記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年06月17日

地方の強み手触り感:上野耕太郎

 私が住む北海道には圧倒的な人気を誇るイベントがある。最終日となった12日、そのイベントを2つの地元テレビ局が生中継した。北海道が誇る日本ハム戦、NHKの大河ドラマ「義経」、そしてゴルフの藍ちゃんにも視聴率で圧勝した。その怪物イベントとは今年で14回目を迎えた「YOSAKOIソーラン祭り」だ。

 地元のテレビ局TVh(テレビ北海道)はゴールデンの午後8時から9時48分までで札幌地区平均26・3%、瞬間最高39・2%。STV(札幌テレビ放送)はなんと12日に6時間ぶっ続け生中継でプロ野球、ゴルフとかぶった午後4時台の平均が22%(占拠率47・5%)。ちなみに8日の開幕日はサッカーW杯北朝鮮戦とぶつかったが、観客動員に影響はなかった。

 知ってます? 今や「さっぽろ雪まつり」に対抗するほどの人気があるんです。北大生が始めたこのイベントは、手に鳴子を持って、ソーラン節のフレーズの入った曲に合わせてチーム単位で演舞するもの。今年は5日間開催され、計334チーム、約4万3000人の踊り子が参加。観客動員数が今や200万人規模となった札幌の風物詩に酔い続けた日々だった。

 祭りは92年にスタート。初年度は10チーム1000人の参加者、20万人の観客だった。今では地元の大学の講義の1つにもなった。浅井学園大(江別市)は、踊り手として出場した学生に、単位を与える制度を今年から始めた。119人が履修。祭りに出場してリポートを提出すれば、2単位が認定されるそうだ。

 魅力にとりつかれ夢中になる人が続出している。踊りに専念するために仕事を辞める人、参加者同士で結婚する人、趣味の域を越え、生きがいにする人。参加した50代の女性に聞くと「自分がスポットライトを浴びている感じなんです」と言う。やめられない止まらない。恐るべしイベントなのだ。

 この人気、ある意味で時代を先取りしたんじゃないかと思う。「双方向性」「地方の独自性」の2つだ。見て楽しむも良し、参加するのも良しというのはインターネット時代を先取りしたものだ。ネットのホームページを作成する楽しさ。「自分の思いや趣味、し好を見て欲しい」という意識が根底にあると思う。それに加えてこのイベントはライブ感があり、人から見られるという快感もある。そういうものは強い。

 さらに地方の独自性だ。朝日新聞の調べでは一昨年まで北海道で圧倒的だった巨人の人気を日本ハムが上回ったという。全国区ブランドから、身近な対象への興味。Jリーグは理念として地域密着型のスポーツ振興を打ち出した。球界の盟主、巨人の視聴率低迷ではないが、全国的なもので継続的に興味が集中するということが難しい時代に入ったのかもしれない。情報が豊富な今だからこそ、手触りを感じることのできる機会に飢えてくる。

 自分に置き換えてみる。夢中になれるものって何だろう。う~ん、必要なのかどうかも、正直分からない。ただ、踊っている人たちの表情を見ると、うらやましくなったのは確かだけれど。

June 17, 2005 11:20 AM