記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年07月22日

宮下に続く女性騎手:高木一成

 18日の名古屋競馬1Rで、宮下瞳騎手(28)が女性ジョッキーの日本最多勝記録となる通算351勝を挙げた。パートナーのアジャイルスーパーの単勝支持率は75・3%。今年のダービーで歴代最高の単勝支持率を集めたディープインパクトが73・4%だから、動いた金額は別としても、そのすごさが分かる。ファンがみんな新記録達成を応援していたからこその数字だ。

 この日の名古屋競馬場の入場者数は4154人で、前年比108・3%だった。1Rでの記録達成が濃厚とあって、朝から客の出足は好調だったという。「久々に明るいニュースになりました」。ほかの地方競馬と同じく、経営的に苦戦を強いられる主催者側が喜びを語る。最近はゴルフ、バレーボールなどで、男子より女子の方が人気がある気がするが、今回の例をみても、競馬界でも女性騎手の活躍がひとつの売りになっていいはずだ。

 だが、今の中央競馬に目を移すと、女性騎手になかなか活躍の場が与えられていない。96年に牧原、細江、田村がJRA初の女性騎手としてデビューし、その後、計6人が誕生したが、現役を続けるのは牧原と西原の2人だけ。「男も女も関係ない。純粋に技術的に判断して乗り役を決めている」。多くの調教師が、そう話すように実力勝負の世界では乗り馬が増えないのは仕方がないのかもしれないが、このままでは女性騎手の存在がどんどん希薄になっていく。

 サッカー、野球、バレーボール、マラソン、水泳…。数あるスポーツの中でも、男女が同じ舞台で戦う競技はほとんどない。それはどうしようもない体力差が男女間で存在するからだ。競馬をスポーツとして考えたことのある読者の方はあまりいないだろうが、騎手は時速約60キロの馬上で瞬時の判断を行い、500キロ近いサラブレッドを制御しなければならない立派なアスリート。だとすれば、女性騎手が活躍しやすい特典があってもいいのではないか。

 例えば、北海道のばんえい競馬では、興行面でもメリットのある女性騎手の生き残りやすい環境を考え、減量の規定を男女別にしている。新人の減量は男10キロに対して、女20キロ。さらに03年度には通算80勝以上すると減量の特典が消えてしまう制度を見直し、女性騎手は何勝しても永久的に10キロ減の恩恵が得られるように変わった。導入前は「何で女だけ」という男性騎手の声もあったが、最終的にはばんえい競馬全体の繁栄のためということで納得したという。また、1キロ軽いと約半艇身有利といわれる競艇でも、レースでの最低体重は男50キロ、女47キロと差がつけられている。

 「甘すぎる」と言われてしまえばそれまでだが、少なくとも平場戦だけでも1、2キロの減量があれば女性騎手の活躍の場は増えると思う。それによってまた新たなファンが生まれることもあるはず。先日の記者会見で宮下騎手は「中央競馬では2回しか乗っていないけど、これからもチャンスがあれば乗りたい」と話していた。もしその機会があったとき、迎え撃てる女性ジョッキーが中央にいなかったら、それはちょっと寂しい気がする。

July 22, 2005 02:46 PM