記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年05月02日

ローズと巨人に疑問:鹿野芳博

 それは、まるでプロレスのような出来事だった。


 26日、福岡ヤフードームの巨人対ヤクルトの試合終了直後のことだ。今季初の5連敗を喫した巨人選手を撮影するため、選手が引き揚げるベンチ裏の通路へ移動した。すると、密室の選手サロンから罵声(ばせい)が聞こえてきた。


 何を言っているか分からなかったが、興奮した声の主はローズ外野手であることが分かった。日本語交じりの英語で怒鳴り、乱闘を繰り広げているような感じだった。ただ事ではない様子に、私を含め報道陣に緊張感が走った。


 しばらくして、薄暗い通路にローズが出てきた。手には脱いだユニホームを持っていた。興奮しているようだったが、無言でカメラマンの前を通り過ぎた。我々は追いかけず、続いて出てくるであろう首脳陣、特に堀内監督を待った。


 すると、ローズの姿が見えなくなった通路のずっと先から、再び怒号が聞こえてきた。(ローズだ。ローズがまた切れたに違いない)。各社カメラマンは一斉に走った。私も全力疾走した。その距離約100メートル。ローズの姿を発見し、慌ててシャッターを押しまくった。


 ローズは速足で歩きながら、日本語でわめき散らしていた。「フ○○キン、ジャイアンツ。みんな書いていいよ。オレのせい(と)ヒロタさん言った。ジャイアンツ大嫌い。10年やった。尊敬ない。差別。ジャイアンツみんな下手くそ。大嫌い」。


 正直、これは野球でなくプロレスだと思った。別に面白がっているわけではないが、私の血も騒いだ。ローズがいい、悪いでなく、これはガチンコだと感じた。


 ローズの興奮は収まらず、通訳に向かって「オレに電話するな。東京に帰る」と英語で話し、選手宿舎に消えていった。


 事の発端は9回のローズの緩慢な守備を弘田外野守備走塁コーチに注意されたことだった。試合終了後、激怒したローズは選手サロンで弘田コーチに向かっていったのだ。一部選手やほかのコーチが止めに入ったが、前代未聞の出来事となった。


 さて、翌日。結果からいうと、ローズは東京に帰らず、スタメンで試合に出場した。試合前、チーム全員に謝罪したというが、昨夜のことが何事もなかったかのようだった。


 練習前には堀内監督と宿舎で話し合いを持ったという。堀内監督は「これだけになったらケジメをつけないといけない。君はいいパフォーマンスで返すしかない」と言ったそうだ。


 球団は出場停止を含む謹慎処分もなく、罰金200万円の処分を科すと発表した。その200万円で東京ドームの試合に子供たちを招待する方針だという。子供たちに何と説明して招待するか疑問である。


 最下位を走る巨人。悪いときは何をやっても悪くなるというが、これらすべて、おかしくないだろうか? 弘田コーチはこう言った。「あれを注意しなくて、何を注意するの」。まともだったのは、この発言だけだったように思える。

May 2, 2005 12:05 PM