記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年08月16日

「無駄」から「有効」へ:上野耕太郎

 いやぁー、暑いですね。道産子の私としては、この時期の本州への出張はつらい。先日も日本ハムとともに千葉へ行ったのですがもう、暑いこと暑いこと。

 そこで稲川淳二師匠のように怪談ができるほど筆力はありませんが、涼しくなる話を1つ。今、北海道では「雪冷房」というシステムを研究しています。簡単に言えば、冬に積もった雪を夏まで保管し、それを冷房代わりに使うという発想です。雪の利用法を探ろうと97年ごろから研究が始まり、最近では地元不動産会社が100トンを貯蔵できる貯雪庫付きの6階建てのマンションを建設。この冷房システムで二酸化炭素の排出量が減ったのはもちろん、経費が電気冷房より約3割安くすんだという。

 すごいでしょ。冬ならば「もう勘弁して」と思うくらい、大量に降り積もる雪を有効利用してしまう。早く解かしてしまいたい雪を長く保存する技術を発達させる。研究者によれば札幌の「雪まつり」でつくった雪像を夏まで延命させることが可能だという。北海道まで物資を運んだ貨物船に雪を詰めて首都圏に送れば、エネルギーとして代金に変わる世界がすぐそこに来ている。愛知万博でも「雪冷房」のパビリオンがあるそうだ。

 いやはや、無駄だと思っていたものも発想と努力があれば有効になるんですねぇ。旭川に住んでいたころ、毎日、学校へ通う途中、石狩川から湯気が出ていた。まるで温泉のように見えるが、要は気温より水温が高いからだ。ダイヤモンドダストがキラキラと輝き、大雪山が神々しくそびえる。まるで絵はがきのような光景。でも気温はマイナス20度。はなをすするとピタッとくっつき、一冬で右耳は凍傷に。おかげで右耳が巨大化し、眼鏡をかけると20度近く傾斜がつく。その後遺症から現在では眼鏡が傾いた間の抜けたおじさんになってしまった。

 そう、雪とか冬とか私たちにとっては、厄介で大変なものなんです。でもその雪が夏になると恋しくなる。みそやキャベツや米を雪の中で熟成すると甘みがでておいしくなるという。実際、「雪冷房」の発想は農作物の保管や熟成から始まっている。マイナスをプラスに転じる発想、ホントに誰がやり始めたのだろうかと感心してしまう。

 春に咲く「スノードロップ」という花がある。一輪、こぢんまりと下向きに咲く。柄にもないが、花言葉は「まさかの時の友」。ドイツの言い伝えでは、色が欲しかったが誰にも見向きもされなかった雪に、その花だけが白という色を与えた。その代わりに冬の間、雪がその花を覆い、守り続けているという。

 なんて、書きながらふと思ったりする。今の自分にとって「自分のためにならないから」と思って素通りしている知人やものごとってありません?

 「まさかの時の友」。自分がごう慢になりそうな時、別に北海道出身というわけではありませんが、その言葉を思い浮かべたりする。人を忌み嫌うのは簡単ですから。

August 16, 2005 11:36 AM