2005年08月26日
駒苫…悲しいの一言:上野耕太郎
正直に言えば、今回のコラムは甲子園での駒大苫小牧の57年ぶりとなる連覇をテーマに書き終えていた。北海道に住む私としては単純にその快挙をかみしめていた。そして、優勝後の22日、野球部長の体罰問題が発覚した。日本高野連では優勝の取り扱いについて審議委員会を招集するという。
このコラムはその名の通り「見た聞いた思った」だ。私はその「思った」の部分をいまだ、まとめきれないでいる。
いろいろな意見があると思う。「甲子園は教育の場とするならばいかがなものか」「報告義務があるはずであり、注目度や影響も学校関係者は考えるべきであった」という意見の一方で「では、他の高校で体罰は本当にないのか」「一生懸命にやってきた選手はいったいどうなるのか」といった考え方を聞いた。
単純と思われても仕方がないが、今回の件で私が思ったのは「悲しい」という一言に尽きる。
選手たちもあの暑い甲子園で偉業を成し遂げた。その喜びは選手たちだけではなく、道民である私にも分け与えてもらった。私が記者として取材をする数年前まで、北海道の高校野球の地区予選では「人間フェンス」が登場したという。球場がなく、大きなグラウンドに野球部員が立ち、外野フェンス代わりになっていた。雪があり、インフラは整っていなかった。甲子園でも思うような成績を残すことは少なかった。
その十数年後、57年ぶりという連覇という「事件」が起こった。本州へのコンプレックスというわけではないが、胸のすく思いがした。当然のことながら北海道は熱狂した。視聴率も50%を超えた。町の中に設置されたテレビには人だかりができていた。大きな輪をつくり、夢中で応援する。こういうたとえは適当なのか分からないが、プロレスの力道山が外国人を空手チョップで倒していくような場面を思い浮かべた。堂々と戦い抜いていく球児たちを誇りに思った。
駒大苫小牧が劇的に強くなるその過程で多少の無理があったのかもしれない。昨年の優勝で道内では一気に注目度を増した。北海道拓殖銀行が破たんしてからは活気を失い、悪いニュースが続いていた。昨年は日本ハムが移転し、甲子園では優勝と久しぶりに素直に喜べる出来事だった。異様な熱狂とともにチームはオラが町のヒーローになった。それがかえって重圧にもなったのかもしれない。
今後、どういった処分が学校側に下されるか現時点では分からない。その判断については、いろいろな意見が出るだろう。優勝から不祥事発覚へと、ここ数日の目まぐるしい状況。選手たちにとって現状をどう受け止めてよいのか分からないだろう。出張中のため肌で感じることができないが、北海道でもその熱気が急速に冷めていっているかもしれない。個人の意見だが、選手たちは目標に向かい力の限りを尽くした。その戦いを私は決して忘れないでいようと思う。
August 26, 2005 10:30 AM
