記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年07月28日

本気?それとも冗談:横田和幸

 人間、追い込まれたら本性が出てしまう。新日本プロレスの元IWGP王者・中邑真輔(25)。今年2月、大当たり確率約1/300のパチンコで2000回転も大当たりが引けない状態に陥った。彼は理知的な性格で有名だが、そのパチンコメーカーに問い合わせたという。


 「いやぁ、50連チャン以上も記録している機種なので、逆にそんなハマリもあるのでは…」とは担当者の弁。ちなみに機種名はアントニオ○○をモチーフにした台。燃える闘魂に、鉄拳制裁を食らった。あの人気絶大の中邑クンが、と思えばクスッとしてしまう。


 こちらは背筋がゾクッとした事件だ。先日の全日本プロレス大阪大会。第1試合でタッグを組んでいたNOSAWA(ノサワ)論外(28)とMAZADA(マサダ=30)が試合後、報道陣控室になだれ込んできた。


 「なんだ、今の試合は?」。マサダが憤慨。「そう言うなよ…」。パートナーの論外は泣きそうな顔。お笑い満載の試合展開に、マサダは悪役としての誇りが傷ついた。激しい試合がしたかったようだ。


 そこに新たな怒号が響いた。「(マスコミに見せる事ではないから)外に出てけ!」。レフェリー生活31年目、この人が裁けば泣く子も黙るという和田京平レフェリー(50)が怒った。普通の選手だと黙るはずなのに、マサダは逆ギレした。「うるせぇってんだよ、お前こそ黙ってろって!」。


 これに京平さんが逆逆ギレ。「よぉうし、表出やがれ。このヤロー!!」と叫んだ瞬間には、もう右ストレートがマサダの左顔面をとらえていた。制止に入った論外に、ア然とする武藤社長。路上で酔っぱらいのけんかは見た事あるが、仕事場で、しかもレスラーとレフェリーが殴り合うなんて。これが、2人の本性なのか。報道陣控室には凍り付いた空気が流れた。


 全試合終了後、再び京平さんがやってきた。


 「あのヤロー(マサダ)は謝りにもこないぜ。移動バスの中で刺されないように警戒しないとな。どうしたんだよ(記者の)みんな、暗い顔して」。


 あのね、京平さん、それはアナタが原因でしょ。「あんな乱闘騒ぎを起こすから」と突っ込みたかったが、私は小心者だ。


 学生時代、猪木がホーガンにアックスボンバーを浴びて、舌出し失神KOされたのを見た時、夜は怖くて眠れなかった。今回は目の前で起きた大げんか。その夜は寝付きが悪かった。


 事件の数日後、ある業界関係者から連絡がきた。


 「横田さん、あのけんか、本気だと思ってるの? 記者をビビらすための京平さん流の冗談。レスラーは一銭にもならないけんかはしません」(その人はクスッと笑う。自信ありの表情だ)。


 となると、京平さんが主犯、マサダは共犯か? 確証はない。もしかして本物のけんかだった可能性は捨て切れない。しかし、不安になってきた。今後の全日本は、揺れる心境で取材をすることになりそうだ。

July 28, 2005 01:08 PM