2005年06月10日
真剣勝負か不参加か:飯島智則
取材相手とスケジュール調整をしていたら「3日と8日は外して」と言われた。理由を聞く必要はない。サッカーW杯の最終予選に日本が登場する日にあたる。仕方がない。深夜1時半にキックオフの3日は、早々に取材を切り上げて帰途に就いた。電車の中で「今日負けたらヤバイよなあ」と大声で話す学生の集団がいた。彼らが負けを心配しているのは巨人ではあるまい。
注目しているのはサッカーファンばかりではないだろう。一種のお祭りであり、国中で一体感が生まれる。私もJリーグを見る機会は少ないが、日本戦は必ず見る。しかも雑用は済ませてしまい、何もしなくていい状態で集中して見る。深夜のバーレーン戦では、うかつにもウトウトした時に小笠原のゴールが決まった。間の悪い自分に腹が立って腹が立って…。
このような国中に及ぼす一体感は野球にはない。かつて巨人長嶋監督はリーグ優勝が決まる試合を「国民的行事」と称したが、今や「国民的…」は完全にサッカーに奪われていると言っていい。
だから野球も国際化を、という声がある。11月のアジアシリーズ、来年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。しかし、国際試合なら何でもサッカーのように盛り上がるわけではない。「さあ、国際試合ですよ」と興奮を強要されても、むしろ気持ちは冷めていく。そう、最大のキーワードは真剣勝負。
アジアシリーズについては監督会議や選手会総会で「真剣勝負で臨む」と確認している。アジア地区の野球振興という意味もある。大いにリーダーシップを取っていくべきだろう。期待を寄せ、真剣…の部分は厳しい目で見たい。
問題はWBC。今のところ日本は米国主導の開催方法や利益分配を不服として出場を決めかね、条件改善に向けて米国側と交渉を重ねている。ある程度ビジネス問題がクリアできれば出るだろう。では、そのとき日本代表はどんなチーム構成になるのか。首脳陣の判断によるベストチームか。それともアテネ五輪のように各球団2人という枠をつくるのか。
このまま出場することになると、来春までに現場から大会への不平や、球団間の不公平感を訴える声が続出するだろう。「この時期に主力を奪われてはキャンプができない」「リリーフ投手を出す球団は不利」など。現状で表には出ていないが、すでに、こうした声は渦巻いている。こんな声を聞きながら、見ている側が盛り上がるはずがない。米国側との交渉だけでなく、日本としてのスタンスを強固なほど明確にする必要がある。出るならば、公式戦に影響が出ても勝つべく全球団が全精力を注ぐ。不平不満は許さない。
野球は試合数が多い。大リーグは162試合、日本はセ・リーグが146試合、パは136試合とプレーオフ。サッカーJ1の34試合(主催17試合)と比べても分かるように、これは他の競技では考えられない数であり、絶対的な特長といえる。約半年のシーズン中、毎日のように試合がある。当然ながら、観客はリピーターが必要で、サッカーよりも地域に根付かなければ成り立たない。中途半端な国際試合であれば、本拠地での公式戦に重きを置くべきだ。真剣勝負か、不参加か。選択肢は二つしかない。
June 10, 2005 12:13 PM
