2005年08月31日
馬にユメ託す高校生:高木一成
札幌競馬の開催中で、今月15日から北海道に長期出張している。先週22日に、静内農業高校を訪れる機会があった。日本で唯一サラブレッドの生産、育成を授業に取り入れている高校だ。今年2月には同校で生まれたユメロマンが、東京競馬場で新馬戦を快勝した。高校生の生産馬の勝利はJRA史上初の快挙。この記事は社会面に大きく載ったので、「ああ、あの時の学校か」と思う方もいると思う。
18日に旭川で行われたホッカイドウ競馬では、またも同校の生産馬で、ユメロマンの半弟サクラホウジュがデビュー勝ちを飾った。ちょうど開催中だった甲子園では同じく南北海道代表の駒大苫小牧が勝ち進んでいる最中で、新聞やテレビはその話題で持ちきり。ちょっと寂しくもあったが、関係者の中では、こっちもちょっとした注目を集めていた。
実習作業は畜産科(生産科学科)の生徒、馬術部のメンバー30人が中心になって行う。出産を見守り、毎日の世話を行い、セリに立ち会う。ちなみにユメロマンは250万円、サクラホウジュは400万円の値がついた。多感な時期に、生命の大事さや生き物を育てる難しさを肌で感じ、また一方で自分の努力が何百万という大金で評価される喜びを経験できるのだから、なかなかほかでは味わえないことだなと思った。
取材した時は夕方の厩舎作業中だったが、生徒たちは熱心に馬の体を洗ってあげていた。競馬の取材で見慣れているはずの光景なのだが、何となく新鮮に見えた。馬は敏感な生き物でフラッシュ撮影などは本来は厳禁なのだが、担当の先生は「慣れてるので大丈夫ですよ」とあっさりOK。今年4月に生まれ、7月のセリで300万円で落札された桜可憐(サクラカレン=幼名)の写真を撮ったが、全く動じることがなかった。馬より人が多い環境で育っていることが、物おじしない性格につながっているのかも。
生徒の生活スタイルは当然、馬に合わせたものになる。厩舎近くの寮に住み、朝起きるのは毎日4時半から5時くらい。馬の運動を行い、カイバを与えてから、自分の朝食にたどり着ける。「眠いけど、毎日の変化を見るのが楽しいですから」。苦労よりも充実感の方が上回っているのだろう。生徒の1人は「競馬に興味があったので、早くから馬を扱えるこの高校に入った。将来は中央競馬に入りたい」と夢を持っている。ほかでは扱われない分野だけに、北海道外からの入学希望者も多いと聞くと、まだまだ馬の仕事に関心がある人は多いんだな、とうれしくなった。ここ数年は未成年者の凶悪犯罪や、やりたいことがなく無気力な若者のニュースも多いが、目標に向かって一生懸命頑張る高校生の姿は、馬の育成であれ甲子園であれ、やっぱりすがすがしい。
ユメロマンたちの母で、学校で唯一の繁殖牝馬サクラトキメキは地元の牧場の好意で寄贈された馬。高額な種牡馬の種付け料は教育的配慮で、予算内で収めてもらっている。不景気に悩む馬産地にとっては明るい話題につながるだけに地元の応援態勢はばっちり。同校生産馬の活躍はもちろん、同校出身者が将来競馬サークルで活躍してくれることを期待したい。
August 31, 2005 11:39 AM
