2005年04月23日
根性の人だった東山:松田秀彦
東山紀之(38)に対する見方が変わった。ジャニーズ事務所の人気グループ、少年隊のメンバー。デビュー以来、華やかな芸能界の真ん中に立ち続けている。印象深いのは、華麗なダンス。ステージを何度か見てきたが、技術の高さは、共演者と比べれば、素人の私にも明らかに違って見て取れた。日々の努力があることも想像できるが、プロスポーツ選手のように、持って生まれたセンスの良さ、素質があったのだろうと感じてしまう。しかし、事実は違ったようだ。
先日、東山は、ハワイ・ホノルルで行われたトライアスロンに出場した。初挑戦だった。テレビ番組の企画だったが、レース自体は正式なもの。器用で運動神経も抜群のイメージもあって「目標は完走」と繰り返す東山に対して、随分謙虚だなと感じた。
案の定、3時間11分の好タイムで完走した。「やっぱり」とも「さすが」とも思ったが、その過程は厳しかった。
まず、海で遠泳などしたこともない。おまけに、普段のトレーニングの成果で体脂肪率が6~7%と極端に低く、浮力が弱いというマイナス面を背負ってしまった。うまく泳がないと沈んでしまうのだ。レースでは1・5キロを泳ぐ。何度か同じ距離で試し泳ぎをしてみたが、泳ぎ切ることはレース前までついになかったという。失敗すればその模様もそのまま放送もされる。何でもこなしてしまうだろうという視聴者のイメージを裏切ることになる。そうしたリスクも抱えていた。
準備期間は、わずか1カ月半しかなかった。コーチを務めたシドニー五輪トライアスロン代表の福井英郎さんの指導で、徹底的に水泳に取り組んだ。
レース当日。短期間でも練習を積んだという事実を自分に言い聞かせ、スタートラインに立った。結果、ゆっくりとしたペースを守り、泳ぎ切った。
レース後の食事の席で、秘密を知った。
「実は、左右の足の長さが数センチ違うんですよ」。ジャニーズ事務所に入った当初、ダンスレッスンを受けても、なかなかうまくならない。足の長さの違いが微妙に影響して、バランスがとれなかった。ほかのメンバーが1回で覚えることも、反応できなかったという。「だからとにかく人の何倍も何倍も練習しなきゃいけなかった」。
素質どころか、最初はほかのメンバーに追いつけなかったのだ。今は「(事務所の後輩たちの)誰にも負けない自信は持ってます」と胸を張って言う。周囲をしのぐ技術の高さを身につけた東山の強さは、自分の弱さを「根性」で克服したことが原点だった。
前日は苦手の水泳に対して「正直怖いです」と不安も口にしていた。確かにそれも本音だっただろう。しかし、自分の歩んできた道を振り返れば、そうしたハンディを乗り越える自信は、絶対に持っていたはずだ。
「ピンチはチャンス」。東山の姿を見ていたら、よく聞く言葉が、実感をこもって響いてきた。
April 23, 2005 11:04 AM
