記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年05月14日

俊輔のもう1つの敵:盧載鎭

 日本代表の司令塔・中村俊輔(26=レジーナ)。実は一時期、6月のW杯アジア最終予選のアウエー2連戦(3日のバーレーンと8日の北朝鮮)の出場が危ぶまれていた。過去にも、同様の負傷で3カ月以上も苦しんだことがある。当然、本人も相当悩んでいた。


 両股(こ)関節痛である。スポーツヘルニアとも言われるが、無理すれば足の付け根が痛み出す。神経を針で刺すような痛みで、とてもサッカーができる状態ではなくなる。


 横浜時代の01年、初めて痛みが走った。00年JリーグMVPを獲得した翌年。当然、チームでは欠かせない存在となり、代表にも徐々に定着していた。恵まれた身体ではない。常に極限の状態まで引き上げて勝負するしかない中村の体が、SOS信号を発信したのである。


 3カ月間、何もできなかった。上半身強化を図り、腹筋を鍛えようとしても足の付け根が痛み出す。焦る。やっとつかんだ代表の座が…。不安な気持ちを抑えるため、生まれて初めて横浜市内のお寺を訪れた。初めての座禅。ピッチに戻れるなら…。それほど、切実な思いだったのだ。


 昨年中村は、ジーコジャパンで欠かせない選手として存在感を示した。中田英寿のいないアジア杯、W杯1次予選では軸としてチームを引っ張った。今年はレジーナでも実績を残し、W杯最終予選などで厳しい日程を送った。所属チームのセリエA残留がほぼ決まり、残るは、最終予選2試合の戦い方さえ間違えなければ、W杯に出場できるところまできている。


 「結構ヤバいかも。かなりきてるね」。


 4年前の悪夢が再びよみがえる。3月30日のバーレーン戦が終わってイタリアに戻った後、忘れかけていたあの痛みが襲ってきた。不安が募る。いろんな思いが頭をよぎる。最悪の場合、バーレーン戦、北朝鮮戦はあきらめることになるかも。代表で、今のポジションにたどり着くため、必死で戦ってきたのに。一瞬にして水の泡になるかも。


 何としてもW杯予選は出たい。状態が同じなら、過去の経験から逆算すれば、徐々に調子が戻ってくるのは7月からとなる。それではアウエー2連戦には間に合わない。間に合ったとしても、調整不足は否めない。試合勘が戻るかも不安だし、いつものメンバーといっても連係の再確認なしで本番に臨むのは危険すぎる。


 油断はできないが、幸い4年前ほど深刻な状況ではなかった。痛みが引くたびに、声が明るくなる。今まで地道な努力で定着したトップ下のポジションを、ケガのせいで他の選手に明け渡すつもりはない。W杯の経験がないだけに、自らの力で日本をW杯へ導きたい気持ちは強い。


 運命の2連戦まで1カ月を切った。負傷の恐怖とも戦う日本のファンタジスタ。


 ピッチの中央で雄たけびを上げる瞬間を見届けたい。

May 14, 2005 11:35 AM