2005年08月29日
座り込み抗議の無駄:荻島弘一
J2仙台の選手バスを取り囲んだ100人ほどのサポーター。「いったい何をやってんだ!」「都並監督と話をさせろ!」。容赦のない罵声(ばせい)が飛び交った。いつまでもサポーターは、その場を離れようとしない。バスの前に座り込む人までいた。
20日の仙台対横浜FCのJ2リーグ戦は、0-0の引き分け。J1昇格争いをしている仙台にとって、2位福岡との勝ち点差が11と開く、ホームで痛い試合だった。カズと城の元日本代表コンビは抑えたが、決定機にゴールが奪えず。サポーターもフラストレーションがたまったのだろう。
バスの前の一団の中には、何と子供までいた。仙台というチームが好きで好きで仕方がないのだろうが、あくびをし、目をこすりながら座り込む姿は痛々しかった。夜の11時。驚くとともに、ショックだった。
クラブがサポーターとの話し合いの場を持つことを約束して事態は収束した。結局、2時間近くたってからバスは出発した。猛暑の試合、疲れた選手は早く帰りたかったに違いない。中には、クラブハウスに戻って、ケガの治療をする予定の選手もいたという。
何よりも驚いたのが、これが珍しくない光景だということ。「いつものことですから」とクラブ関係者はあきれ、記者たちも「またか」という顔で取材をしている。最近は、他のクラブでも負け試合の後などで目にすることがある。選手バスを囲むのは、サポーターの流行なのだろうか。
「直接抗議をするため」とサポーターは言うが、チームのためになるとは思えない。チームに対する抗議は悪いことではない。しかし、ほかにも方法はあるだろうに。「あれじゃあ、居酒屋トークだよ」と話していた記者がいたが、その通りだ。だいたい「いつものこと」では、チームに危機感が生まれるはずもない。
クラブ側の対応もお粗末だった。優先すべきは、バスを出すことのはず。何よりも、閉じこめられた選手たちがかわいそうだ。バスを取り囲むような行為を許さないこと。サポーターを大切にするのはいいが、バスを囲むことを許すのとは訳が違う。「もう応援しないぞ」の言葉に「来ていただかないと困ります」と困惑していたが、時には毅然(きぜん)とした態度も必要だろう。
仙台スタジアムの雰囲気は、驚くほど素晴らしかった。サッカー専用競技場がチームカラーの黄色に染まり、大声援が屋根に響き渡った。2万人程度の収容人員のスタンドがいっぱいになると壮観。Jリーグが本当に地域に根ざしたのだと実感した。ここでプレーできる選手は幸せだとも思った。それだけに、バスを取り囲むことがスタジアムでよくある風景だと知った時は、ショックだった。
Jリーグは発足前にファンを対象にアンケートをした。「応援で最もふさわしいのは」の設問に、最も多かったのは「チアリーダー」だった。今では、欧州や南米などサッカー「先進国」のスタジアムの雰囲気が、日本でも見られるようになった。しかし、同時に不要なものまでまねているようにも思う。試合後にバスを取り囲む「無駄な」行為。こんなことにサポーターも、クラブも、慣れて欲しくはない。
August 29, 2005 11:02 AM
