記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年04月12日

東北球春 新鮮な1歩:鹿野芳博

 桜前線より一足お先に、東北の球春が開花した。仙台に生まれたプロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスが本拠地フルキャストスタジアム宮城で、西武との地元開幕戦を行った。それは今までのプロ野球とは違った、新鮮で、地方色豊かなオリジナルなものだった。


 スタンドはチームカラーのクリムゾンレッド(えんじ色)一色に染まっていた。観客1万7236人が配布されたポンチョを着て、試合前から熱烈な声援を送っている。応援に慣れていないのか、ちょっとちぐはぐな手拍子。購入したばかりのVメガホンをたたく音が鳴り響いた。


 「かっとばせー、イソベっ」。高校野球の応援のような掛け声が聞こえてきた。このスタジアムでは鳴り物のトランペットと笛が禁止されている。球場から約700メートル離れた国立病院機構仙台医療センターや球場周辺の住宅に配慮し、球団が取り決めた。


 ホーム側のレフトスタンドでは、唯一の私設応援団「関東荒鷲会」が太鼓1つで奮闘していた。そこにはプロ野球の外野スタンドで騒々しく繰り広げられる、選手個人の応援歌の大合唱はなかった。


 スタジアムには打球音がこだまし、球がキャッチャーミットに収まる音も感じることができた。臨場感はちょっと大げさかもしれないが、さながら米大リーグの雰囲気を感じさせた。


 試合中、内野カメラマン席からセンターを見ると、バックスクリーン後方の大きなアパートから住人が試合を観戦しているのが見受けられた。試合開始の気温が6・8度という真冬なみの寒さの中、部屋でのテレビ中継にもの足りず、歴史的一戦を生で観戦していた。イニングごとに観戦する人は代わっていったが、数人の住人が最後まで試合を見届けていた。


 試合は楽天が快勝した。試合後、三木谷浩史オーナー、田尾監督、礒部公一外野手、岩隈久志投手がグラウンドを1周し、観客と喜びを分かち合った。球場の興奮は最高潮に達した。


 お祭りムードが一段落し、観客がいなくなったスタジアムでゴミがほとんど落ちていないのに驚いた。ファンは、一般ゴミ、ペットボトル、カンびんの3つに分別された球場のごみ箱にきちんと捨てていった。


 回収をサポートするボランティアスタッフは「ビールの紙コップはそのまま捨てるとごみ箱に約100個しか入らないけど、ごみ箱からいったん出して、1個1個をきちんと重ねていくと、約700個は入るんです」と教えてくれた。なかなか面白いアイデアと感心した。


 昨年まで仙台には年間1試合ほどしか、プロ野球が来なかった。今年は仙台だけで公式戦が63試合あり、同じ東北地方でも5試合開催される。


 仙台で乗ったタクシーの運転手さんが言った。「今年は仕事を休まないでプロ野球観戦ができるんですよ」。臨場感あふれ、活気に沸くフルキャストスタジアム宮城。ファンと選手が一体になった1歩を踏みだしている。

April 12, 2005 11:29 AM