記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年06月27日

新人の存在は大きい:上野耕太郎

 新入社員の皆さん、仕事は慣れましたか。5月病(古い?)も乗り越えて、いよいよ周りも見えてきたころ。わが北海道本社にも2人の新人が久しぶりに入った。編集部に配属されたN君も、私を含めた先輩にどやされながら記者生活をスタートさせている。各業界、各社の新人君たちもバタバタと仕事に追われているのだろう。

 担当する日本ハムでも1人の新人が6月15日、ド派手なパフォーマンスでデビューした。そう、ダルビッシュ有投手だ。札幌ドームでの広島戦の9回、新井、野村に2発を打たれ降板したものの、高卒ルーキーでは99年西武松坂以来の初先発初勝利を飾った。1月の新人合同自主トレで右ひざ関節炎で別メニュー。2月のキャンプ中には喫煙が発覚し、無期限の謹慎処分と何かとお騒がせの18歳がつまずきながらも結果を出した。新人の初仕事をきっちりとやってのけたのは称賛に値する。

 この18歳の少年に何か勝負運、そしてハートの強さを感じた。試合直前になるとさすがにピリッとしたムードに変わったが、自然体そのものだった。登板日も午前11時までぐっすり眠った。前日には札幌の市内で買い物を楽しんだ。「これまで緊張したことがないっす」と言う。緊張感を感じさせない。そしてチームは彼を必要とした。エースのミラバル、金村が離脱、新外国人のナイト、トーマスもピリッとせず投手陣が手薄だった。投手陣が万全であれば、この時期に「初登板」が回ってこなかった可能性が高い。チャンスを自分でものにしたが、度重なるアクシデントもあった。そこにダルビッシュ自身の運の強さを感じてしまう。

 この新人の活躍がチームの起爆剤となった。交流戦11連敗とどん底を味わったが、ダルビッシュらの活躍で22日まで6連勝と勢いを取り戻した。ダルビッシュの投球は先輩たちに火を付けた。先発ローテーションを担う、ある選手は「一気に抜かれた感じで悔しい」と話し、年齢の近い別の選手は「うれしいけど、ちょっと複雑」と快投を見ながら漏らしたという。そうなのだ、悔しがる姿が正しい。

 30歳を過ぎたころ、会社の先輩の言葉を思い出した。「優秀な先輩から仕事を教えてもらうより、優秀な後輩を持つ方が成長するんだよ。負けたくないって思うものだしね」。企業や集団にとって、新人の存在って大きいと思う。自分たちを凌駕(りょうが)してくる発想やバイタリティーに負けたくないという気持ちもある。その緊張感が組織を活性化していくのだろう。変な派閥行動にならなければですが…。

 そして、ダルビッシュは早くも偉大な先輩に胸を借りる。明日27日、2度目の先発となる西武戦で松坂との対戦が濃厚だ。甲子園を沸かせた「平成の怪物対決」という大きな仕事が待ち受ける。伝え聞いたダルビッシュは「へっ? ホンマっすか…、予想外っす」と目を丸くした。そんな言葉の中にも楽しさが見え隠れする。楽しみなのはファン、そして担当の私も一緒なのですが。

June 27, 2005 01:28 PM