2005年05月12日
心地よい父娘げんか:鹿野芳博
一体いつから「親子げんか」をしなくなっただろうか?
最後の「親子げんか」を思い出してみると、中学生のころだったか。小言を言う母親に「うるせー」と初めて口答えし、怒られたことぐらいしか思い出せない。
私ももう36歳。いまさら「親子げんか」をする年でもない。最近、見ることすらなかった。ところが先日、目の当たりにした。あの、横峯さくら(19)と父良郎さん(45)親子だ。
3日、女子ゴルフ・サロンパスワールドレディスの練習ラウンド取材で、東京よみうりCCに行った。約10年ぶりの女子ゴルフ取材で、生で横峯親子を見るのは初めてだった。
わくわくしながら18番ホールグリーンで待っていると、さくらと良郎さんが上がってきた。グリーンを確認しながら、2人は何か小言を言い合っている。さくらは良郎さんを相手にしていないようだが、良郎さんはかまわず文句を言っていた。「こりゃ~新聞やテレビで見たまんまだ」。思わずうれしくなった。
ホールアウト後、さくらと良郎さんが練習場に向かった。私も興味津々で付いて行くと、そこで面白い光景を目にした。
関係者がさくらの握力測定を行っていた。さくらが最初に左手で計測すると23・3キロだった。関係者から「少ないね」といわれ「私はか弱い女の子なんです。でも、真剣ですって」と笑顔を見せた。続いて測った右は29・8キロ。周囲は和やかな雰囲気に包まれた。
ところが、良郎さんがその空気を一変させた。「お父さんにもやらせてみろ」。良郎さんは顔を真っ赤にして握力計を握った。さくらには何が何でも負けられない、そんな感じ。結果は左右とも48キロジャスト。さくらは「すごーい」と小さな声をもらしたが、続けてこう言った。「私ももう1回やる」。さくらも負けられないのだ。
良郎さんが「試合前だから無理するなよ」と声を掛けても、完全に無視していた。そして、先ほどより高数値の右32・6キロ、左31・5キロをマークした。それはまさに父への当て付けのようだった。
それにしても、この「親子げんか」は見ていて心地よいものだった。父親は娘を刺激しようとわざと絡んでいく。娘もその意図を分かりながら、真剣に向き合っている。お互い思ったことをストレートに口にするのは、深い信頼関係があるからだ。核家族化でしらけた感じが広がる現在の社会で、この親子には、正直、温かみを感じた。
会社に戻り、横峯親子の過去の「公開親子げんか」を調べた。その中に、傑作なものを見つけた。
さくらが今年の4月17日、ツアー初優勝を飾り、翌日、睡眠時間を削ってテレビ出演、殺到する取材対応に追われたときのものだ。
さくら「4時間しか寝てませんよ」。
良郎氏「甘い。ピンク・レディーは1時間しか寝てなかったんだぞ」。
さくら「私アイドルじゃないから」。
この親子にはこれからも注目していきたい。
May 12, 2005 12:17 PM
