記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年05月25日

アナウンサー 目が命:中山知子

 日本テレビの福沢朗アナウンサー(41)が6月30日付で日テレを退社し、フリーアナウンサーとして独立することを発表した。「ズームイン!朝!」「高校生クイズ」など、日本テレビの人気番組を担当し、日テレの「顔」的な存在だ。


 4年前、福沢さんにインタビューをした。アナウンサーとして、バラエティー番組や情報番組の司会者として、早口で、立て板に水のごとくしゃべる人、というイメージを持って取材に出かけた。


 早朝、3時間の生番組を終えてインタビューの場所に現れた福沢さんは、こちらが勝手に想像していた早口でもなく、おしゃべりでもなく、穏やかに話す人だった。顔を見て、目についたのは目だ。真っ赤に充血していた。当時、ニューヨークの9・11同時多発テロが起きて間もないころだったため、連日の長丁場に、疲れているのだな、と勝手に解釈した。でも福沢さんの説明は違った。


 「ニュースを読む時は、ずっと原稿を目で追う。『目を使う』んです。今の番組では読む原稿の量が多いから、どうしても目に力が入ってしまうんです」。


 事前に用意された原稿は、新しいニュースが入ってくるたびに次々に差し替えられる。読む直前に差し替えということもある。覚えていた内容から頭を切り替えて対応しなくてはならない。声に出して読むと同時に、原稿の文字を目で追いながら下読みすると、目に力が入る、と教えてくれた。


 よほどのハイビジョンのアップでないかぎり、目の充血までは、ブラウン管を通じて視聴者には見えない。でも刻々と状況が変わるニュース現場で、原稿をさばき続けるアナウンサーの「職業病」だったのだ。アナウンサーは「声が命」だが、目も大事な商売道具だった。


 想像以上に、体力勝負でもあった。司会者が立ったまま進行するニュースやワイドショーは最近増えたが、当時の「ズームイン SUPPER」では福沢さんも3時間立ちづくめだった。足のむくみ対策で、サイズが緩めの靴を履いていても、忙しい日は番組が終わるころには足がぱんぱんに張った。夜が明けぬうちに出社し、番組が終わっても仕事が続く。番組を仕切るプレッシャーも加わる。「ストレスは倍、気合は3倍、でもお給料は一緒です」「1日の過ごし方は、会社で働くか、家で寝ている。だから携帯電話も必要ないんです」。まるで「修行談」を聞いている気分になった。


 アナウンサーという職業が、実はとても厳しい職場環境にあることを、福沢さんは体をもって見せてくれた。独立してフリーになれば、置かれた立場も仕事の中身もサラリーマン時代とは変わるし、緊張感も違うだろうが、これからも、一寸先が見えないニュースの現場に身を置き続けることには変わりがない。


 「人生の第2ステップ」で今までと同じ職業を選べる環境にあることは、ある意味、うらやましい。プレッシャーや「目を真っ赤にする」ストレスがあったとしても、それでも選択するのは、やっぱり今の仕事が好きだからなのだろう。

May 25, 2005 11:07 AM