記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年06月11日

タイでもニセ警官!?:鹿野芳博

 サッカーW杯アジア最終予選の日本代表の取材でタイに入った。ある日、練習の合間の午後、時間があったので同僚とバンコクの街に出てみた。

 ホテルから歩いて約15分、スーパーで買い物をして外に出ると蒸し暑い。気温は35度もある。歩いて帰るのもしんどい。そうだ、タイ名物の「トゥクトゥク」と呼ばれるオートバイ・タクシー(座席付き3輪車)に乗ろう。

 この乗り物は料金メーターがなく、運転手と事前交渉が必要。旅行ガイドブックには、目安として、徒歩10分の距離は20バーツ(約54円)と書いてあった。

 早速、値段を聞いてみると「100バーツ(約270円)」という。冗談じゃない。だいたい日本人は海外でだまされやすいものだ。20バーツでどうかと反撃すると、あっさり「60バーツ(約162円)」と返された。安いからいいか、と思ったが、こちらにも意地がある。粘って40バーツ(約108円)で交渉は成立した。

 ワクワクしながらバイクの後部座席に乗った、そのときだった。突然、警察官らしき制服を着た中年男性が現れ、タイなまりの英語で「降りろ」とまくし立てる。何が起こったか全く分からなかった。

 「トゥクトゥク」は危険だから乗るなと、忠告でもしてくれているのかと思った。それにしても、様子がおかしかった。むしろ、私たちが怒られているようだ。しばらく無視を決め込んだが「とにかく降りろ」としつこかった。

 そうだ、こいつはニセ警官だ。

 海外ではニセ警官が頻出するというし、間違いないと、思った。人間追い込まれると、自分の都合のいいように思い込みたいらしい。しかし、近くにいた数人の運転手らは「彼は警察官だよ」と口をそろえて言う。どうやら本物のようだった。仕方なく車から降りると、歩いてすぐの小さな派出所に連れて行かれた。

 理由は「君たち2人はタバコを道路に投げ捨てた。罰金を2000バーツ(約5400円)ずつ支払え」ということだった。「トゥクトゥク」に乗る際、それまで吸っていたタバコを、道路にポイ捨てしたというのだ。

 うかつだった。ガイドブックにそんなことが書いてあったような気がしたが、もう手遅れ。「ごめんなさい。バンコクは初めてで知らなかったんです」。謝るしかなかった。しかし「シンガポールと同じだ」と警官は繰り返すばかり。「もう2度とタバコは吸いません」。そう言ってみたが、許してもらえなかった。

 結局、罰金は半額になり、私たちは1000バーツ(約2700円)ずつ支払った。両替したばかりの紙幣があっという間に消えていき、ホテルに歩いて帰った。

 日本代表がW杯出場を決めた記念すべき地・バンコク。こんな番外編の記憶に残る場所にもなった。

June 11, 2005 01:00 PM