2005年06月20日
野球規則【注】に注意:飯島智則
ロッテのバレンタイン監督が、ルール上の問題で審判に抗議したとき、両手に野球規則を持っていた。一方は日本のもので、もう一方は米国製だった。非常に意味が深いシーンに見えた。
よく「野球とベースボールは違う」などと言われるが、これは見た者の感想であって、ルールは同じ…はずである。日本の公認野球規則(非売品)は、大リーグでも使う米国のオフィシャルルールを訳したもの。本来、バレンタイン監督が戸惑うはずはない。ところが、なかなか難しい問題を秘めている。野球規則の冒頭の一文を比較してみよう。
1・01 Baseball is a game between two teams of nine players each, under direction of a manager, played on an enclosed field in accordance with these rules, under jurisdiction of one or more umpires.
1・01 野球は、囲いのある競技場で、監督が指揮する九人のプレヤーから成る二つのチームの間で、一人ないし数人の審判員のもとに、本規則に従って行われる競技である。
一見、そのまま日本語訳されているようだが「jurisdiction」がない。意味は「司法権、裁判権、支配、管轄」といったところ。日本語の「審判員のもとに」は、もっと意味を強くしていいと思う。「審判員が下す判定のもとに」。つまり、ビデオ判定など前提にしていない競技だと分かる。例えば技術的にレーダーなど機械によるストライク判定が可能であっても、使うべきではない。審判の技術向上は別問題として残るが、誤審を含め、人間の目によるジャッジが大前提にある。そこが日本語版では伝わってこない。
また、日本の野球規則を読んでいくと【原注】【注】という2種類の注意書きを目にする。【原注】は英語版にも入っているもので、【注】は日本版にしか入っていないものを指す。なぜ、日本独自の【注】が必要なのか。
野球規則の中には「文中【注】とあるのは、編者が必要と認めた説明または適用上の解釈をいう」と書いてある。よく分からないので丸山規則委員に聞くと「少年野球でも使うわけですから、できるだけ分かりやすく説明しています」と言う。
ただし「説明だけでなく米国とは違う独自の解釈になっている部分もある」と付け加えた。例えば日本は7・08(g)【注二】で「打席外での打撃行為が行われた場合、三塁走者をアウトとし打者は打撃を続けられる」という趣旨が書かれている。スクイズの時に外されたボールに飛びついたケースといえる。しかし米国で6・06(a)を適用して打者の反則行為とし「打者アウト、走者は帰塁」にするという。この相違点は規則委員会でも検討されたことがあるが、継続審議となっている。このように【注】の存在により、同じプレーでも日米間の判定に差が出る。
来季から2段モーションの禁止を決めた際、実行委員会では「国際化に対応するため」と理由を説明した。「国際ルール」や「国際球」という言葉を聞く機会が多くなったが、どちらも何を指しているのか明確ではない。「国際ルール」が米国のオフィシャルルールを指すならば、2段モーションだけをクローズアップするのはおかしい。問題点は、もっと根本にある。
June 20, 2005 11:49 AM
