記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年04月02日

映画ファンド手応え:松田秀彦

 映画界の新しい試みに成功の兆しが見えてきた。松竹が、昨年11月から募集した日本初の個人投資家向け映画ファンドに、5億円の「資金」が寄せられた。対象作品は、仲間由紀恵(25)オダギリジョー(29)主演のアクション時代劇「忍−SHINOBI」。CGを駆使した娯楽映画だ。久松猛朗常務は「初めてのことだったので、正直どれほど集まるか予想もつきませんでした。達成感と同時に責任の重さを感じています」と手応えを感じていた。


 ファンドとは一般的に、投資のプロにお金を預け、その運用を任せて分配金を得る金融商品を指す。銀行の利率が低いこともあって、ファンド人気は高まっている。その中でも証券会社が投資家から資金を集めて運用する投資信託の人気は高い。「株」から「映画」に応用したものが、映画ファンドというわけだ。集められた資金は、映画の製作費に使われる。


 今回の映画ファンドの投資は一口10万円。元本60%確保と90%確保の2タイプが用意された。当然だが、リスクが高い60%型の方が配当は高い。申込者の7割が60%型だった。映画の成功に対する期待の高さを感じた。


 映画界では、デジタル技術の高度化などに伴い、製作費は年々高騰する傾向にある。そのため、製作する映画会社だけが単一でリスクを背負うことを避け、テレビ局、出版社、広告代理店などにも製作費の出資を募り、リスクを分散させるケースが当たり前になってきた。製作委員会方式と呼ばれるこのシステムは、資金調達をスムーズにするほか、いろいろな視点の意見を集められる、公開に向けて宣伝する際、出資した各社が〝応援団〟としてさまざまな協力を得られるなど、利点が多い。その半面、船頭が多くなり、撮影現場に混乱を来す危険性もはらんでいる。


 今回の映画ファンドは、資金調達をスムーズにした上、映画製作の主導権をすべて松竹が握る利点もある。意見の衝突、調整ごとが少なくなる分、クリエーティブな作業に集中できる。これが作品の完成度を高める要因にもなり得る。


 では、大成功するか−。現実はそんなに甘くない。


 映画「忍」の配当金が生まれる収益ラインは興行収入20億円だが、これは厳しい数字といえる。現在最大手の東宝の例をみても、昨年、実写映画で興収20億円に達した作品は「世界の中心で、愛をさけぶ」「いま、会いにゆきます」「スウィングガールズ」の3本だけ。いずれも大掛かりなメディアミックスプロモーションによって一大ブームをひき起こした結果のヒットだ。


 今回の映画ファンドは、一般の観客に対して映画製作に参加する楽しみを提供した点で、意義は大きかったと思う。日本映画に対する関心を高める話題提供にもなった。しかし今後もこのシステムを継続させていくためには、皮切りの作品の成功が必須条件となる。松竹が、どのようにこの映画をヒットに導くのか、注目している。

April 2, 2005 03:11 PM