記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年07月10日

「永久追放」ではない:荻島弘一

 「日本スポーツ界に激震!」だそうだ。8日の国際オリンピック委員会(IOC)総会で、野球とソフトボールの2012年ロンドン五輪からの除外が決まった。日本人が大好きな五輪から、日本人が大好きな野球がなくなる。なるほど大事件のように聞こえる。

 もっとも、五輪の野球がこれほど注目されるようになったのは、長嶋さんが04年アテネ五輪の監督に就任してから。存続に努力してきた関係者には申し訳ないけれど、五輪からなくなっても野球人気が下がることはないし、競技力が落ちることはないだろう。心配はない。「プロ野球選手になりたい」という子供は大勢いるが「五輪で金メダルを取りたい」という野球少年には会ったことがない。

 では、どうして「激震」なのか。野球もソフトボールも「メダル有望競技」だからだ。昨年のアテネ大会では、ともに銅メダル。団体球技では、男女ともに唯一のメダルで、日本選手団として史上最多37個のメダル獲得に貢献した。日本オリンピック委員会の幹部の反応も「五輪のメダルが減る」というものだった。

 夜になって、IOCが新競技の採用なしと発表すると「空手が入れば、野球とソフトボールの穴を埋められたのに」というコメントも出てきた。どうして、メダルの数ばかりが話題になるのか。違和感を覚えずにはいられなかった。

 確かに、JOCにとっても、日本のスポーツ界にとっても、メダルを数多くとることは重要なことだ。世界的な競技力を上げるのは大きな目標。日本の選手たちが活躍すれば、大会そのものが盛り上がる。テレビ視聴率が上がり、スポンサーも増える。収入は、強化や普及にも回せる。好成績を上げることで、すべてがいい方向に循環する。

 アテネ五輪ではメダルラッシュに沸いた。女子レスリングなど有望競技が新規に採用されたこともあったが、施設面などJOCの地道な努力もあったと思う。しかし、強化の結果としてメダルがあるのだ。大会の2年前に勘定をしても仕方がない。結果(メダル)は後からついてくるもの。実施競技を決める段階では、ほかにやることがある。

 野球に比べて、ソフトボールは大事件だ。「スポーツ=五輪」という考えが根深い日本で、五輪競技から外れることは競技の存亡にもかかわってくる。96年アトランタ大会で採用され、常にメダル候補として注目されてきたから、そのギャップは大きいだろう。五輪の活躍を見て「金メダルを取りたい」と競技を始めた少女も多いはずだ。彼女らの夢は、どうなるのか。

 国際ソフトボール連盟や日本ソフトボール協会は五輪競技として存続するために努力をしてきた。普及のために用具提供や指導者派遣など地道な活動もしてきた。もちろん、JOCもバックアップしてきただろうが及ばなかった。しかし、このまま少女たちの夢をつぶしてほしくはない。今回の除外は「永久追放」ではない。復帰に向けての活動に早すぎることはない。少なくとも、今はメダル勘定をしている場合ではない。

July 10, 2005 12:11 PM