2005年04月11日
試練の道選んだ「侍」:飯島智則
ナショナルズ大家友和投手(29)を見ると、いつもハンバーガーを思い出す。マイナー時代の話を聞いたことがある。
まだ米国に慣れぬころ、試合後にバスに乗った。周囲の選手はピザなどの食事を用意しており、バスの中で食べていた。大家は用意していなかった。遠征先に到着してから夕食にするつもりだった。しかし道のりは長い。遠征先に着くと深夜になっていた。ホテルのレストランは閉店していた。
空腹に耐えられず、ホテルの周囲を見渡すとマクドナルドがあった。駆け付けてみると、時間が遅いため安全上の問題からドライブスルーのみの営業。仕方がなく車の後に並んだ。前の車が進むと、大家は歩いて進んだ。周囲の好奇な目にさらされながらハンバーガーを買い、空腹を満たした。そうやってメジャーに上がってきた。彼のマイナー生活の、ほんの一部でしかない話。しかし、彼の投手としての、人間としての強さを支える一因になっているだろう。
カージナルス田口壮外野手(35)は何度もマイナー降格を経験した。開幕試合の5時間前にマイナー通告という悪夢もあった。チームに貢献する活躍をしても、なかなか恵まれた起用をされなかった。メジャー本拠地のセントルイスと3A本拠地のメンフィスの移動を繰り返した。
昨年はメジャーでチームのリーグ優勝に貢献する活躍を見せ、ワールドシリーズの第1戦にスタメン出場した。スタンドにいた恵美子夫人の言葉。「ここまで連れてきてもらって本当に感謝しています。主人が、よくここまで我慢してくれたと思う」。我慢。漢字でほんの2文字の言葉に、一体どれだけの思いが込められているのだろうか。
この試合、投手へボテボテの内野安打を放った田口は「自分らしい安打だったかな」と笑っていた。スマートではない安打を、この舞台にたどり着くまでの道のりに当てはめていたのだろう。その笑顔を見ていたら、何と格好のいい男だろうと思った。
メジャー挑戦の先駆者、デビルレイズ野茂英雄投手(36)は解雇やマイナーを経験しながら6球団を渡り歩き、なおもメジャーで戦っている。決してマリナーズ・イチロー、ヤンキース松井の活躍だけが、大リーグではない。
日本球界を旅立ったスター選手、中村紀洋内野手(31)は今、ドジャース傘下の3Aラスベガスにいる。マイナー行きが決まった日、中村は「代理人に任せて、オファーがあれば考えたい」と、移籍を示唆した。日本球界への復帰も否定しなかった。
だが、翌日になってマイナー行きを了承した。迷う一夜だっただろう。それでも「4月中にメジャー昇格?
そらそうでしょ。すぐにでもレギュラーを取ったろか」と、強気なセリフを口にした。7日の開幕戦では三塁強襲の2点適時打。第2戦でも初本塁打など3安打の活躍を見せた。「打たないと上に上がれませんから」。試練の道が、栄光につながると信じて戦っている。
中村のバットやグラブには「侍」という文字が書いてある。彼がメジャーに上がるとき、どんな「サムライ」に変ぼうしているだろうか。
April 11, 2005 12:48 PM
