2005年06月01日
防犯対策あなたは?:鹿野芳博
あるスポーツ新聞カメラマンAさんの本当にあった話を紹介したい。
Aさんはプロ野球の出張取材を終え、空港に向かった。チェックインを済ませ、搭乗を待っていると、大事なことに気が付いた。
(自宅のカギをホテルに忘れた…)。
都内のマンションで1人暮らしの彼は(このまま東京に帰っても部屋に入れない)。
運悪くフライトは最終便だった。ホテルに戻っていると、その日のうちに飛行機に乗ることができない。悩んだ揚げ句、あることを思い付いた。
(そうだ。カギ開け業者に電話してみよう)。
番号案内に電話し、都内のあるカギ開け業者を探した。電話すると「カギが開くかどうかは実際に見ないと分からない」と言われた。料金は8000円から1万2000円くらい。開かなくとも、出張代の5000円を支払うそうだ。
(こうなったらお金の問題じゃない)。
東京行きの飛行機に乗った。午後10時すぎ、羽田空港に到着し、電話した。自宅の住所を伝え、マンションのロビーで待った。
(本当に来てくれるのだろうか)。
外は土砂降りの雨だった。しばらく待つと、カッパ姿でバイクに乗ったカギ開け業者のBさんが到着した。ずぶぬれで、片手に工具を持っていた。物静かで暗い感じの青年だった。
(大丈夫かな)。
カギ穴を見たBさんが、小さな声で説明を始めた。「このカギは非常に難しいです。カギ穴からは攻められないですね」。Aさんのマンションはピッキング対策用のカギを使用していた。「特殊なので料金は2万1000円になります。どうしますか?」。
(話が違う)でも、ここまできたら断るわけにはいかなかった。
(何とか開けてくれ)。
Bさんは折れ曲がった50センチほどの針金を取り出した。「ドアの内側のカギは閉まっているとき横を向いていますか?」。Aさんは「確か横です」と答えた。
(どうして?)
Bさんはドアノブを思い切り手前に引き、ドアと壁にできたわずかなすき間から針金を進入させた。続いて、針金の先端を内側のカギに合わせるようにして、下から上へ素早く2、3回引き上げた。「ガチャッ」。いとも簡単に開いた。横を向いたカギを針金で縦に回したのだった。開始からわずか2分のことだった。
(やった。これで部屋に入れる)。
高い料金を払って無事、部屋に入ったAさんだったが、急に恐怖に襲われたという。
(これだったら泥棒が簡単に入れるってことじゃないか)。一種の「サムターン回し」という方法だった。
現在、Aさんのマンションでは組合を通じて、内側のカギへのピッキング対策を講じている。Aさんの払った高い料金は、多くの人の防犯に生きたということか。と、ここまで書いて、出張の多い僕も心配になった。ひとごとではない。
June 1, 2005 12:00 PM
