記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年07月04日

クールビズ名付け親:中山知子

 政府が主導する夏のビジネス軽装「クールビズ」が始まって1カ月。地球温暖化を防ごうと、室温を28度に設定する代わりに暑くない服装をして欲しいという呼び掛け。基本はノーネクタイ、ノー上着だという。

 ただ、暑さ、寒さの感じ方は、人それぞれ違う。暑ければ脱ぐ、寒ければ着る。そんなシンプルな発想の呼び掛けでよかったのでは、と思う。新聞の全面広告にも載った「ノーネクタイ、ノー上着」というキャッチフレーズはあまりにも強かった。一歩間違えば「服装の押し付け」とも思われかねない。すぐにネクタイ業界が「売り上げが落ちる」と声を出した。日本ネクタイ連合会を取材すると温暖化防止には賛同しても、商品を否定されたようなフレーズに怒っていた。

 もし「クールビズ」という名前がなくて、ノーネクタイ、ノー上着のままでは、もっとバッシングされていたかもしれない。

 「クールビズ」は、一般のサラリーマンが作った言葉だ。公募された約3200作から選ばれた。名付け親は都内の民間企業に勤める田形英明さん(31)だ。会って話を聞くと、頭の運動をかねて(暇つぶし、という面もあるのだそうだが)、携帯電話の公募懸賞サイトに応募するのが趣味だという。通勤中の電車で、携帯でサイトを見ていた時にたまたま環境省の募集があるのを知った。深く考えず、頭に浮かんだ涼しいの「クール」と「ビジネス」を掛け合わせ、携帯に打ち込んだ。ぱっと送信するまで10分かからなかった。実は意外にあっさり、簡単に生まれた。環境省から「選ばれました」と連絡があるまで応募したことすら、忘れていたという。

 当然クールビズ姿かと思ったら、田形さんはスーツにネクタイだった。営業マンなのだ。

 「昼間からネクタイを外していると、だらしない気もする」。人に会うのが仕事の営業マンの本音だろう。「仕事柄、こちらがネクタイをとって不快に思われるかもしれないと思うと、いきなりは踏み切れない」と、戸惑いも見せていた。

 命名はしたが、実際にはノーネクタイ、ノー上着にはなかなかチェンジできない。「ネクタイを外すことが慣例化するなんて、無理な話。クールビズも来年は『死語』になっているかも」とも。サラリーマンの立場と、名付け親のはざ間で感じるジレンマ。多分、これがサラリーマンの感じるクールビズの現実でもあるのだろう。

 でも、田形さんはこの言葉を考えたころより「子供」の行く末を見守る目線も持ち始めた。名付け親としての責任感だろう。「名前より中身。クールビズという名前は使わなくてもいいから、来年以降も続けて行かなくては。そこに意味があると思うから」。

 田形さんと別れた後、街を歩いた。ネクタイ姿のサラリーマンはまだ多い。普通のサラリーマンが「軽装OK」で仕事ができるようになるには、時間もかかるだろう。

 来年の今ごろ、世のサラリーマン、そして田形さんの服装に変化は表れているだろうか。

July 4, 2005 11:01 AM