記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年07月25日

途中経過と信じたい:栗原弘明

 最初に見て聞いて「なんじゃあ、こりゃあ」と思った。今年行われるドラフト会議の話だ。19日にプロ野球実行委員会とオーナー会議が行われ、2年間の暫定ドラフト案が承認された。高校生と大学、社会人を分け、分離ドラフトを行う新方式だ。

 まず単純に、分かりにくい。高校ドラフトは1巡目に入札抽選制を導入した。抽選に外れた球団は、ウエーバー制で順に残りの選手を指名する。大学・社会人ドラフトでは、これまでの自由獲得枠が希望選手枠と名称が変わる。現行2枠を1枠に削減。希望選手枠を回避した球団は、高校ドラフトで入札抽選に外れた球団が指名した後に、優先的に指名できる。高校ドラフトで入札抽選を回避した場合、希望選手枠、1巡目指名後、優先的に指名できる。

 と書いてきても、文字だけでは分かりにくい。ドラフトはショーアップすべき性質のものではない。だが、昨年の球界再編騒動で、球界の密室的な体質が問題になったばかりだ。ファンの野球離れを反省した結果、構造改革に着手したはずではなかったか。ファンにとっては、今回の案は明らかに理解しづらい制度だ。指名された選手も、自分は一体球団にどれだけ評価されているのか、把握が難しくなるだろう。

 高校生の目玉選手と大学・社会人選手の目玉選手の同時獲得も可能になった。昨年の騒動で、契約金高騰と戦力均衡がキーワードになった。ドラフト改革についても「戦力均衡か競争か」が議論されたが、競争を激しくするものとしか感じられない。

 高校生ドラフトで入札抽選を回避した球団、希望選手枠を回避した球団にはウエーバー順で優先権が与えられるが、上位から漏れた選手を複数獲得できるだけだ。そのメリットが大きいとは思わない。高い待遇に頼らず、戦略的に入札抽選、希望選手枠を回避して「掘り出し物」を指名する妙味も薄れる気がする。とりあえず入札抽選に参加、希望選手枠でもとりあえず即戦力をキープ、という安易な戦略が主流になるのではないか。

 それぞれが自分たちの主張を譲らず、さまざまな思惑が交錯した結果、行き着いた妥協案と言われても仕方がないだろう。完全ウエーバーはともかく、それに付随するFA権の短縮がネックになったようだ。ウエーバー派の球団も、FA短縮には強硬に反対した結果だった。それが年俸高騰につながると恐れたからだ。

 ある球団幹部は「競争が悪いとは思わない。そこから企業努力が生まれる。だが不正をやめようと、根本から改革しようと決めたはず。それなら、それを貫くべきだ。できないなら、改革は断念しました、と言うべき。それもできずに、まとめることだけを考えた結果になってしまった」とため息をついた。

 とにかく1つにまとめることが第1の目的になっていたのだとしたら、寂しい限りだ。これが結末だとは思いたくない。構造改革の途中経過だと信じたい。

July 25, 2005 11:20 AM