記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年08月23日

意志の見える言葉を:小林千穂

 映画やドラマの出演者の会見で気になる言葉遣いがある。

 「~させていただきました」。

 ほとんどの俳優が「○○役をさせていただきました、××△△です」と、判で押したようなあいさつをする。シンプルに「○○役をやりました」とか「○○役の××△△です」でもいいんじゃないだろうか。大勢の出演者全員がこれをやりはじめると、もう気になって、気になってしょうがない。もどかしい。みんなが同じ言い回しなので、かえって印象に残らず、ペンも止まる。言いにくそうなのも気になってしまう。新人俳優、俳優初挑戦のお笑い芸人など、ただでさえ慣れない場面なのに、こんな言葉を言うもんだから「させて…いただきました」なんてカミカミになったりして。

 「させていただきました」で、謙虚な気持ちを表せるのかもしれない。「私がこんな役をできるのも、ひとえに、プロデューサー、監督のおかげです…」的な? でも「させていただきました」が「やりました」になっても、別にエラそうな感じもしないし、意気込み具合がよく伝わる気もする。謙虚な姿勢は大事なんだろうけど、もっと、生々しくて意志の見える、その人らしい言葉が聞きたい。放送作家の山田美保子さんも「メールなどのやりとりが多くなると、生の言葉で話そうとしても、会話力が退化している。とりあえず『させていただきました』と言っておけば、敬語として大丈夫だと思っているところがあるんじゃないでしょうか」と分析する。

 だれもかれも「させていただきました」症候群だな、と思っていたら、出ました、ホリエモンことライブドア堀江貴文社長。衆院選への出馬表明会見。「決意表明させていただくことになりました」。無所属で出馬する理由を問われると「自分の意志で選ばせていただいて、自由にやらせていただきたい」。こんな場合こそ「決意表明します」と、スッキリ言えないものだろうか。党からの公認をもらったわけでもなく、無所属で出るのだから、別に「させていただいた」わけでもないだろう。

 揚げ足取りなのかもしれないが「させていただきまして」を連発しているホリエモンを見ると、自由にやりますという雰囲気はまったく伝わってこない。「させていただいた」向こうに、当選後の追加公認とやらがスケスケに見えそうだ。

 そういえば、政治の場面で「させていただく」の正しい? 使用法を見たことがある。今となっては、あの人は今の、学歴詐称問題で辞職した古賀潤一郎元衆院議員。

 涙で訴えた「議員を続けさせていただき、渡米させていただき、残った単位を1つでも多く取らせていただき…」。選んでくれた国民に審判を委ねる姿勢を、過剰なまでの敬語と絶叫で表現していた。使用法が正しくても、さすがにこれは「いただけ」なかった。

August 23, 2005 11:36 AM