記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年06月04日

また低かった投票率:中山知子

 選挙の取材をしていて、いつも思うのが「また投票率が低かった」ということだ。国政選挙で40%、地方選挙では、30%を割り込みそうな数字が出ることもある。

 先日行われた埼玉県川口市の市議補欠選挙も、そうだった。この選挙には、元ソウル五輪女子マラソン代表、宮原美佐子さん(42)を含む4人が立候補していた。宮原さんの事務所に取材に行くと、4畳半ほどの小さなスペースで、スタッフや支援者が集まり顔をつき合わせ、なにやらひそひそ。1本しかない電話の前にはベテランのスタッフが陣取っていた。テレビもラジオもないしんとした事務所で、さまざまな数字が飛び交い始めた。宮原さんがどれくらい票を取ったか探る票読み作業だった。

 選挙管理委員会が発表した定時ごとの投票率が書かれた紙が配られると、あちこちで失望の声が起きた。投票率があまりにも低かったからだ。川口市の有権者は約38万7000人。投票率は、20%台からじわじわ増える程度。30%でも約11万4000人にしかならない。結局、投票率は31・66%。投票した有権者は12万人あまり。約7割の有権者が投票を棄権してしまっていた。

 3割の有権者の票を4人の候補で奪い合う大接戦。結局宮原さんが4万6800票をとって初当選したが、低い投票率に、事務所では勝利の喜びもそこそこに複雑な空気が流れていた。

 ある人が声をあげた。「両親が投票する姿を見ていない子供は、このままでは将来、ますます投票に行かなくなる」。別の人は「不在者投票を有権者に出向かせるのではなく、役所が出向くのはどうだろう。例えば、投票を呼びかける広報カーに投票箱を積んで、住宅街を回ってみてはどうかな」。別の人は「投票は、今は権利だけれど、義務にするように、将来、法律を変えられないものかな」思い思いのアイデアが飛び交い、真剣な議論が続いた。

 「投票した人に、何か特典を与えるしかないんじゃないか」という意見まであった。でもそこまでしたら、投票の自主制が損なわれる。そんなことはわかっていても「物でつる」くらいのことをしないと選挙へ行く行動じたいが始まらないくらいの末期的症状かもしれない。

 後日、選挙のPRのために、物(グッズ)を配って広報活動をした自治体があると聞いた。今年4月知事選が行われた秋田県だ。選挙管理委員会に聞くと、郷土の名物「なまはげ」をマスコットにした耳かきを6000本作り、投票率が低い20代~30代が集まるイベントで無料配布した。すごい人気で、品切れになり、問い合わせがくるほどだったそうだ。コストは100万円。「候補者の言うことに、耳を傾けてもらおうと、耳かきにしました」。ギャグでも何でも、受け入れてもらいたいという涙ぐましい努力だ。

 さぞや、投票率にも効果があっただろう。結果は、過去最低だったそうだ。

 有権者を投票に行かせることが、こんなに難しいとは。このままでは、そのうち日本では「投票」そのものが成り立たなくなってしまうのではないかと思ってしまう。

June 4, 2005 12:00 PM