2005年04月25日
私、本気なんです!:中山知子
「私、本気なんですよ!」。田中真紀子衆院議員(61)が、腹の底からわき上がるドスの利いた声で叫んだ。福岡市で行った衆院福岡2区補選の街頭演説。
真紀子さんは「私は民主党の議員ではない」と断りながらも、自民党に代わって民主党に政権を取らせてみませんか、と熱く演説した。これまでも「政権交代が必要」「政界再編を目指している」と話したのを取材したことはあるが「本気」なんて熱い言葉を聞いたのは、初めてだ。
真紀子さんは初めての選挙は無所属で当選したが、その後自民党入り。秘書給与問題で議員辞職し、03年の総選挙では自民党を離党して無所属で戦い、返り咲いた。民主党の会派にいるといっても無所属で閣僚でもなく、メディアに登場する機会はめっきり減った。たまに国会内で記者に囲まれて話す時も、小泉政権批判のオンパレード。正直食傷気味だった。
今回の「本気」発言は、言葉こそ短いが1歩踏み込んだフレーズだった。真紀子さんを駆り立てたものは、多分「群衆」ではないだろうか。
2日間で4カ所の演説では、どこも数千人単位で人が集まり、車道にもあふれた。真紀子さんの話を聞くために、これだけ人が集まったのを見たのは、久しぶりだ。
真紀子さんはたくさんの人を前にした時「スイッチ」の入り方が違う。国内で記者に囲まれたり会見を開く時は、怒りを込めていても、整然と話す。でもいったん群衆の前に出ると、声色も形相も一変する。父の角栄元首相譲りのダミ声を、おなかの底から最大ボリュームでしぼり出すように叫ぶ。
真紀子さんは大学時代に劇団に所属し、女優を目指した、と自伝でつづっている。女優という商売は、大衆の視線を浴び注目されて、なんぼの世界。ひょっとすると、昔女優を目指した血が、多くの有権者(観客)を前にすると、騒ぎ出すのかもしれない。
「私は自民党だったけれどいじめられ、もうイヤと思って飛び出した。もう政党の時代じゃない。私は先を見越して無所属になった」「主権在民。政治を変えるのは政治家ではなく国民」。真紀子さんは真顔で話す。自民党という「数の集団」を、本意か不本意か、自ら離れた。その後は、1人でもがく状態が続く。真紀子さんと「一緒に動きを起こそう」大きなうねりは今のところ、ラブコールを送る民主党の中でもまだ起きていない。真紀子さんは自民党や小泉政権をたたきながら、敵と闘う自分を演出している段階だ。1人で闘うことの難しさは、肌で感じているはずだ。
ただ、自分の選挙区でもないのに多くの人が集まる現実を見た。街角で見せた「本気」発言は、他人に与える自分の「力」を、あらためて肌で感じ取ったからかもしれない。
April 25, 2005 11:56 AM
