2005年05月28日
背伸びはいけない:上野耕太郎
プロ野球で初の試みとなった交流戦も前半戦が終了しようとしている。日本ハム担当の私は広島でこの原稿を書いている。広島に来ても思うのだが、野球というスポーツ、その接し方が各地で違うものだなあって感じる。
町の中心部にある広島市民球場はその名の通り、市民が行きやすい球場だなと感じた。スーパーの買い物袋を持った人、制服姿の学生、仕事前に「ちょっと寄ってみました」という感じの飲み屋のママさんたち…。オレンジ色の独特なカクテル光線のなか、ファンが手軽に球場に立ち寄る。生活に密着した姿が見えて、ホッとするような気持ちになった。
担当だけに、チケットの売り上げも気になるところ。広島の松田オーナーは言っていたそうだ。「新庄選手のおかげで、平日の外野席が2000人のところ、3000人も来てくれたよ」。交流戦だけに、めったに見ることのできない選手が来る。それを見たいと感じるお客さんも詰め掛ける。やっぱり、スターって大切だと思う。
見てもらう職業に「華がある」という要素は重要で、才能だ。新庄選手を見るため球場に行った飲み屋のママさんが言っていた。「新庄さんを見て、びっくりした。あの体形はテレビじゃ分からない。プラモデルみたい。今日、見て感動したのは実物の新庄さん」と熱く話す。プレーもそうだが、その姿を見て感動するのも「生」で観戦するからこそなんだろう。特に広島の球場はファウルゾーンが狭く、観客席から選手が近い。より選手を身近に感じられることが、テレビにはない臨場感を生む。
ファンサービスって選手とファンの間をどう縮めるかってことなのかもしれない。
でも、何でも米国流っていうのは疑問を感じてしまう。メジャー流に臨場感を追求して、フェンスを低くする。一方で危険も生まれる。身を守ることは自己責任とされ、銃を所持することも是とされている国と何でもお役所任せになる国とでは状況も違う。冷や水を掛けるようで申し訳ないが、ファウルボールで事故でも起こると、急ぎ再検討されることになるだろう。ゆっくりと時間をかけて定着させることが必要だと思う。
「客寄せ」というわけではないが各地のレッサーパンダが立って、注目を浴びている。その先駆けなのだろうか、北海道の登別に「クマ牧場」というテーマパークがある。30年以上前からだそうなのだが、ヒグマが立ってエサをもらう。その姿は愛らしい。ただし、クマ牧場では警笛が鳴る。立つ時間が長いとクマでもヘルニアになってしまうそうで、それを防止するための措置だそうだ。「立ち過ぎ注意」。何事も過ぎるのは良くない。
身の丈って意識は必要だ。生活と野球が程よい距離にある広島でそう思った。背伸びはいけないんだろうとも感じた。少しずつでもそのコミュニティーに近づいていき、そしてなくてはならない物になる。日本ハムが北海道に移転して2年目。先輩チームと地元のあり方を見ながら「焦らず、ゆっくりと」とその歩みを再確認した。
May 28, 2005 12:25 PM
