今季最多となった。夏休み最後の日曜日と重なったこともあるが、黒木の「54」のレプリカユニホームを着たファンの行列を目の当たりにして、あらためてジョニー人気のすさまじさを感じた。
カメラマンにとってもシャッターチャンスの多い試合だった。翌日、紙面を飾ったのは試合後、マウンドから降りて、2階席までビッシリ埋まったスタンドをバックに、両手を突き上げて天を仰ぐ姿だった。印象的なシーンだった。通常は右翼から中堅までのロッテ外野応援団が、その日は左中間までのびていた。黒木はヒーローインタビューを終え、まず右翼スタンドへあいさつに走った。そのまま左翼へ走り、それからマウンドへ再び上がった。そしてマウンドから降りた後、天を仰いだのだ。
一瞬をとらえた越田省吾カメラマンは「目は切らさないように注意していましたが、マウンドからベンチへ戻る時に、あんなしぐさをするとは思わなかった。慌ててカメラを向けました」という。さらに「カメラマンとしても、見どころの多い試合でした。送稿する写真の数も、自然と普段よりは多い枚数になってしまった」と語った。
この試合で記憶に残った場面を挙げてみる。
◆登板直前、ベンチからマウンドへ向かうと、本塁から一塁へのライン真ん中の手前で立ち止まった。帽子を取って深々と頭を下げ、しばらくたってからラインをまたいだ。
◆マウンドに上がってからは、うつむいたり、ボールを見つめて集中力をひたすら高めた。
◆7回2死で一塁側ベンチへ降板、スタンドからの「ジョニー」コールに応えて、ベンチから出て帽子をとってグラウンドへ深々と頭を下げた。
◆ヒーローインタビューで小宮山から「本日の主役」のタスキをかけられ、こぼれる笑み。
◆試合後、復帰を祝って打ち上げられた54発の花火を照れくさそうに眺めた。
飾らない、野球に対する真摯(しんし)な姿勢がファンの共感を呼び、根強い人気につながっていると思う。黒木は今春のキャンプで「喜怒哀楽を出して真剣にやることが感動を呼ぶと思うし、そういうことをできる選手は少ないと思う。少なからずそこに入れてもらえているとすれば、それを全うしなくちゃいけないと思う」と漏らしていた。
歴史的な快進撃を続けるチームの中で、黒木が投げるということは、その陰で1人の選手が2軍に落ちるということだ。豊富な投手陣を誇るチームとしても、特別扱いはできないだろう。だが、個性的な選手が少なくなってきていると感じる日本プロ野球の中でも、「絵になる男」の存在は貴重だ。
September 3, 2005 12:42 PM
2005年09月02日
半径3メートルからの選択:小林千穂
故郷の岐阜が、選挙で思いがけず注目されている。全国見渡しても、3人も刺客が送り込まれた都道府県は岐阜だけだ。いいんじゃない、めったに注目されない県だから、きっと全国の岐阜県人は舞い上がっている(はず)。とはいえ、注目は女性対決の1区に集中している。私が生まれた5区は…、微妙な感じだ、残念ながら。
世間の注目は低くても、地元では熱くなっているに違いない。そう思って実家に電話してみた。「選挙どんな感じ? 熱くなってる?」(正確には「選挙どんなん? 熱くなっとる?」ですが)。母が「難しくてよう分からんわ。それより、11日は稲刈りやから。あと、アンタ、ヨン様取材したの?」。「う、うん…。何にも手伝えんくってごめん。ヨン様? え、あ、まあ…」。兼業農家で、しかも大人ばっかりしかいない実家では、選挙より稲刈り、郵政より年金、小泉「ジュン様」首相より、ヨン様な感じ。確かに分かりやすいもんね。
小さいころ、両親と祖母が投票に行く車に乗って、投票所までついて行った。選挙の仕組みはまったく分かっていなかったが、それでもちょっとした「イベント」であることは感じていた。帰りの車の中で「だれに入れたの?」と聞くと、母が「そういうことは言わないもんなの」と一言。お互い何となくは分かっていたんだろうが、両親も祖母も、お互いがだれに入れたかは話さなかったし、知ろうとはしなかった気がする。「そこまで聞いちゃ野暮でしょ」ってな感じだった。
その祖母は80歳を過ぎた今でも、2キロ離れた郵便局に2週間に2度ほど、バスに乗って行く。昔は2時間に1本だったバスも、今では1日で5本に減った。行きか帰りのどちらかは、歩いている。トコトコ、テクテク…。見るたびに小さくなっていく体で、トコトコ、テクテク…。そして、私にハガキを送ってくる。内容はいつも同じだ。家族はみんな元気です、体に気を付けなさい、また帰ってきていろいろ話しましょう-。
今回の選挙、母が「難しくてよう分からんわ」と言う気持ちが分かる。何が正しくて、だれの筋が通っているのかが分からない。「正しそう」で「筋の通っていそう」な選択をすればいいんだろうけど。正直言って、郵政民営化したらどうなるかとか、あまり興味がない。田舎の両親と祖母が気持ちよく、元気で暮らしていてくれればそれでいい。そんなもんだ。せいぜい気持ちが動くのは半径3メートルくらいの人々に対してだ。ただ、半径3メートルの輪がつながって、広がって、社会になっているんだろうから、その辺から考えてみればいいんだろうと思う。もしかしたら、何かが見えてくるかもしれない。
夏も終わった。選挙のことを考えていたら、ちょっとセンチメンタル(死語?)な気分になった。
September 2, 2005 10:05 AM
2005年09月01日
サッカーで教育改革:岡本学
日本サッカー協会が将来のサッカー日本代表選手を育てることを主目的に、新しく中高一貫教育のエリートプログラムをスタートさせるのをご存じだろうか。初めてこのプロジェクトを聞いたとき、朝から晩まで練習また練習、6年間「サッカー漬け」の毎日を送らせるのだろうと想像していた。だが、実際は想像のような陳腐なものとはまったく異なるプログラムが用意されている。
同協会川淵三郎キャプテンは「日本の教育を変えるプロジェクト。立派な社会人を育てたい」という。プロジェクトの責任者、同協会田嶋幸三技術委員長は「日本の教育界に一石を投じるプロジェクト。自分自身、命懸けでやっています」と使命感を口にした。代表選手を育てるだけでなく、どの世界へ出ていってもリーダーになる「真の国際人」を育成することが目的でもある。学力低下、不登校、いじめ、校内暴力など日本の教育界に明るい話題は多くないように思う。自分の周囲を見回してみても、小学3年にして学級崩壊という現実がある。そんな日本の教育を変えようという意気込みが、幹部2人の言葉から伝わってきた。
この「JFAアカデミー福島」は来年度から、福島県、同県楢葉、広野、富岡各町と協力し、Jヴィレッジを拠点に地元の公立中学、高校と連携してスタートする。Jヴィレッジ周辺の寮に選抜した生徒を寄宿させながら、居住区にある公立中学4校、そして県立富岡高に通学させ、中高一貫教育で将来の日本代表選手を育てる。さらに、社会をリードしていける真の世界基準の人材育成を目指しているという。
環境は抜群だ。日本協会が責任をもって一流の指導者を送り、ピッチ内での技術、戦術指導はもちろん、サッカーに必要なピッチ外の知識も教え込む。また、アンリら代表選手を輩出しているフランスナショナルフットボール学院(INF)とも提携し、英才教育を施す。さらにサッカー以外にも力を注ぐ。どんな状況でもポジティブに物事を考え、自分の意見を発信できるリーダーを育てるべく、英語はもちろん第2外国語も習得させ、ディベートなども積極的に取り入れ、さまざまな角度から人材を育成していくプランだ。
ただ、同協会が「生徒4人のうち1人がJリーガーになれば」というように全員を日本代表にという目標が現実になるほど甘くない。それでも、Jリーガーになった者も含め「世界基準」の立派な社会人に育てる、という目標は達成するつもりでいる。一番、吸収力がある世代に最高の環境を提供しながらスタートする「エリート養成プログラム」。8月20日からは来年度入学者(男子小学6年、女子同~中学3年)を対象にした1次試験が始まった。日本サッカーの将来
