2005年05月24日
そこに愛はあるのか:盧載鎭
磐田MF藤田俊哉(33)の浦和への移籍問題が浮上して1カ月がたった。移籍に向けて両クラブ間で少しずつ前進はしているものの、いまだ決着はついていない。藤田の立場は「宙に浮いた」状況なのである。
移籍を表明しながら、1カ月も磐田のために黙々と戦うベテラン。気を使う後輩たちに「オレ個人の問題なのに、ゴメンね」と気配りも忘れない。仲間からの信頼も厚く、そんな貴重な財産を磐田側も簡単に放出するわけにはいかないだろう。
しかし移籍交渉のスタンスにはかなりの問題がある。浦和から最初の移籍金提示を受けた翌日、執行役員を兼任する山本昌邦監督は報道陣の前で「提示した金額が低すぎる。僕たちはのんびり。焦ることはない。あんな低い評価で、藤田本人がかわいそう」と力説した。
常々「説得して残したい」と言いながら、言い換えれば「もっと金を積めば出す」とも取れる発言だ。磐田は「のんびり」の構えかもしれないが、藤田本人がその「のんびり」の期間中に、どれだけ大変な思いをしているのかを考えれば、言ってはいけない発言である。藤田を「かわいそう」な立場に追い込んだのはどっちなのか。
当たり前の話だが、浦和は安く買いたい。磐田は高く売りたい。交渉事はお互いに条件を提示して、譲歩する部分は譲り、歩み寄らないと成立しない。同監督の「金額が低すぎる」の発言は、交渉相手の浦和にまず伝えるのが筋だろう。マスコミから磐田の考えを伝え聞いた浦和の心境は考えたのか。
日本代表がペルーと戦った日、藤田は磐田のACL消化試合などのためベトナムへ出発した。移籍問題が早期決着して代表復帰を目指したい気持ちは当然あるはず。しかし、本人は両クラブに迷惑が掛かると思ったのか、重い口を開かない。このままずるずると時期を延ばされれば、移籍したとしても浦和FW永井とのポジション争いに勝てる保証はない。
浦和の犬飼社長は「磐田はサポーターへの配慮もしているようだ」と言う。藤田との別れを惜しむファンに「クラブとしてはベトナムまで連れて行って必死に引き留めたのですが、本人の移籍したい意思があまりにも強すぎて残念ながら移籍させることになりました」とでも言いたいのか。それで示しがつくのか。
プロのサッカー選手は、個人事業主であり、クラブと比較して弱い立場である。クラブが選手を保護する義務はないが、お互いの信頼がないと両者の関係はうまく機能しない。しかも日本は、徹底した契約社会の欧州とは微妙に違い、人情を重んじる独特の文化がある。
「そこに愛はあるのか」。愛が必要ないのなら、契約書を盾に浦和からのオファーを蹴ればいい。中途半端な対応で、せっかくの代表戦士を悩ますことは、両クラブ、選手、日本代表にとっても望ましくない。
May 24, 2005 10:44 AM
