記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年08月05日

違法駐車「悪い」が…:永井孝昌

 季節感のなくなった今日このごろ。せめて旬と暦は大事にしたい、と先月28日の土用丑(うし)の日はウナギを食べた。が、路上駐車したのはマズかった。注文して、満喫して、食べ終わったころには愛車にチョーク。「ハイ、違反ね~」で、ウナ重1杯1万6000円ナリ(安月給の身、ウナ重は1000円の並でございました)。高いよ。精も出ません。反省。

 その駐車違反取り締まりが変わる。昨年6月に成立した改正道路交通法が来年6月までに施行され、駐車取り締まりの民間委託がスタートする。

 簡単にいえば、資格を取得した駐車監視員が警察に代わって違法駐車を取り締まる、というもの。警視庁が取り締まり執行力の強化などを理由に導入し、04年の取り締まり件数約159万件、罰金約240億円は導入後、倍増する見込み、という。

 監視員は各警察署が定める重点取り締まり区域などのガイドラインに従い、違反車両を見つけると写真撮影しステッカーを張る。要はたとえ3分でも、パシャリ、ペタ、とやられれば「ハイ、違反ね~」という仕組み。「5分くらいなら…」なんて甘い気持ちは一切、通用しないことになる。

 これでいいのか、なんて話をしても、施行は決定済み。何より、違法駐車は確かに悪い。ただ、その「悪い」の解釈が問題で、執行には不安もある。

 「駐車場整備ガイドブック2002」によると、駐車場需要が1100万台以上といわれる現在、現実の駐車場収容台数は500万台程度。「停めたくても停められない」という車はどうするのか。民間企業が駐車場増設や監視員育成に投資した後では、パーク&ライド(郊外の駅に駐車場を設け、都心へはバスや電車を利用しよう、というもの)やロンドンで実施されている都心部乗り入れに対する課金制度の導入の動きに影響はないのか。それは、都心部の交通環境改善の抜本的解決を妨げないのか。

 駐車場を持つ大規模店舗の集客がさらに有利になり、駐車場のない小型店舗はさらに厳しい状況に追い込まれるしかないのか。民間委託が監視員という名の警察OBの再雇用拡大や癒着、天下りの温床となることはないのか。そして、監視員が「1万円よこせば許してやる」なんて職権乱用する心配は本当にないのか。

 来年6月ごろには「駐車場案内」なんて携帯サイトが人気になり、運転中にそのサイトを電話片手にピコピコやればばやっぱり罰金。ニセ監視員を名乗った新手の「駐禁詐欺」みたいな事件が発生し、施行に合わせて無理やり狭いスペースに作られた駐車場ではおばちゃんが車庫入れに悪戦苦闘。駐車場の絶対数が足りない現状では、下手すると「監視員監視員」とかいう違法駐車取り締まりをひそかに見張る闇商売まで横行するかもしれない。

 「じゃあ、車なんて乗らなきゃいいじゃん」と言われれば、7月23日には地震で地下鉄に缶詰めになり、8月2日には羽田空港の管制システムダウンで出張のため乗り込んでいた飛行機の中に閉じこめられと「乗り物禍」が続く身では気持ちも複雑。結局、時間に追われる庶民はさらに不便な生活を強いられて、ウナギのぼりなのは摘発件数と罰金だけか…と思うと、精も出ません。

August 5, 2005 10:57 AM