記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年07月26日

スポーツ会場に足を:永井孝昌

 世の中は、いよいよ全国的に夏休み。海へ山へ、と言いたいところだが、今年はどうも「出かけよう」、という気分に二の足を踏ませる事件・事故が多い。

 3カ月が経過した今も、生々しい記憶がよみがえる4月のJR脱線事故。本来楽しいはずのアミューズメント施設では事故が発生したり、海外ではロンドンやエジプトでテロが起こったり。そして、東京では地震。13年ぶりに都内で震度5以上の揺れを観測した23日の地震で、エレベーターに閉じこめられた人たちはしばらく、面倒でも階段を使いたい気持ちだろうし、多くの人は当分、余震に敏感にならざるを得ない日々が続く。

 かくいう私も地震の時は地下鉄の電車の中にいて、激しい揺れに動揺した。車内には「ただいま係員が徒歩で線路の安全確認をしております」というアナウンスが繰り返し流れ、全面的に運転が再開されるまで3時間以上もかかっては、「しばらく電車はいいかな」と思うのも正直なところではある。

 そんな状況で無責任なことを言うのもいかがなものか、という逡巡(しゅんじゅん)もあるのだが、せっかくの夏休み、スポーツの現場にファンの足が遠のかなければいいがなあ、という思いも強い。

 ライブに勝るものはない。実際に自分の目で見、耳で聞き、肌で感じることにこそ、スポーツのだいご味はある。相手打者によって微妙に変わる守備の位置、力士が真っ正面から激突する音、飛び込みの選手が踏み切る瞬間の緊張感。現場には、テレビの画面ではうかがい知ることのできない情報量がある。そしてスポーツ界には、足を運ぶ、見る価値のあるものもたくさんある。

 球宴を終えた野球界では、横浜クルーン投手が日本球界最速の161キロをマークしたばかり。日本では5万人しか目撃していないスピードを求めて、球場に出かけるのもいいと思う。サッカー界では、J2横浜FCにFWカズが移籍した。来季終了までの1年半契約だが、来年がある、なんて多分、カズ本人が思っていないはず。1試合1試合、一瞬一瞬に魂を込めるカズのプレーとともに、真夏のJ2は今年も熱い。J1でも、今月下旬にはRマドリード、マンチェスターU、バイエルンといった欧州の強豪が立て続けに来日して親善試合を行う。来年のW杯を前に、世界最高峰のプレーを日本で、間近に見ることができる。

 ゴルフ界では10代の選手の台頭めざましく、触発されるようにベテラン勢も素晴らしいプレーを見せている。甲子園ではもうすぐ全国高校野球選手権も開幕。ボクシング界では高校球児と同じ世代、18歳の亀田が8月21日に東洋太平洋王座に挑戦する。

 この夏も、スポーツ界には書ききれないほど多くの、魅力的な瞬間がある。不安の多い世の中だが、「テレビで見ればいいじゃん」と思う前にぜひ、会場に足を運んでほしい。そこにはきっと、夏の思い出にふさわしい発見が待っている。

July 26, 2005 12:38 PM